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ルークの初恋 1-2

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「何よ?」
シャルレ姫が湯船の縁に頬杖をつきながら言った。
緩く結い上げた綺麗な栗色の髪、後れ毛は傾けた頭の動きに合わせて少し揺れ、どの位湯に浸かっていたのか不明だが、頬が淡く上気して色づいて、何とも麗しい、素直に、綺麗だなって思った。
同時にルークは自分で自分が可笑しくもなった。
自嘲とかではなく本当に。
普通に暮らしているだけで直ぐ筋肉が着いてしまうような人が、あんなに徹底して体型維持をしているのに、気絶なんかしたルークを抱いて運ぶわけ無いじゃないか。
摘まんで運べる位軽いならともかく。
ふふふっと思わず笑って、何も言わないでいると機嫌を損ねそうな姫に言った。
「姫は綺麗だなって思って・・・あとカッコいいです。大好きです」
昔、弟を事故で亡くして以来、ルークは好意を許される限り、なるべく表に出す様にしている。
それが百年先でも、明日突然訪れたとしても、いつか別れが来た時に、なるべく後悔が無い様に。
ルークは物知らずだけど、一国の第一王女であり、国内外からも絶賛される天下の天才歌姫が、奴隷寸前、貧民上がりのルークをこんなに可愛がってくれるなんて、とてもイレギュラーな事なのだと分かっていた。
それくらいは弁えているつもりだ。
何しろ自分は半分だけとはいえ、灰色蜥蜴族の血が混じっているのだ。

普通に考えたら、いつ捨てられても不思議じゃ無い。

勿論、この関係がなるべく長く続く様に、ともすれば、シャルレの全てが手に入る様に、出来うる限り努力はしているけれど・・・何せ二人の関係は主人と使用人だし、いうなれば今のルークは三文小説によく有る、主人に恋してしまったバカなしもべみたいな物なのだ。



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