【R18/長編】↜(  • ω•)Ψ←おばか悪魔はドS退魔師の溺愛に気付かない

ナイトウ

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17, 悪魔退治

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ユジンがさっと立ち上がって側の長剣を掴み台所に向かうのを俺様も追った。

中に入ると、薄暗い室内で作り付けの戸棚や小窓がガタガタギシギシ音を立てて揺れている。
部屋には穢れの気配が充満していた。

「ひっ……」

思わず体がすくんだ。

「落ち着け。変幻を解けるか?」

「で、でも……」

「大丈夫だ。駄目なら私が助ける。」

力強く言われて少し覚悟が決まる。
変幻を解くと部屋に溜まった邪念に体が更に反応してビリビリした。
けど俺様の体に入ってくる様子はなくて、気配の中心にあるものが少しハッキリする。

それは俺様と同じ悪魔だった。
黒い体に角、尻尾をピョコピョコさせながら戸棚を開け閉めしたり窓をガタガタ押したりしてる。

「見えたか?」

「う、うん……ユジンは?」

「ぼんやりとはな。よし、お前、あいつの穢れを引き受けられるか?」

「っええ!?」

「お前は多分邪念や穢れを取り込みやすい。昨日みたいに本体に触れたら吸収出来るんじゃないか。やってみろ。」

や、やってみろって、昨日みたいになるのか!?

「ユジンっでも……」

「出来なかったらお仕置きな。」

ひっ、酷いのだ!
でも、お仕置きは嫌なのだ。尻尾くにくにばっかりは……ううっ……。

俺様は暴れる悪魔に近寄った。

「お、おいお前!」

触るために話しかける。

ー誰?マリーアン?ー

俺様の声が聞こえたのか悪魔が呟いた。

「へ?マリーアン?」

俺様が聞き返す。

「リュス、これが使えそうだ。」

俺様の背後に立ったユジンがザンバザルから預かったペンダントトップを渡してきた。

ーマリーアン!ー

とたんにちょこまか暴れていた悪魔がこちらに飛びついてくる。
それをチャンスだと思って手を伸ばして捕まえ、抱き寄せた。
とたんに相手が溜め込んだ穢れが一気に俺様に流れ込む。
頭の中に色々な声が響いた。

『気味が悪い屋敷だ』

『嫌だ、私まで呪われちゃう』

『あの強欲人間の妻だから天罰さ』

『どうせ死ぬなら面倒見る必要ないだろ』

『流行病が移ったら敵わん』

富に対する妬み、不幸に対する優越感、病に対する侮蔑、そんな黒い感情が体に流れ込んでくる。
どんどん体が重くなって気分が悪い。

『あの人の事、恨んでないのよ。あの人は知ってるだけなの。お金で避けられる不幸があるって事を。』

不思議なことに、最後に聞こえたのはそんな優しい声だった。

薄れて行く意識の中で一つの光景が浮かんでいく。

ベッドから窓を見つめる顔色の悪い女の人と、窓辺に留まる一羽のカラス。

女人がカラスに話しかけたことが次々聞こえてきた。

『あなた、不思議な鳥ね。私の言うことがわかるみたい。』

『みんなはあの人が私を追い出したって言うけど、私が頼んで出てきたの。今は事業の大事な時期だから、邪魔したくなくて。』

『最近雇った人が全然来なくなっちゃったわ。私の病気が怖いみたい。でもいいの自分のことは自分で出来るし。あの人にも言ってないわ。手紙を出してもあまり返事が来ないから。』

『あなた、台所に入り込んだでしょ?久々に来たメイドが台所がめちゃめちゃだって騒いでたわ。お手伝いしようとしてくれたの?ありがとうね。』

『あの人がお金の事ばかり考えて忙しいのはね、私たちの最初の子供が死んじゃったからなの。私たちにお金がなくて、病気になった時満足な食べ物も治療も出来なかったから。』

『もう私駄目みたい。最後にあの人に会いたかった。あの人が成功して、輝く宝石も綺麗な服もここには沢山あるけど何にもならない。私あの人ともっと一緒にいたかったわ。』

『ありがとう、お話たくさん聞いてくれて。大好きよ、私の鳥さん。』

女の人の姿が消えた後、カラスは台所で暴れていた悪魔の姿になった。

そこでふと意識が戻る。
体はユジンに支えられていた。

「よくやった。後で浄化してやるからもう少し耐えろ。」

まだ気分が悪いけど、どうにか様子を伺う。
ユジンは俺様が一人で立てそうな事が分かるとうずくまる悪魔に近付いていた。

「お前、俺の話が聞こえるか。」

「……聞こえる。」

ユジンの問いかけに悪魔が答えた。

「結構。このままおとなしく暗闇に行く事を望むか?」

「マリーアンに会いたい……」

「彼女は死んだ。もう会えない。今の世の中では、彼女のようにお前を受け入れてくれる人間がまた見つかるかも怪しい。残ればまた穢れ呪われた動物として彷徨うことになるだろう。」

「暗闇は嫌だ。寂しい。愛されたい……」

その声に、俺様の心もギュッと痛くなる。

「……では、変われるか?お前次第だ。」

そう言ってユジンは俺様から取り上げたペンダントトップを差し出した。

「マリーアン……」

悪魔が指先でそれを撫でる。

「この中に宿れるなら、彼女の家族にお前ごと引き渡してやる。家族が大事にする限り、お前も平穏に過ごせるだろう。ただ保証はしかねる。そうすればまた苦しむ事になるぞ。」

「マリーアン……」

悪魔はスッとペンダントトップに吸い込まれていった。

「頑張れよ。」

ユジンがポツリと溢した。



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