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2度目の人生はニートになった悪役だけど、賢王に全力で養われてる
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数日後の深夜、にわかに王宮が騒がしくなるのをベッドから察知した。
伝令で分かってたことなのでやっと帰ってきたか、と思うだけで暇つぶしに読んでる本にまた目を落とす。
「ただいまエド!!」
けど、数ページも読み終わらないうちにバタバタと元気な足音がして嵐は私の部屋までやってきた。
ずいぶん昔にすっかり私の背丈を越して、熊みたいに筋肉質になった厚い体が転がるようにこっちにやってくる。
「抱きつくな。臭い。」
本から目を離さず旅装束のままベッドに乗り上げようとするレイモンドを片手で制した。
「ごめん!すぐ湯浴みしてくるね。元気そうでよかった!」
ドタバタとまた転がるように部屋を出て行く嵐。
扉の向こうであたふた嵐の後を追う家臣の足音がした。
また暫く本を読んでるとさっぱりして軽装に着替えたレイモンドが入ってくる。
小綺麗になったことを確認して手にしていた本を脇に置くと、体を少しずらしてキングベッドのスペースを半分開けてやった。
そこにすかさず満面の笑みの大きな犬が乗り上げ、横から飛びついてくる。
頬にぶちゅうと挨拶のキスをされた。
好意が暑苦しすぎる。
「しばらく休んだら家臣んとこに行くんだぞ。彼らを労うのが先だろが。」
「嫌だ。今日はもうこの部屋から出ないって言ってある。」
その言葉に天を仰いだ。
レイモンドがこうして不可思議に懐いてくるので、変な噂がたつし忠義に厚い家臣たちから結構私が冷たい目で見られている。
これで更に風評被害が増しそうだ。
無能を装うのも大変である。
「まあいい。成果はどうだ。ジネくらいまではぶんどったか?」
「ジネも貰ったし、サンクレーヌもおまけしてくれた。」
サンクレーヌには金山がある。おまけでくれるレベルの領土じゃない。
フルドール王に少し同情してしまった。
「それよりエド、あれ何?何で女の絵がエドのとこにあるの?」
置きっ放しにしてた王女の肖像画をレイモンドが指して言う。
「ああ、王太后が置いてったんだ。貴様がエルペーニャ王女と結婚するように説得しろってさ。」
「するわけないだろ。エルペーニャに良いようにされるだけだ。」
「貴様の母親は議会に対する王家の後ろ盾になると思ってるよ。」
「馬鹿馬鹿しい。外国使って自国民に圧力かけるなんて。」
「まあ同感だな。もっといい嫁さん貰え。」
「エドは俺が結婚してもいいの?」
「私はどうでもいい。」
「じゃあしないよ。」
しまった。これじゃ説得にならない。
ああ、また私への風当たりがキツくなる。
「そうやってフラフラしてるから家臣どもがヤキモキするんだろ。跡継ぎ跡継ぎって、言われてるだろうに。」
とりあえずもうちょっと粘る。
身の安全のためといえなんでこの私がこんな信条に反することをしなきゃいけないんだ。
「跡継ぎが必要だから子供が欲しいとか、子供が欲しいから結婚するとか、なんか変じゃないか。」
同感だ。でもそれが世の中ってもんだろ。
そう返そうとして、しゅんとした顔のレイモンドに見つめられて言葉が出なくなる。
前回はコイツの悲壮な顔を気味よく思えたのに、養われてるうちに私もヤキが回ったもんだ。
「まあ、実子でなくても他の王族の中から後継者を育てればいいんじゃないか。」
要は国が治まりゃいいんだ。
次のレイモンドの遠征の時に叔母に追い出されたら、きっちりこいつに責任取らせよう。
「そうだよね!俺もそう思う!養子をとって一緒に育てようねエド。」
一気に顔が明るくなったレイモンドを見て少し胸が晴れた気がするけどきっと気のせい。
それと私がお前の子育てに関わる義理はさらさらないけども。
「だから、これからは母上に頼まれても絶対に俺に結婚するよう言ったりしないで。母上にもよく言っておくから。」
はっきりした口調で言われ、思わず頷きそうになって我に帰る。
「私に指図するな。私のおかげで王になれたくせに。」
伝令で分かってたことなのでやっと帰ってきたか、と思うだけで暇つぶしに読んでる本にまた目を落とす。
「ただいまエド!!」
けど、数ページも読み終わらないうちにバタバタと元気な足音がして嵐は私の部屋までやってきた。
ずいぶん昔にすっかり私の背丈を越して、熊みたいに筋肉質になった厚い体が転がるようにこっちにやってくる。
「抱きつくな。臭い。」
本から目を離さず旅装束のままベッドに乗り上げようとするレイモンドを片手で制した。
「ごめん!すぐ湯浴みしてくるね。元気そうでよかった!」
ドタバタとまた転がるように部屋を出て行く嵐。
扉の向こうであたふた嵐の後を追う家臣の足音がした。
また暫く本を読んでるとさっぱりして軽装に着替えたレイモンドが入ってくる。
小綺麗になったことを確認して手にしていた本を脇に置くと、体を少しずらしてキングベッドのスペースを半分開けてやった。
そこにすかさず満面の笑みの大きな犬が乗り上げ、横から飛びついてくる。
頬にぶちゅうと挨拶のキスをされた。
好意が暑苦しすぎる。
「しばらく休んだら家臣んとこに行くんだぞ。彼らを労うのが先だろが。」
「嫌だ。今日はもうこの部屋から出ないって言ってある。」
その言葉に天を仰いだ。
レイモンドがこうして不可思議に懐いてくるので、変な噂がたつし忠義に厚い家臣たちから結構私が冷たい目で見られている。
これで更に風評被害が増しそうだ。
無能を装うのも大変である。
「まあいい。成果はどうだ。ジネくらいまではぶんどったか?」
「ジネも貰ったし、サンクレーヌもおまけしてくれた。」
サンクレーヌには金山がある。おまけでくれるレベルの領土じゃない。
フルドール王に少し同情してしまった。
「それよりエド、あれ何?何で女の絵がエドのとこにあるの?」
置きっ放しにしてた王女の肖像画をレイモンドが指して言う。
「ああ、王太后が置いてったんだ。貴様がエルペーニャ王女と結婚するように説得しろってさ。」
「するわけないだろ。エルペーニャに良いようにされるだけだ。」
「貴様の母親は議会に対する王家の後ろ盾になると思ってるよ。」
「馬鹿馬鹿しい。外国使って自国民に圧力かけるなんて。」
「まあ同感だな。もっといい嫁さん貰え。」
「エドは俺が結婚してもいいの?」
「私はどうでもいい。」
「じゃあしないよ。」
しまった。これじゃ説得にならない。
ああ、また私への風当たりがキツくなる。
「そうやってフラフラしてるから家臣どもがヤキモキするんだろ。跡継ぎ跡継ぎって、言われてるだろうに。」
とりあえずもうちょっと粘る。
身の安全のためといえなんでこの私がこんな信条に反することをしなきゃいけないんだ。
「跡継ぎが必要だから子供が欲しいとか、子供が欲しいから結婚するとか、なんか変じゃないか。」
同感だ。でもそれが世の中ってもんだろ。
そう返そうとして、しゅんとした顔のレイモンドに見つめられて言葉が出なくなる。
前回はコイツの悲壮な顔を気味よく思えたのに、養われてるうちに私もヤキが回ったもんだ。
「まあ、実子でなくても他の王族の中から後継者を育てればいいんじゃないか。」
要は国が治まりゃいいんだ。
次のレイモンドの遠征の時に叔母に追い出されたら、きっちりこいつに責任取らせよう。
「そうだよね!俺もそう思う!養子をとって一緒に育てようねエド。」
一気に顔が明るくなったレイモンドを見て少し胸が晴れた気がするけどきっと気のせい。
それと私がお前の子育てに関わる義理はさらさらないけども。
「だから、これからは母上に頼まれても絶対に俺に結婚するよう言ったりしないで。母上にもよく言っておくから。」
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