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十九、散歩
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「大丈夫ですか?ナツヒ様」
「久しぶりの外は良いな」
体調がいいので外に出たい、とナツヒが言い出したのは、キサラがカゲツと夕食をともにした次の日だった。
「キサラ。俺は部屋を出たい」
朝の薬を確認しにいくと、ナツヒがそう言う。
キサラはすぐに同意した。
部屋を出るのは一年ぶり。
散歩は太陽が傾いた夕方にした。
「風が心地いい」
「今日は風が強い日ですね」
「君の髪が風と遊んでいるな」
「邪魔ですね」
キサラはナツヒの体調が悪くならないように見張りとしてきていた。
ただの付き添いのはずだが、キサラのすぐ横をナツヒが歩いている。
「邪魔だなんて。よく似合っているよ」
「私はナツヒ様の付き添いですので」
「俺はキサラと散歩ができていて嬉しい」
「……調子が悪くないようでよかったです」
キサラは赤い和紙が張られた日傘を見上げた。
この日傘は太陽の光からナツヒを守るために念のため用意したもの。
ナツヒの後ろを歩く鬼が、ナツヒを覆うように持っている。
キサラはその日傘から出ようとするも、ナツヒが追いかけ、日傘が追いかけ、を繰り返し、仕方なくナツヒの横にいてしまっている。
「あの、日傘を持つのを変わりましょうか?」
「そんなことはキサラはしなくていいんだ。君よりも彼女の方が背が高い」
気まずくて思わず声をかけるが、ナツヒがそう言うと、静かに彼女も頷いた。
「そうだ!そこの土地が余っているんだ」
紅家は屋敷に庭があり、一行はその庭を散歩していた。
塀で囲まれた広い領地は整備された庭だけでなく、まだ整備されていない部分もあるらしい。
屋敷の裏に回ったとき、ナツヒがその一角を指さしていた。
「キサラにあの土地をあげよう。そこに新しい診療所を建てればいい」
「ナツヒ様。土地など要りません」
提示された場所は、キサラの沼と同じぐらいの場所。
広すぎて嫌だ、とキサラは頭痛を感じる。
「ここに診療所を作れば、キサラは自分の患者をみるときも、ここを離れる必要がなくなるだろ?」
「そう言う問題ではありません。次期当主であるナツヒ様は、ご自覚をもつべきと考えますが?」
「そういえば、昨日は当主との面会だったらしいな。何か言われたのか?」
キサラは昨日の夕食会でのナツヒの母親を思い出した。
彼女の反応は鬼としては当然の反応だ。
当主は何事もないように言っていたが、当主の秘書もいる場だった。
当主として何らかの意図があったに違いない。
「特に何も言われていません。ただ、私の返答は間違っていないと思いました」
赤い瞳が何かを伺うようにこちらを見ていた。
「……ま、父上は俺との結婚に反対はしなかっただろ?」
「賛成もされていませんでしたよ」
釘をさすように付け加える。
確かに、キサラの婚姻関係について訊ねてはきたが、だからといって、妻を諫める様子もなかったことを思い出す。
「父上にはわかっていただけるだろ」
その余裕はどこからくるのだろうか。
キサラには不思議で仕方なかったが、聞いてしまってはまるで自身がそれを望んでいるようだ。
「エン兄もいたか?どうだった?」
「お兄様ですか?」
キサラが聞くと、ナツヒは静かにうなずいた。
あの場で見るまで、キサラはナツヒに兄がいるとは知らなかった。
おそらく、次期当主であるナツヒの方が目立っているのだろう。
「何もいわれていませんでした」
「……そうか」
ナツヒはそれ以上言わず、歩を進める。
「ああ、そうだ。あそこで今度お茶をしよう」
そう言って、庭のそばにある傘付きの腰掛けを指さした。
「久しぶりの外は良いな」
体調がいいので外に出たい、とナツヒが言い出したのは、キサラがカゲツと夕食をともにした次の日だった。
「キサラ。俺は部屋を出たい」
朝の薬を確認しにいくと、ナツヒがそう言う。
キサラはすぐに同意した。
部屋を出るのは一年ぶり。
散歩は太陽が傾いた夕方にした。
「風が心地いい」
「今日は風が強い日ですね」
「君の髪が風と遊んでいるな」
「邪魔ですね」
キサラはナツヒの体調が悪くならないように見張りとしてきていた。
ただの付き添いのはずだが、キサラのすぐ横をナツヒが歩いている。
「邪魔だなんて。よく似合っているよ」
「私はナツヒ様の付き添いですので」
「俺はキサラと散歩ができていて嬉しい」
「……調子が悪くないようでよかったです」
キサラは赤い和紙が張られた日傘を見上げた。
この日傘は太陽の光からナツヒを守るために念のため用意したもの。
ナツヒの後ろを歩く鬼が、ナツヒを覆うように持っている。
キサラはその日傘から出ようとするも、ナツヒが追いかけ、日傘が追いかけ、を繰り返し、仕方なくナツヒの横にいてしまっている。
「あの、日傘を持つのを変わりましょうか?」
「そんなことはキサラはしなくていいんだ。君よりも彼女の方が背が高い」
気まずくて思わず声をかけるが、ナツヒがそう言うと、静かに彼女も頷いた。
「そうだ!そこの土地が余っているんだ」
紅家は屋敷に庭があり、一行はその庭を散歩していた。
塀で囲まれた広い領地は整備された庭だけでなく、まだ整備されていない部分もあるらしい。
屋敷の裏に回ったとき、ナツヒがその一角を指さしていた。
「キサラにあの土地をあげよう。そこに新しい診療所を建てればいい」
「ナツヒ様。土地など要りません」
提示された場所は、キサラの沼と同じぐらいの場所。
広すぎて嫌だ、とキサラは頭痛を感じる。
「ここに診療所を作れば、キサラは自分の患者をみるときも、ここを離れる必要がなくなるだろ?」
「そう言う問題ではありません。次期当主であるナツヒ様は、ご自覚をもつべきと考えますが?」
「そういえば、昨日は当主との面会だったらしいな。何か言われたのか?」
キサラは昨日の夕食会でのナツヒの母親を思い出した。
彼女の反応は鬼としては当然の反応だ。
当主は何事もないように言っていたが、当主の秘書もいる場だった。
当主として何らかの意図があったに違いない。
「特に何も言われていません。ただ、私の返答は間違っていないと思いました」
赤い瞳が何かを伺うようにこちらを見ていた。
「……ま、父上は俺との結婚に反対はしなかっただろ?」
「賛成もされていませんでしたよ」
釘をさすように付け加える。
確かに、キサラの婚姻関係について訊ねてはきたが、だからといって、妻を諫める様子もなかったことを思い出す。
「父上にはわかっていただけるだろ」
その余裕はどこからくるのだろうか。
キサラには不思議で仕方なかったが、聞いてしまってはまるで自身がそれを望んでいるようだ。
「エン兄もいたか?どうだった?」
「お兄様ですか?」
キサラが聞くと、ナツヒは静かにうなずいた。
あの場で見るまで、キサラはナツヒに兄がいるとは知らなかった。
おそらく、次期当主であるナツヒの方が目立っているのだろう。
「何もいわれていませんでした」
「……そうか」
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