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棚垣が帰った後、今度は客間に麒臣君と2人になる。
ジャケットとネクタイを脱いでくつろぐ姿も本当に様になっててカッコイイ。
「あ、あのさ、さっきの2億圓の話……」
横並びで十三夜の月が見える縁側に座っておずおずと切り出した。
「うん。私が用意するから安心して。」
優しく笑う笑顔に何か胸がぎゅっとなる。
「それって、僕が麒臣君に嫁ぐってことっ?」
ドキドキして声が裏返った。
麒臣君は顎に手を当ててしばし考え。
「うーん。まだ調整中だから詳しくは言えないけど、それはないかなぁ。私の所に嫁に来たら、麟太君がお父さんからせっかく継いだ爵位が無くなるし。」
えっ……
それは、麒臣君的には僕に爵位があったほうがいいってこと?
「そ、そしたら子供は?作らないの?」
「そりゃもちろん君との子供は欲しいよ。
直ぐにとは言わないけど。」
だよね。そのために僕の借金を肩代わりしてくれるんだろうし。
でも、子供は欲しいけど結婚はしないって……
なるほど。妾ってことか。
本妻との間にアルファが生まれなかったから男オメガを妾にしてアルファの子供を作るってのは聞く話だ。
そんで、本妻にベータの男子がいた日にはそりゃもう揉めに揉めるみたい。
直ぐには欲しくないってのは、本妻の子供の様子を見てからにしたいってことなんだろう。
そっか。麒臣君、本妻いるんだ……
ま、まあ、菱一財閥総裁の孫って言ったらそりゃすっごい奥さんがいても当然だよね。
スペアの妾に2億出すくらいだしね!
うぅ、なんか自分で言ってて胸が痛い。
借金を代わりに払ってくれて、しかもそれが麒臣君だなんてすっごく僕は運がいい。
と思おう。
「分かった!僕、頑張って元気な麒臣君の赤ちゃん産むよ!!」
「ありがとう。でもしばらくは2人で過ごそう?」
「あ、うん。分かった。」
やんわり釘を刺されてしまった。
僕としては直ぐにでも欲しいんだけどな。
麒臣君の赤ちゃん。
「麟太君、今日は遅いから泊まっていい?」
「もちろんいいよ。布団敷くね。」
ぐい呑みや肴が乗った座卓を隅に寄せ、客用布団を入れた押入れを開けた。
何かちょっとカビ臭い……そういえば最後に干したのいつだ?
僕はやった覚えがない。ということは、お金が無くなって女中さんたちに辞めてもらう前だ。
ヤバい……
「麒臣君、僕の布団で寝てもらっていい?」
「もちろん。」
許可をもらったので、自室から布団一式を客間に運んで畳に敷いた。
麒臣君にはその間浴衣に着替えてもらう。
布団を敷いている間背後のシュル、シュルって衣擦れの音がやけに聞こえてきてすごい落ち着かなかった。
「大丈夫?」
布団を敷き終わっても布団の横で固まったままでいたら、背中にくっつくように麒臣君が体を寄せてきて、肩から顔をのぞかせた。
やもう。近付かれると麒臣君のいい匂いが。
「あ、うん。大丈夫!」
慌てて前に逃げて布団の上に移動し、振り向く。
浴衣を着た麒臣君は、腕が長いせいで丈が合ってなくて、男らしく骨と筋が浮き出た手首がむき出しになっている。
さっきより首元の肌が出てて、そこも深く鎖骨の影が出来ていた。
うわぁ、浴衣姿も素敵というか艶やかというか、エロいというか、心臓に悪い。
「もう寝る?」
「あっ、ごめん。勝手に布団の上乗って。僕は別の布団で寝るからこっちは麒臣君だけで使いなよ。」
「だぁめ」
長身な体に正面から抱きつかれて、そのまま一緒に布団に倒れこんだ。
「ちょっ、麒臣くっ」
「はぁ、このお布団、麟太のエッチな匂いがする……」
そのとたん、麒臣君の体からぶわぁっと甘くて幸せで切ない気分になる香りが吹き出してくる。
頭がぼーっとしてまた麒臣君のことでいっぱいになる。
本能的にこの体は絶対離しちゃいけないんだって思って、密着する熱を必死で抱き返した。
「会いたかった。ずっと。」
低い掠れた声で耳元で囁かれる。
胸が苦しいくらいにキュウっとした。
「僕も。」
「麟太はもう私のものだよ。」
「うん。」
麒臣君が体を起こして綺麗な顔で僕を覗き込むと、ゆっくり近づいてきてキスをしてくれた。
触れ合った瞬間また頭に霞がかかって体が浮くような心地よさに包まれる。
唇の赤い肉を食みながら麒臣君の舌が僕の中に差し込まれる。
僕も一生懸命舌を伸ばして入ってきた舌に応えるように絡めた。
初めて味わう他人の口の中は熱く潤ってて、すごく甘い。
心があったかく満たされていく。
幸せだなぁって思った。
ジャケットとネクタイを脱いでくつろぐ姿も本当に様になっててカッコイイ。
「あ、あのさ、さっきの2億圓の話……」
横並びで十三夜の月が見える縁側に座っておずおずと切り出した。
「うん。私が用意するから安心して。」
優しく笑う笑顔に何か胸がぎゅっとなる。
「それって、僕が麒臣君に嫁ぐってことっ?」
ドキドキして声が裏返った。
麒臣君は顎に手を当ててしばし考え。
「うーん。まだ調整中だから詳しくは言えないけど、それはないかなぁ。私の所に嫁に来たら、麟太君がお父さんからせっかく継いだ爵位が無くなるし。」
えっ……
それは、麒臣君的には僕に爵位があったほうがいいってこと?
「そ、そしたら子供は?作らないの?」
「そりゃもちろん君との子供は欲しいよ。
直ぐにとは言わないけど。」
だよね。そのために僕の借金を肩代わりしてくれるんだろうし。
でも、子供は欲しいけど結婚はしないって……
なるほど。妾ってことか。
本妻との間にアルファが生まれなかったから男オメガを妾にしてアルファの子供を作るってのは聞く話だ。
そんで、本妻にベータの男子がいた日にはそりゃもう揉めに揉めるみたい。
直ぐには欲しくないってのは、本妻の子供の様子を見てからにしたいってことなんだろう。
そっか。麒臣君、本妻いるんだ……
ま、まあ、菱一財閥総裁の孫って言ったらそりゃすっごい奥さんがいても当然だよね。
スペアの妾に2億出すくらいだしね!
うぅ、なんか自分で言ってて胸が痛い。
借金を代わりに払ってくれて、しかもそれが麒臣君だなんてすっごく僕は運がいい。
と思おう。
「分かった!僕、頑張って元気な麒臣君の赤ちゃん産むよ!!」
「ありがとう。でもしばらくは2人で過ごそう?」
「あ、うん。分かった。」
やんわり釘を刺されてしまった。
僕としては直ぐにでも欲しいんだけどな。
麒臣君の赤ちゃん。
「麟太君、今日は遅いから泊まっていい?」
「もちろんいいよ。布団敷くね。」
ぐい呑みや肴が乗った座卓を隅に寄せ、客用布団を入れた押入れを開けた。
何かちょっとカビ臭い……そういえば最後に干したのいつだ?
僕はやった覚えがない。ということは、お金が無くなって女中さんたちに辞めてもらう前だ。
ヤバい……
「麒臣君、僕の布団で寝てもらっていい?」
「もちろん。」
許可をもらったので、自室から布団一式を客間に運んで畳に敷いた。
麒臣君にはその間浴衣に着替えてもらう。
布団を敷いている間背後のシュル、シュルって衣擦れの音がやけに聞こえてきてすごい落ち着かなかった。
「大丈夫?」
布団を敷き終わっても布団の横で固まったままでいたら、背中にくっつくように麒臣君が体を寄せてきて、肩から顔をのぞかせた。
やもう。近付かれると麒臣君のいい匂いが。
「あ、うん。大丈夫!」
慌てて前に逃げて布団の上に移動し、振り向く。
浴衣を着た麒臣君は、腕が長いせいで丈が合ってなくて、男らしく骨と筋が浮き出た手首がむき出しになっている。
さっきより首元の肌が出てて、そこも深く鎖骨の影が出来ていた。
うわぁ、浴衣姿も素敵というか艶やかというか、エロいというか、心臓に悪い。
「もう寝る?」
「あっ、ごめん。勝手に布団の上乗って。僕は別の布団で寝るからこっちは麒臣君だけで使いなよ。」
「だぁめ」
長身な体に正面から抱きつかれて、そのまま一緒に布団に倒れこんだ。
「ちょっ、麒臣くっ」
「はぁ、このお布団、麟太のエッチな匂いがする……」
そのとたん、麒臣君の体からぶわぁっと甘くて幸せで切ない気分になる香りが吹き出してくる。
頭がぼーっとしてまた麒臣君のことでいっぱいになる。
本能的にこの体は絶対離しちゃいけないんだって思って、密着する熱を必死で抱き返した。
「会いたかった。ずっと。」
低い掠れた声で耳元で囁かれる。
胸が苦しいくらいにキュウっとした。
「僕も。」
「麟太はもう私のものだよ。」
「うん。」
麒臣君が体を起こして綺麗な顔で僕を覗き込むと、ゆっくり近づいてきてキスをしてくれた。
触れ合った瞬間また頭に霞がかかって体が浮くような心地よさに包まれる。
唇の赤い肉を食みながら麒臣君の舌が僕の中に差し込まれる。
僕も一生懸命舌を伸ばして入ってきた舌に応えるように絡めた。
初めて味わう他人の口の中は熱く潤ってて、すごく甘い。
心があったかく満たされていく。
幸せだなぁって思った。
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