10 / 65
第2章 入学前編
3 提案
しおりを挟む
嘘だろ……
屋敷に近い森で自分の用意したメモとユーリスのそれを見比べて目を見張る。
確かにほぼ同じ内容の育成メニューが書かれている。
「ほらな。ルコの考えてることなんか簡単に分かるぞ。」
ふふん、と得意げにこちらを見てくるのが憎らしい。
朝のユーリスの態度から、どうせ私が書いたノートを盗み見たんだろうと考えた俺はあの後こっそり別のメモを作った。
それは肌身離さず持っていたから見られる訳が無い。
これは認めざるをえなかった。
「失礼いたしました。坊っちゃまは一人でももう立派にノスガルデルタ様の育成ができるのですね。」
「まあな。でもこいつちっとも進化しないからな。」
ユーリスが傍に座るノスニキを見下ろして言う。
そうなんだよね。
この6年、俺のやり込みノウハウの全てを捧げてもノスニキは進化しなかった。
ゲームならステータス画面で見られる経験値やレベルも、この世界では見ようがないのであとどれくらいで進化するのかも分からない。
やり方が悪いとも考えられるけど、同じように俺の作ったメニューで育成した公爵の守護獣は今やユニコーンに進化している。
それに全くノスニキに変化が無いわけじゃなくて、新しく実体のあるものをすり抜ける技を覚えた。
つまり、今のノスニキには物理攻撃が無効ってことだ。
すごくない?
ゲームのノスニキには普通に物理攻撃が効いていたので、やっぱりこれは育成によってノスニキのポテンシャルを引き出せた結果なんじゃないかと思ってる。
ただ、今の形態で攻撃力や体力の面で他の守護獣と勝負になるとは思えない。
いい加減ゲーム序盤の成獣形態くらいにはなってもいいと思うんだけど、何か原因があるんだろうか……。
「……坊っちゃまは、今のノスガルデルタ様のままではお嫌ですか?」
ふと心配になって聞いてみる。
学園から届いた入学許可に書かれたユーリスの所属は守護獣育成科だった。
もちろん守護獣は国の戦力や警察力として育てるだけじゃなく、その獣の特性に合わせて他の分野に特化させた育て方もできる。
それでもやっぱり戦闘型の守護獣はこの世界で物語の目的になるくらい花形だ。
良い成績で卒業すれば貴族のユーリスにとっては王立軍の幹部候補として申し分ないキャリアになるだろう。
更にユーリスには幼い頃公爵や亡くなった兄上の立派な守護獣と比べられて傷ついていた過去がある。
このまま入学してそのコンプレックスを刺激されたら捻くれて嫌味な残念ライバルキャラ一直線じゃないか?
流石にもうユーリスのそんな姿を見たら従者として情けなくて涙が出そうだ。
いや、俺は見ることないけど。
「うーん……確かに嫌だな。今の姿だとルコがノスばっかり可愛がるから。」
しばらく真剣に考えたかと思うと、明後日の方向の返事が返ってきた。
「はあ。」
「ノスも絶対それ目当てで進化しないんだと思う。僕がこいつならそうするぞ。だからルコは、もうノスを膝に乗せたり一緒に寝たり、撫でたりしないこと。わかった?」
…………うん。
あほくさ。
「坊っちゃまがノスガルデルタ様をコイツ呼ばわりしたり放り投げたり雑に扱わなければ、ちゃんとあなたの方に懐くはずですよ。あなたの守護獣なのですから。」
己の怠慢を人のせいにしないでほしい。
「わからずや。」
ユーリスが口を尖らせて言う。
いやいや、どっちが。
「それが賭けに勝ったお願いとやらなら恐れ入りますがお断りいたします。守護獣との信頼関係はご自身の努力で築いてください。」
「う゛ぅ゛……」
唸るな。
「で、お願いは何になさいますか?」
「 紫紺の森に行きたい。麓の村にある別荘に一泊とか二泊で。」
「ご旅行ですか。紫紺の森は飼料になる素材が豊富ですので良いですね。随行者や荷物を手配いたします。いつが良いですか?」
「ちがう!2人だけで行くんだ。大勢お供がいたらワクワクしないだろ?」
ええ……それ俺の負担半端なさそう……。
そういう冒険とか自分だけの旅とか憧れちゃうお年頃なんだろうけど、デフォルトで俺が計画に組み込まれてるあたり考えが根っこからボンボン。
「私と2人では食事とか移動とか不便ですよ。我慢できますか?」
「できる。」
絶対嘘だ。
これは何としても遠慮したい。
けど、自分が大変だから嫌だというのは流石に仕えている主人にしていい主張じゃないよな。
「分かりました。公爵様がお許しになったら参りましょう。」
俺は伝家の宝刀を取り出した。
屋敷に近い森で自分の用意したメモとユーリスのそれを見比べて目を見張る。
確かにほぼ同じ内容の育成メニューが書かれている。
「ほらな。ルコの考えてることなんか簡単に分かるぞ。」
ふふん、と得意げにこちらを見てくるのが憎らしい。
朝のユーリスの態度から、どうせ私が書いたノートを盗み見たんだろうと考えた俺はあの後こっそり別のメモを作った。
それは肌身離さず持っていたから見られる訳が無い。
これは認めざるをえなかった。
「失礼いたしました。坊っちゃまは一人でももう立派にノスガルデルタ様の育成ができるのですね。」
「まあな。でもこいつちっとも進化しないからな。」
ユーリスが傍に座るノスニキを見下ろして言う。
そうなんだよね。
この6年、俺のやり込みノウハウの全てを捧げてもノスニキは進化しなかった。
ゲームならステータス画面で見られる経験値やレベルも、この世界では見ようがないのであとどれくらいで進化するのかも分からない。
やり方が悪いとも考えられるけど、同じように俺の作ったメニューで育成した公爵の守護獣は今やユニコーンに進化している。
それに全くノスニキに変化が無いわけじゃなくて、新しく実体のあるものをすり抜ける技を覚えた。
つまり、今のノスニキには物理攻撃が無効ってことだ。
すごくない?
ゲームのノスニキには普通に物理攻撃が効いていたので、やっぱりこれは育成によってノスニキのポテンシャルを引き出せた結果なんじゃないかと思ってる。
ただ、今の形態で攻撃力や体力の面で他の守護獣と勝負になるとは思えない。
いい加減ゲーム序盤の成獣形態くらいにはなってもいいと思うんだけど、何か原因があるんだろうか……。
「……坊っちゃまは、今のノスガルデルタ様のままではお嫌ですか?」
ふと心配になって聞いてみる。
学園から届いた入学許可に書かれたユーリスの所属は守護獣育成科だった。
もちろん守護獣は国の戦力や警察力として育てるだけじゃなく、その獣の特性に合わせて他の分野に特化させた育て方もできる。
それでもやっぱり戦闘型の守護獣はこの世界で物語の目的になるくらい花形だ。
良い成績で卒業すれば貴族のユーリスにとっては王立軍の幹部候補として申し分ないキャリアになるだろう。
更にユーリスには幼い頃公爵や亡くなった兄上の立派な守護獣と比べられて傷ついていた過去がある。
このまま入学してそのコンプレックスを刺激されたら捻くれて嫌味な残念ライバルキャラ一直線じゃないか?
流石にもうユーリスのそんな姿を見たら従者として情けなくて涙が出そうだ。
いや、俺は見ることないけど。
「うーん……確かに嫌だな。今の姿だとルコがノスばっかり可愛がるから。」
しばらく真剣に考えたかと思うと、明後日の方向の返事が返ってきた。
「はあ。」
「ノスも絶対それ目当てで進化しないんだと思う。僕がこいつならそうするぞ。だからルコは、もうノスを膝に乗せたり一緒に寝たり、撫でたりしないこと。わかった?」
…………うん。
あほくさ。
「坊っちゃまがノスガルデルタ様をコイツ呼ばわりしたり放り投げたり雑に扱わなければ、ちゃんとあなたの方に懐くはずですよ。あなたの守護獣なのですから。」
己の怠慢を人のせいにしないでほしい。
「わからずや。」
ユーリスが口を尖らせて言う。
いやいや、どっちが。
「それが賭けに勝ったお願いとやらなら恐れ入りますがお断りいたします。守護獣との信頼関係はご自身の努力で築いてください。」
「う゛ぅ゛……」
唸るな。
「で、お願いは何になさいますか?」
「 紫紺の森に行きたい。麓の村にある別荘に一泊とか二泊で。」
「ご旅行ですか。紫紺の森は飼料になる素材が豊富ですので良いですね。随行者や荷物を手配いたします。いつが良いですか?」
「ちがう!2人だけで行くんだ。大勢お供がいたらワクワクしないだろ?」
ええ……それ俺の負担半端なさそう……。
そういう冒険とか自分だけの旅とか憧れちゃうお年頃なんだろうけど、デフォルトで俺が計画に組み込まれてるあたり考えが根っこからボンボン。
「私と2人では食事とか移動とか不便ですよ。我慢できますか?」
「できる。」
絶対嘘だ。
これは何としても遠慮したい。
けど、自分が大変だから嫌だというのは流石に仕えている主人にしていい主張じゃないよな。
「分かりました。公爵様がお許しになったら参りましょう。」
俺は伝家の宝刀を取り出した。
44
あなたにおすすめの小説
令嬢に転生したと思ったけどちょっと違った
しそみょうが
BL
前世男子大学生だったが今世では公爵令嬢に転生したアシュリー8歳は、王城の廊下で4歳年下の第2王子イーライに一目惚れされて婚約者になる。なんやかんやで両想いだった2人だが、イーライの留学中にアシュリーに成長期が訪れ立派な青年に成長してしまう。アシュリーが転生したのは女性ではなくカントボーイだったのだ。泣く泣く婚約者を辞するアシュリーは名前を変えて王城の近衛騎士となる。婚約者にフラれて隣国でグレたと噂の殿下が5年ぶりに帰国してーー?
という、婚約者大好き年下王子☓元令嬢のカントボーイ騎士のお話です。前半3話目までは子ども時代で、成長した後半にR18がちょこっとあります♡
短編コメディです
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】
おしまいのそのあとは
makase
BL
悪役令息として転生してしまった神楽坂龍一郎は、心を入れ替え、主人公のよき友人になるよう努力していた。ところがこの選択肢が、神楽坂の大切な人を傷つける可能性が浮上する。困った神楽坂は、自分を犠牲にする道を歩みかけるが……
シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました
無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。
前世持ちだが結局役に立たなかった。
そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。
そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。
目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。
…あれ?
僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?
侯爵様の愛人ですが、その息子にも愛されてます
muku
BL
魔術師フィアリスは、地底の迷宮から湧き続ける魔物を倒す使命を担っているリトスロード侯爵家に雇われている。
仕事は魔物の駆除と、侯爵家三男エヴァンの家庭教師。
成人したエヴァンから突然恋心を告げられたフィアリスは、大いに戸惑うことになる。
何故ならフィアリスは、エヴァンの父とただならぬ関係にあったのだった。
汚れた自分には愛される価値がないと思いこむ美しい魔術師の青年と、そんな師を一心に愛し続ける弟子の物語。
悪役令息上等です。悪の華は可憐に咲き誇る
竜鳴躍
BL
異性間でも子どもが産まれにくくなった世界。
子どもは魔法の力を借りて同性間でも産めるようになったため、性別に関係なく結婚するようになった世界。
ファーマ王国のアレン=ファーメット公爵令息は、白銀に近い髪に真っ赤な瞳、真っ白な肌を持つ。
神秘的で美しい姿に王子に見初められた彼は公爵家の長男でありながら唯一の王子の婚約者に選ばれてしまった。どこに行くにも欠かせない大きな日傘。日に焼けると爛れてしまいかねない皮膚。
公爵家は両親とも黒髪黒目であるが、彼一人が色が違う。
それは彼が全てアルビノだったからなのに、成長した教養のない王子は、アレンを魔女扱いした上、聖女らしき男爵令嬢に現を抜かして婚約破棄の上スラム街に追放してしまう。
だが、王子は知らない。
アレンにも王位継承権があることを。
従者を一人連れてスラムに行ったアレンは、イケメンでスパダリな従者に溺愛されながらスラムを改革していって……!?
*誤字報告ありがとうございます!
*カエサル=プレート 修正しました。
妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。
藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。
妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、
彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。
だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、
なぜかアラン本人に興味を持ち始める。
「君は、なぜそこまで必死なんだ?」
「妹のためです!」
……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。
妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。
ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。
そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。
断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。
誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる