ついて、いった

吉川元景(きっかわ もとかげ)

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第二章

外に出た日

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   彼女は気づいたらひとり暮らしの男の家にいた。こんな小説でありそうな展開が、本当にあるなんて、本当面白いよねと楽しんでいた彼女。しかし、時間が経つにつれ、声も姿も目の前の彼の体には一切触れないことに気づいた。

   有り余る時間を持て余し、彼の家にいる理由を考えても、彼の名前も、もちろん自分の名前すら思い出せない。そもそも知り合いの家にいるという考えがミスリードだったりして…と考え込むが、誰も彼女のそんな姿さえ、透明で見えない。でも、そんな彼女は唯一分かることがあった。それは、彼の持ち物の一部には憑依できた。なぜ憑依できるのかさえ、もちろん分からないままだった。

 彼の散らかった部屋にいてもつまらないからと、彼が職場に付けていくネクタイや、携帯のケースに付いているミサンガや、彼のカバンとかに憑いて行った。遠くまで離れなければ一緒に何時間もいられた。

 彼の職場は、どこにでもあるような私立大学だった。

「ねぇ、きれいだね。」きれいな建物や植物…景色すべてが彼女にとって美しく、そして輝いているのに、憑かれている彼はそんなことすら見えていないように、職場に入っていった。仕事中来る可愛い女子大生にも興味を持つ様子もなく、ただ淡々と仕事をこなしている彼。そんな彼を隣で見ていた彼女は、

「君には何が見えてるの?」と言った。

 彼にはその声は聞こえない。

 
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