おとぎ話

春秋花壇

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大きな花と小さな花

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大きな花と小さな花

昔々、美しい花畑がある村がありました。その花畑には、色とりどりの花が咲き誇り、その美しさは村中に知れ渡っていました。

ある日、花畑には大きな花が一輪、小さな花が隣り合わせに咲いていました。大きな花は高々とそびえ立ち、その優雅な姿はまるで太陽のようでした。一方、小さな花は地面に近く、控えめながらも愛らしい姿をしていました。

大きな花は誇らしげに、小さな花を見下ろしました。「私はこの花畑で一番の美しさを持つ花だ。誰もが私の美しさに見とれ、私を讃えるだろう」と思っていました。

一方の小さな花は謙虚に、大きな花を見上げました。「私は小さいけれど、それでも私なりの美しさがあると信じています」と思っていました。

ある日、村の人々が花畑を訪れました。彼らは大きな花の美しさに驚き、その周りに群がりました。大きな花は自慢げに、その讃美を受けていました。

しかし、少しずつ人々の視線が小さな花に向けられ始めました。小さな花の繊細な美しさに気付いた人々は、その謙虚さに心を打たれました。

やがて、村の人々は大きな花だけでなく、小さな花も美しいと讃えるようになりました。小さな花はそれを聞いて、ほほえみました。

すると、大きな花は驚きました。「なぜ小さな花まで褒められるのか?私こそがこの花畑の主役であり、最も美しい花ではないか」と考えました。

しかし、大きな花が自分の美しさにこだわるあまり、周りの人々からの讃美を受け取ることができなくなっていました。

その後、村の人々は大きな花だけでなく、小さな花も愛でるようになりました。小さな花はその温かい気持ちに包まれ、自分の存在を大切に思いました。

そして、大きな花も小さな花も、それぞれの美しさを認め合い、共に花畑を彩ることになったのでした。






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