ギリシャ神話

春秋花壇

文字の大きさ
795 / 1,436
創作

国会議事堂 (旧王宮)

しおりを挟む
国会議事堂 (旧王宮)

遥か昔、ギリシャの大地にそびえ立つ壮麗な建物、国会議事堂として知られる場所は、かつては王宮であった。その起源は、オリンポスの神々と人間たちの争いの時代にまで遡る。

当時、ギリシャ全土を統治していたのは、賢明かつ力強い王、アガトスだった。彼は神々との調和を重んじる統治者であり、国民から深く信頼されていた。しかし、アガトス王には一つの野望があった。それは、神々と肩を並べるほどの力を持つ場所、すなわち天と地を繋ぐ王宮を建設することだった。

アガトス王はギリシャ中の最高の建築家たちを集め、神々の住まうオリンポス山を模倣した宮殿を築くよう命じた。この宮殿は、ただの豪奢な建物ではなく、神々と人間が同じ場所に集い、知恵を分かち合う神聖な場所となるはずだった。しかし、その計画を知ったゼウスは激怒した。

「人間が神々に等しい場所を作ろうとは、思い上がりも甚だしい!」

ゼウスの怒りは激しく、すぐに雷を放ち、建設途中の王宮に向かって破壊しようとした。しかし、そこにゼウスの妻であるヘラが現れ、彼を制止した。

「ゼウスよ、彼らが求めているのは神々との対等ではなく、調和ではないか?私たちの力を誇示するために人間を滅ぼしては、彼らの信仰もまた失われてしまうでしょう。」

ゼウスはしばし考えたが、ヘラの言葉に一理あることを認めた。ゼウスは雷を手にしながらアガトス王に声を届けた。

「アガトス王よ、お前が求めているのは神々との調和か、それとも力か。神々と対等であることを望むのならば、この建造物は破壊されるだろう。しかし、もしお前が本当に神々と人間の平和を願うのであれば、この王宮は調和の象徴として残すことを許そう。」

アガトス王は驚き、そして深く頭を垂れて言った。

「ゼウス様、私が求めるのはただ、あなた方神々と共に生きるための知恵を得ることです。人間はまだ未熟であり、あなた方の力に頼らねばなりません。どうか、この宮殿を通じて神々のご加護と導きをお授けください。」

ゼウスはアガトス王の言葉に満足し、雷を収めた。そしてこう告げた。

「よかろう。この王宮を神々と人間の調和の場とすることを許す。しかし、神々を敬い、決して我々に背かぬことを誓え。」

アガトス王はその誓いを立て、宮殿はついに完成した。壮麗な柱や金の装飾で彩られたその建物は、ギリシャの知恵と力を象徴する場所となった。毎年、人間と神々の名の下に会議が行われ、人々は神々の導きによって発展していった。

しかし、時が経つにつれて人々の心は次第に変わっていった。アガトス王の子孫たちは、次第にその宮殿を個人の力を誇示するための場と化していった。神々との調和の誓いは忘れ去られ、王たちは次第に専制的な統治を行うようになった。

そしてついに、ゼウスは再びその雷を手に取り、地上に落とすことを決意した。宮殿はその瞬間に崩壊し、かつての栄華は一夜にして失われた。しかし、ゼウスは全てを滅ぼすことはしなかった。彼はこう言った。

「この建物は今後、王の力の象徴ではなく、人々のための場所とせよ。神々と人間が協力して築き上げるものが真の力であることを示す場とするのだ。」

その言葉を受けて、廃墟と化した宮殿は修復され、かつての王宮は新たな役割を持つこととなった。それが現在の国会議事堂である。かつての王の座が置かれていた場所は、人々の声が集まり、議論される場所へと変わった。

神々との調和は再び取り戻され、国会議事堂はギリシャの民主主義と調和の象徴として、永遠にその威容を保ち続けている。訪れる者は皆、その荘厳さに驚嘆し、また遠い昔、神々と人間が共に築いた栄光の記憶を胸に刻むのだった。








しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...