お金持ちごっこ

春秋花壇

文字の大きさ
上 下
10 / 142

希少価値を高めろ

しおりを挟む
希少価値を高めろ

陽射しが降り注ぐ海岸沿いのカフェテラス。涼しい海風を感じながら、私はアイスティを優雅にすすっていた。

「ねぇねぇ、見てみて!このバッグ、エルメスよ!」

隣席の女性たちの高笑い声が聞こえてくる。ブランドバッグを自慢げに掲げる姿は、まるで孔雀のよう。

ブランド品で身を飾り、高級レストランで食事をし、高級車を乗り回す。それが、お金持ちのステータスだと信じられていた時代は終わった。

真の富とは、希少価値にある。

私は、カフェの店員に声をかけた。

「あの、テラス席で読書している男性の方へ、このシャンパンをプレゼントしたいのですが。」

店員が驚いた顔で私を見つめる。

「えっ、知らない方へですか?」

「ええ。彼の読書を邪魔したくないので、そっと置いておいてください。」

私は、店員にシャンパンを渡し、テラス席へと向かった。

読書に没頭する男性は、私の存在に気づいていないようだ。彼の横のテーブルにシャンパンをそっと置き、私はカフェを後にした。

数日後、私は自宅で読書をしていた。すると、見知らぬ番号から電話がかかってきた。

「もしもし?」

「あの、先日カフェでシャンパンを頂いた者です。お名前を教えていただけますか?」

電話の主は、あの読書中の男性だった。

「私の名前は、〇〇です。カフェで偶然あなたを見かけ、読書に集中している姿に感銘を受けました。ぜひ、あなたと話をしたいと思い、シャンパンをプレゼントしました。」

彼の言葉に、私は微笑んだ。

「ありがとうございます。私の名前は、△△です。お心遣い、嬉しいです。」

私たちは、電話で数時間話した。彼は、投資家をしているという。彼の話に、私は深く感銘を受けた。

彼は、ブランド品や高級車には興味がない。彼の価値観は、希少価値の高い知識と経験にある。

私たちは、何度も会を重ねるうちに、恋人同士になった。

彼の影響で、私も希少価値を高めることの大切さを学んだ。ブランド品に身を飾ることはやめた。代わりに、読書や勉強に時間を費やすようになった。

真の富とは、お金で買えないもの。それは、知識、経験、そして愛である。

私たちは、お金持ちごっこをするのではなく、真の富を追求する人生を選んだ。

海辺のカフェテラスで、私たちはシャンパングラスを傾けた。

「ねぇねぇ、見てみて!この人、私の恋人よ!」

隣席の女性たちの視線が、私たちに注がれる。

ブランド品を身に着けていない私たちを見て、彼女たちはきっと驚くことだろう。

しかし、私たちは気にしない。

真の富を持つ私たちは、自信に満ち溢れている。

希少価値の高い人生は、これから始まる。
しおりを挟む

処理中です...