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しおりを挟むドジな女もいたもんだ。それか、渡すだけでよかったのかな。それでヒロは俺がチョコあげたって勘違いして、お返しをしてきたのか。
え……?それって……
「……ユノは俺に告白してない……。今日も、悪ノリしただけ……。」
ヒロは噛み締めるように平たい声で言った。腕の力が緩んだので俺はヒロから一歩離れて向き合い、場を取り繕うように明るく尋ねた。
「そうだよ。お、お前も中学の時みたいにふざけただけなんだろ?色々やりすぎでウケるんだけど。」
あはは、とから元気で笑う。
ヒロは暫く視線を下げたまま無言だった。
「ヒロ?おーい、ひろみさーん?」
この空気、何だかこのままだと友達ですらいられなくなるかもしれない。
現実を直視したくなくて場違いに軽い感じで呼びかける。
「……ごめん、ふざけてない。本当に俺はユノが好きなんだ。」
ヒロが視線を上げてまっすぐこちらを見て言った。
心臓止まりそう。
「は?……え?でも、ヒロ女好きじゃん。」
心臓が痛いくらいドキドキしだしてどうにかなりそうだけど、かろうじて踏みとどまって疑問をぶつける。
入学して出会ってから1年、ずっとヒロが女にチヤホヤされて喜んでる様を俺は見て来たのだ。
「それは、そう装ってないと俺がユノを好きだってバレちゃうから。俺、直ぐ顔や態度に出るし……」
確かに、俺に対する態度がやたらマメな彼氏みたいだなと思った事は多々ある。でも、それはきっと女と遊び慣れてるからで。
「いや……いやいや、また揶揄ってるだけでしょ。いくらヒロでも怒るよ。」
「俺の中学の話を聞いたから信じてくれないの?」
悲しそうに言われて心がぐらつく。
あーもう、どこまでが本当?何を信じたらいいんだ?
わからん!!
「正直、そうだな。違うの?作り話とか?」
「友達にバレンタイン渡して、後でふざけて渡したって言い回ったのは本当。」
ヒロが言う。やっぱりサイテーな事してんじゃん。でも、様子が何か……俺、絆されてんのかな。
「事情が、あったとか?」
「俺……元々男の方が好きで、その時ちょっと気になってた友達に渡したんだ。俺はよく貰ってたからあんまり深くは考えてなくて。そしたら困った相手が他の友達に相談したのが広まって、クラスが微妙な空気になって、それで……。」
「ヒロなりに事態を収拾しようとした結果てこと?」
「そんなに格好いいもんじゃない。自分守ろうとしただけ。最低だよな。」
ヒロが暗い目で言う。可哀想。守ってあげたい。
とか思う俺完全にやってんな。
「いや、そうなったら仕方がない気も……中学生だしさ。」
「ありがとう。それで、男のこと好きって知られないように女とばっかり絡んでた。けど、女だと今度は仲良くしてると当たり前みたいに恋愛の話になる。」
「お前のスペックだと、そうだよな……」
「でも女の人は好きになれなかった。だから、みんな大好きって事にした。そしたら真面目な関係を迫られないから。」
「今まで大変だったんだな……」
人それぞれ苦労があるんだ。二次元キャラぽいヒロでもそうなんだ。そりゃそうか。
「ユノのそういうところ、すごい好き。勘違いでも気持ち伝えられてよかった。ダサいヤツになってるけど……。」
ヒロが苦笑いで言ったのではたと本題を思い出す。
そっか。ヒロが俺を好きってのはガチって事じゃん。
え、うそ、やばいやばいやばいやばい。
顔にガッと熱が昇る。
「ヒロ、結婚しよう。」
「え?」
ヒロがポカンとした顔で見てくる。
何でだ?両思いなんだから、出来なくてもするよね?結婚。
「言っただろ俺もヒロが大好きだって。」
「ゆ、ユノは俺がふざけてると思って合わせてたんじゃないの?」
ヒロが顔をくしゃりと歪めて言う。
何だその表情。多分俺しか見た事ないだろそういう事にしといてあーたまらん。
「違う。ヒロがふざけているのを利用して両思い気分を味わおうとしてた。さっきはバックハグされて勃起しそうになったから慌てて誤魔化しましたすみません。」
ペコリと頭を下げる。
「……もう一度抱きしめていい?」
ヒロの上擦った声最高録音したい。
コクリと頷く。
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