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しおりを挟む手放しに喜びたい自分と、絶対おかしいと腕を組む自分が一瞬のうちに戦う。
そして思い至った。中学時代、ヒロはクラスの男子に悪ふざけでチョコをあげて、狼狽する相手を話のネタにしていたことがあるってヒロと同じ中学だったやつが言っていた事を。
なんだ、ちょっと手口を変えただけ。ヒロにとって俺はタチの悪い冗談で揶揄っていい相手だっただけの話。
俺級にヒロを愛し抜いてるとそれでも何でもヒロがてぇてぇがね。
でも、あーあ。
「ありがとう。俺、最初に会った時からヒロのこと好きだった。今も大好きなんだ。」
みっともなく狼狽えて楽しませてあげられなくてごめん。
きっと「冗談なのに何本気にしてんの?」ってドン引きされて終わりだろう。
でも、嘘の告白でもヒロを断るなんて俺には出来ないよ。
貰ったお菓子を大事に手に持ちながらヒロの目を見る。
するとヒロは少し赤い顔の口元を掌で覆った。
暫くして口から手を離し言う。
「うん。……うん!じゃ…じゃあ俺と付き合ってくれる……よね?」
…………ん?何でまだ続けるんだ?
そしてそのわざとらしい純情演技はなんだ。らしくないな。
……そうか。からかい勝負だな。
キモくなってごっこに耐えられなくなった方が負けってやつ。
さっき顔真っ赤にして噴き出しそうになってたし、こりゃ負ける気がしないわ。
「もちろん。よろしくな。」
俺は本気で言った。ヒロが真顔でぶんぶん頷く。真顔て、既にちょっと引いてんじゃねーか。でも勝負から引く気は無いらしい。俺的にはありがたいけど。
今日は恋人のつもりでいていいんだよな。一生の思い出にしよう。
ありがとうな、ヒロ。いっぱいちゅき。
「あのさ、ガッついてるわけじゃないんだけどこの後……」
ヒロが言いにくそうに話題を変えてくる。
「ん?食べ足りない?デザート食う?」
確かに結構値段高いけど、今日は俺が奢ってもいいくらいだ。
「いや、お店出ない?」
他の安い店でもっと食べたいのかな。
なら出る前にとトイレに行って、帰ってきたら会計が済んでいた。
びっくりして払うって言ってもホワイトデーのお返しだからいいって。
設定徹底しすぎでしょ。
「で、これからどうする?2軒目行く?次は俺出すからさ。」
結局ヒロに払ってもらって退店し、俺たち以外は人のいないホテルの廊下で聞いてみる。
「お店は……もういいかな?」
ヒロは歯切れ悪く言った。え、帰りたかったのか?俺が思ったよりしぶとくネタにつきあうから引っ込みがつかなくなってきたのかもしれない。
俺は、もうちょっとこの茶番続けたいんだけど。
「ならうちで飲み直す?俺んちのほうがこっから近いし……」
悪あがきで時間稼ぎを試みる。
「いや、あの……あのね。今から言うこと、どうか引かないで聞いて欲しいんだ。いい?」
ヒロが神妙な顔で言った。
来ちゃった。ネタバラシか。流石に今の流れで部屋に誘ったのは不味かったかな。
「うん……」
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だから設定凝りすぎだってば。
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