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しおりを挟むバレンタインの日、ヒロは恐ろしい数のチョコを貰っていた。
「わあ!ありがと~。」
なんて言ってヒロは全部嬉しそうに受け取る。無類の女好きだから。
こんだけハイスペで女の子が好きなチャラい性格だから、そりゃもう女性たちから凄まじいアピールが日夜されている。
でもヒロは女好きのくせにというか女好きだからというか1人に決めて付き合ったりはしないのだそう。
遊んでたりはするんだろうな。
絶対聞きたくないから聞かないけど。
「ユノみたいなやつ初めてだよぉ。俺、女の子にモテるようになったら男友達いなくなっちゃって~。大学でユノに会えて本当によかったぁ。」
なんてヘラヘラ嬉しげに俺に笑いかけるヒロ。
ばーか。それは俺の内心が他の女どもと同じだからだよ。
ごめんな。
ヒロがトイレに行っている最中は控えめな地味女子どもが講義机に怨念のこもってそうなチョコを置いていく。
机はすぐに山盛りになって、とうとう天板下の道具入れスペースにまで突っ込みだした。
チョコの机詰め放題が終わった所で、隣に座っていた俺は机の下に詰め込まれたチョコを一つ取り出してみる。
俺ですら知ってる高級輸入チョコの豪華な外袋。
女ってだけで、ヒロにアピール出来ていいよな。
俺も女だったらよかった。
でも、女だったらヒロの友達にはなれなかっただろう。
それでもどうにか一晩遊んでもらえたりは出来ただろうか。
こんな風にすぐ側で友達面しながら恋心拗らせてるよりはそっちの方がよかったかも。
なんてしけたことを考える。
考えていたらヒロが戻って来るのが見えた。
目が合って、慌てて手にしていたチョコを机に戻す。
いつも飄々としてゆったり歩くヒロが、珍しく少し早足で机に辿り着く。
「それ、チョコレート?」
やや頬を赤くして尋ねてくる。分かりきってるのに白々しい。
しかも全く貰えてない俺に聞くとかかなりのマウントムーブだろう。こいつのこういう所が友達のいない所以だと思う。
俺レベルにヒロを愛してると「嬉しそうなの超可愛い結婚したい」としか思わないけどね。
「そうだよ。上に乗らなかったから中入れといた。」
俺もぎこちなく笑い返して指さした。
俺は人様のチョコを恨みがましく盗み見たのではなく、落ちそうだったから親切にも中にしまったのだ。歴史改変。
「う、うん!!」
何だか普段よりも焦った様子で俺が戻したばかりのチョコを引っ張り出す。
しばらく外袋を見つめて、蕩けるような顔で笑った。
「ふひゅっ」
俺がやらかしちまったのかと一瞬思ったが、斜め前に座ってヒロを見ていた女子生徒の吐息だった。
分かる。やばいよな、ヒロのこの顔は。
でもこれ標準装備だから。
友達の俺にすら大盤振る舞いだから。
「嬉しいな。ユノ、ありがとう。」
その顔のまま俺を見て言う。
ほらね。
俺、盗み見してただけだけどね。そんなに好きなメーカーだったんだろうか。
覚えておこう。
にしても、他のチョコに比べて喜びすぎじゃないだろうか。
まさかそのチョコの贈り主が好きなわけじゃあるまい。見えるところに記名やメッセージカードはなかったし、紙袋の下に入り込んでるんだろう。だから外からじゃ誰からかもわからないはず。
でも、もしヒロが今年こそこのチョコの山から特別を見つけてしまったら……
そんな俺の一抹の不安は、3月14日に良い店があるからご飯に行こうと誘われたことで少し払拭された。
どうやら今年もホワイトデーはスルーのようだ。
ヒロは去年も一切チョコのお返しをしていない。
本命でもない子に返すのは面倒だけど勝手にくれる分には構わないらしい。
なかなか最低な発言だが、俺クラスにヒロにぞっこんラブだと「潔くてしゅき!」としか思わない。
そんなこんなで夜待ち合わせし、他の男ならとっておきのデートにしか使わないようなホテルにあるイタリアンの個室に男2人で場違い丸出しで座った。
女しか相手にしてこなかったからかヒロが俺といくのはいつもそんなとこばっかりだ。
そして飯も酒も進んだ所で、ヒロからお菓子を渡され告白され、今に至る。
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