完結R18BL/君を愛することはないと言われたので、悪役令息は親友になってみた

ナイトウ

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エピローグ1



オージと再会した後、俺たちはお互いのこれまでを報告しあった。
俺が帰ってきたのはオージの書斎で、前みたいにソファに座ったオージを椅子代わりにして重なるように俺も座って話しをした。
それだけで、帰って来れた嬉しさがさらに増す。
俺たちが話し始めてしばらくしたらトトが書斎にやってきて、ちゃんとこっちに戻れていたことも分かった。
屋敷のみんなも元通りになっているそうで一安心だ。

先に俺が、言葉が分かる魔法をまたオージに掛けてもらって起きたことを話した。
オージには何度も感謝されて、謝られた。
勝手に帰されたこととか、文句言ってやりたいことは色々あったはずだけど、オージに会ったら全部どうでも良くなった。
ドロシーさんの話をしたら驚いてたけど、助けてくれたことにすごく感謝していた。

それからオージの話を聞いた。
俺が自分の世界に戻された後、こっちではもう1年近くが経過していた。
オージは一度スマラルダス大公を退位する表明をして国の運営を大臣達に引き継いだそうだ。
その後、二重に呪いを引き受けた体は急速に状態が悪化し、半年くらいで動けなくなり俺が呪いを解くまでかろうじて周りの魔法で命をつなぎ止めていたという。

「もう大公じゃなくなった僕を、みんなはずっと助けてくれたんだ。」

オージが嬉しそうに言っていた。

呪いが解けた後、体に受けたダメージを治療し終わる頃に、グリファさんがやってきたそうだ。そこで魔力を差し出す契約は解消して、資産も返す必要があると告げられた。
既に俺の呪いを引きはがした対価としての魔力が十分提供されて釣り合いが取れたからだって。

「どうも、呪いが解けてから力が強くなったみたいなんだ。今まで呪いが本来の力を阻害していた部分があったのかも。」

それにしても、呪いで短命だったからとはいえ死ぬまで魔力を渡す約束がチャラになって財産まで帰ってくるなんて、オージの今の魔力はどれだけなんだと言う話だ。
ともかくそんな経緯でまた魔法が使えるようになったオージは、屋敷の人達を元に戻して、そしてあの僕が渡った道を作った。

「魔力が戻ったことは分かったけど何で俺、帰って来れたんだろう。何度も異世界に行くダメージに耐えられないから、一度帰ればもうこっちには来れないってオージ言ってたよね。」

そう言えば、今回は前みたいなだるさも感じない。

「それが、嘘みたいな話なのだけど、無理に外からの力で異世界に送るからダメージを受けるみたいで、作った道を自分の意志で渡ればあまり影響が無いようなんだ。帰ってきたトトやラタたちがピンピンしてたから、調べてみて分かったんだけど。」

「な、何それ……。」

拍子抜けしてしまった。だから、あのやり方だったのか……。

「それなら先に言ってよ!なんかうまい方法で!」

「ごめん。思いついて直ぐに道を作ったから、カナトに会うこと以外考えてなかった。」

「もー!」

嬉しいけど恥ずかしい気持ちもあって口を尖らせた。

「本当にごめん。言い訳すると、僕が迎えにいくつもりで作った道だったんだよ。ああしておけば、来るのが僕だって分かるかと思って。向かう途中でカナトが走って来たからびっくりした。」

「俺も、オージに会うこと以外考えてなかった。」

「うん、嬉しい。」

オージが後ろから俺の頭を撫でた。

「あっ、てことは、また向こうに戻ることも出来るの?」

「そうだよ。戻りたい?」

「まあね。借りてる部屋引き払おうと思って。これからオージと一緒に住むなら、多少身辺整理しないと。」

あと、ケータイ解約して、貯金引き出して、異世界に移住するには他に何がいるんだ?

「カナト、こっちで暮らしてくれるつもりなの?」

オージが尋ねてくる。

「え?暮らさないの?結婚したよね俺たち」

「そうだけど、カナトから向こうの生活を奪うみたいで。気が引けるよ。」

「じゃあ離れて暮らす?」

「それは僕は無理。」

俺だって無理だよ、じゃあどうするのさ。という顔で頭上のオージを見上げる。

「言っただろう?僕はもう、大公じゃないんだ。カナトの世界に行くことだって出来る。」

「えっ!オージが日本に来るの?」

「カナトの生まれた場所に行ってみたいな。」

そりゃ、遊びに来るとかならいいけど。
東京なら遊ぶところもたくさんあるし。

「でも、俺の世界には魔法がないからオージも日常生活で使わない方がいいと思うんだ。それにオージ、こっちでは魔法が使えて不自由ないかもしれないけど、日本に行ったらオージだって学歴も職歴もないアラサー無職なんだよ?短期離職者の俺が言えた立場じゃないけど。戸籍だってないしさ。」

戸籍とかは魔法でなんとかなるのかな。いや、そういうことって犯罪になったりしないのか?

「アラサームショク?タンキリショクシャ?ごめん、よく分からなくて。」

首を傾げるオージに、仕事を見つけるのが大変ってことだと説明した。それに対してオージはなるほど、と真面目に頷いている。どうやら本気で日本に移住しても良いと思ってるみたいだ。どんな所かも知らないのに、俺が住んでるからってだけで。

「結婚は夢物語じゃないって、母さんがよく言ってたんだ。俺の両親、無理し続けて別れちゃったとこあるからさ。だから俺はやっぱり現実的に考えて生活しやすい所がいいと思う。」

俺がそう言えば、オージは分かったと言って俺をぎゅっと抱きしめた。

「カナトと一緒なら僕はどこでも頑張るから、カナトが納得する選択にしよう。迷うなら僕も一緒に考えるよ。だから、すぐに決めないでよく考えて。」

その言葉にうんと頷く。
俺に合わせてくれようとするオージの気持ちは嬉しいけど、ここは両方の世界を知ってる俺がしっかり判断しないと。
二人の将来の事だからね。

「ねぇオージ、仮にこっちで暮らすとしたら、どうやって暮らすことになるのかな。オージはもう王様じゃないなら、別の仕事を探すの?」

俺はもし魔法がまた使えるようにならなかったらパン屋さんとかレストランとかで働こうかな。
魔法以外でプログラミングの経験が活かせる仕事があればそれもいいし。

「え?あぁ……うん。そうだね。そうなると思う。」

なんだ、その歯切れが悪い感じ。

「何か気になる言い方なんだけど……」

「うん……。」

「ライキャク!ライキャク!ジンジャーホウムダイジント、ジャムソウムダイジンガ、オコシデスー!タイコウサマ、カナトサマ!オウセツシツヘドウゾ!ドウゾー!!」

話していたら、部屋にいたオウムが鳴きだした。
え?俺も?

「俺がいるって何で二人がもう知ってるの?」

「多分ラタあたりが伝えたんだろうな。大臣たちが僕を助けてくれた事で頭が上がらなくなってるみたいだから。カナトは行かなくていいよ。僕が会ってくる。」

「俺、二人に会いたい。オージを助けてくれた事、俺からもお礼言いたいし。」

また別の日に来て貰おうよ、今日はゆっくりして。と背後から引っ付いて引き止めてくるオージを引き剥がして応接室に向かった。


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