山姥はおこだよ

春秋花壇

文字の大きさ
上 下
3 / 51

あなたのハートにDQN

しおりを挟む
「バーン」

首都高トンネルの中で爆発音。

びっくりしますよね。

一昔前の暴走族じゃあるまいし。

山姥は、今日、友達に誘われてドライブ中。

話には聞いていたけど、あおり運転、多いですよね。

まして、ポルシェのオープンカー、初冬の風はちょっと寒い。

となりにいる素敵なオジサマは、古くからのお友達で、

練馬のそこそこの地主さん。

本名知りません。というか、忘れたw

鉄ちゃんと呼んでます。

若いころは、シャコタンにしたり、結構ヤンチャしてた。

いまは、すっかり落ち着いて威厳さえ醸し出しています。

「それにしても、君は化け物か」

「?」

「知り合った頃より若く見える」

「ありがとう」

そりゃあそうですよね。

だって、山姥は300歳。でも見た目は、20歳以下。

JKにも負けないくらいのジューシーなお肌。

「俺の嫁さんより若く見える。」

鉄ちゃんは12歳も年下のお嫁さんをもらったんです。

「お世辞上手。ありがとう」

軽口をたたきながらのドライブ。

風は冷たいけど、心はほんわか。いい感じ。

そんな小さな幸せを味わっていたら、

トンネル内から、猛烈にアタックしてくる車。

幅寄せしてくるし、急に止まるし。

こいつーーーー。

山姥はおこです。

あ、車から降りてきました。

こちらは何度もいいますが、

オープンカー。

絶体絶命です。

その割には平気な顔の鉄ちゃん。

山姥も降りました。

鉄ちゃんは乗ったまま。

「てめえ、おりろよ!!」

山姥はさっきよりおこです。

「何か御用ですか」

優しく話しかける山姥。

「てめえにいってんじゃねえんだ」

「声が大きすぎて聞き取りずらいんですが」

「なんだとーー」

DQNが山姥に押し寄せる。

山姥は相手の目をじっと見つめ、

大きく深呼吸をした。

その途端、青い光があたりを包み、

DQNは、身動き取れない。

「あなたの心にーーDQN」

DQNの魂は、体から離れ、山姥の鼻腔に吸い込まれていく。

「あ、なんでもないです」

腑抜けになったDQN。

「ちょっとドキドキしました。ありがとう」

「いやー」

恥ずかしそうに頭を掻いている。

「鉄ちゃん、行こう」

「なんだ、俺の出番はなしか」

「うふふふ」

二人は、夜の首都高に消えるのです。

「あいかわらずだな」

「人間、そうそう変われない」

「そりゃあそうだ」

何もなかったかのように、鉄ちゃんの家で、

濁り酒をごちそうになっています。

そうそう、12歳年下のお嫁さん、梅ちゃん、

昔はずいぶんきれいな子だったのに、

年には勝てないですよね。

ほろ酔い加減でいい気持。

「鉄ちゃん、あなたのむねにーー」

「やめろ、梅ちゃんがやきもち焼くから」

「そっかーー」

完全な男を求めるのは、

身の程知らず。

自分に欠点があるように、

相手にも欠点がある。

傷つくことを恐れず、

当たって砕けろ。

自分の体の中で、好みの男に育てていくのも楽しみの一つ。

さてさて、山姥の中のDQN。

どんな風に育つのでしょうか。

楽しみですね。

ほんのちょっとでも
ときめいたなら
あなたはわたしに
もう夢中
わたしの中で生き続ける
育ててあげる
あなたの生霊
愛と光に照らされて
素敵な魂に変わってく
ほら キラキラ輝く
宝石のように
カットされ摩耗され
素敵な男性になっていく
山姥テラリウム
大人になったら
解き放つ
高さと奥行きと深みのある
育成栽培







しおりを挟む

処理中です...