パンドラの箱入り娘

春秋花壇

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かんかんかん〇んさんかん

焼肉焼いても家焼くな

息子の亮のマンションから

自分のアパートの庭のお花に水をやるために

仕方なく帰ってきた美紀。

パソコンの電源を点けると、

正常な動作で動き出す。

「やったー」

おお、そうよ、これよ。

このサクサク感。

パソコンが治ったのなら、じっくり腰を据えて、

クリスチャンになる準備を重ねていきたい。

言葉ちゃんと、神のみわざを賛美しながらイエスに習って

家族を築き上げる。

喉から手が出るほど、欲しくて仕方なかった生き方。

「今度は前より、うまく失敗できるよね」

完璧じゃなくていい。

言葉ちゃんと、失敗を受け入れながら

愛し許していく。

なんてすてきな暮らし。

そんなにパソコンが必要不可欠なら、

さっさとタバコを止めたら半年もたてば

そこそこのゲームパソコンが買える。

そんなことを考えながら、必要でないスタートプログラムの

ウインドーを閉じ、グーグルクロームでツイッターを表示した途端

バチン真っ黒な画面になり、勝手に再起動した。

「まだ何もしてないじゃない><」

はーー。やっぱりだめなのか。

困った時の神頼み。

普段祈りさえ定期的じゃないのに、都合のいい時だけ神にすがる。

なんて自分勝手なノークリスチャン。

ま、いいか。

この前、復元した時、これでダメなら諦めると決めたんだった。

イライラするだけ無駄。

自分のやる事をさっさと済ませて、亮のいるマンションに帰ろう。

言葉ちゃんは亮のマンションにいる。

多分、亮は寝ているだろう。

結局、2週続けて精神科に通院できない状態なのだから……。

亮の好物を一生懸命作っても、食事さえまともに取れないでいる

我が子を見ているのはとってもつらい。

まして、本人が必死に小説を書いたり、

生活を変えようと努力しているのを知っているから。

ここのところ、五月雨、春霖で

雨続きだったから水やりの心配はなかったのだが、

さすがに30度近い温度にあじさいはぐったりとしなだれている。

「ごめんよー。暑かったね」

まるで子供に対するように一つ一つの植木にたっぷりを水をやる。


コリント第一 3:6

私は植え,アポロは水を注ぎました。しかし,成長させたのは神です。


沢山のあでやかな花たちを心から堪能。

美紀は時々、通院日を忘れてしまうけれど

このお花たちは自分の時をちゃんと知っている。

ほら、1年前に買ったあじさいでさえ、

ちゃんと花芽を付けている。

神の創造物ってすごいねー。

くすしいねー。

畏怖の念を起こさせるねー。

うれしい、たのしい、しあわせ、ついてる。

にこにこしながら亮のマンションに向かう。

お金を少し降ろしたくて、踏切を渡って郵便局に向かっていた。

何時もは通らない小さな踏切。

渡り始めた時、警報機が鳴り始めた。

短い距離なので当然渡り切れると踏んで急いだ。

ところが、遮断機がしまって動かない。

下りて、自転車を遮断機ぎりぎりに横づけにして

いじってみるけどうんともすんとも動かない。

ああ、ひょっとして、粉砕された自転車の破片が無残に体に刺さるパターン?

「いたいのいやだーーー」

「いいこにします。いいこにしますから」



ならば、わたしだけでも踏切から出ないと

と、思った瞬間、初老のおじさんが乗っていた自転車から降りて

遮断機を持ち上げてくださった。

危機一髪!!


「ふー。ありがとうございます」

何度も何度も丁寧に頭を下げた。

ああ、わたしは、注意欠陥多動性障害で、

年中事故りそうになるけど守られてる。

体の中からあついものがこみあげてくる。



何時も渡る踏切は、遮断機が入口出口で4本。

ここは、2本。

片方がしまっても、閉まってないから出れた。

見込みが甘すぎるんだよね。

全体把握が出来ていない。

踏切直前で一時停止しなかった。

そして、思ったより動きが鈍いんだよね。

引き返す思考力が与えられますように。

踏切事故は、自動車で年間91件、歩行者が89件。

年間、200件近くあるという。

踏切事故を年代別に見ると、最も多いのは70歳代で44件(20.9%)。

次いで80歳代が40件(19.0%)、60歳代が35件(16.6%)と、

60歳以上の高齢者が全体の半数以上を占める。

美紀は今、69歳。

気を付けないとね。

少し年上の近所のおばあちゃんは、横断歩道の点字ブロックにつまずいて、

顔面から転んで強く打ち付け、顔中真っ黒な痣になっていた。

歳を取ると、思うように体も動かないのだろう。

余裕をもって、行動しないと転倒事故も増える。




何もなかっかのようにホリホック(たちあおい)の花が

優しい色を携えて静かに笑う。

あっという間に背が伸びて、今年も会えたね。


スズメ2羽は小額の硬貨1枚で売っていませんか。

それでも,その1羽でさえ,天の父が知らないうちに地面に落ちることはありません。

ところが,あなたたちは髪の毛まで全て数えられています。

マタイ10章29.30節






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初回公開日時 2023.05.06 06:27
更新日時 2023.05.18 05:31
文字数 25,415
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