ギリシャ神話

春秋花壇

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創作

アウゲイアースの家畜小屋

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アウゲイアースの家畜小屋

エーリス王アウゲイアースは、広大な領土を治める王であり、その富の象徴として3,000頭もの美しい牛を飼っていた。しかし、彼の牛小屋は30年間掃除されることがなく、泥と糞にまみれていた。匂いは王国中に漂い、周囲の人々は不快感を抱いていたが、アウゲイアースはその実情を気にも留めなかった。彼は自分の牛の価値に酔いしれていた。

ある日、ヘーラクレースがアウゲイアースのもとを訪れた。彼は神々の命令によって数々の試練を克服する英雄であったが、まだ終わりの見えない冒険の真っ最中にあった。アウゲイアースの牛小屋を見て、ヘーラクレースは目を細めた。

「アウゲイアースよ、私はこの家畜小屋を1日で掃除することができる。しかし、条件がある。掃除が終わった後、牛の10分の1を私に与えること。」

アウゲイアースは最初、信じられないという表情を浮かべたが、次第にこの試練が彼の名声を高めるチャンスであると気づいた。「それは面白い提案だ。お前がそれを成し遂げられるのなら、約束を守ろう。」彼はにやりと笑った。

ヘーラクレースは準備を始めた。彼はまず、アルペイオス川とペネイオス川の流れを変える計画を立てた。強靭な肉体を駆使し、彼は神々の力を借りて、2つの川を引き寄せることに成功した。川の流れは、まるでヘーラクレースの意志に従うかのように彼の手元へと集まってきた。

その日は晴れ渡り、川の水が小屋へと流れ込んだ。彼は牛小屋の泥や糞を一掃するために、その流れを利用した。あっという間に、30年分の汚物が流され、牛小屋は見違えるほどに清潔になった。アウゲイアースは驚きと興奮に包まれ、彼の約束を果たす時が来るのを楽しみにしていた。

しかし、その喜びは長く続かなかった。川の流れが急に変わったことで、周辺の地域では異常な洪水が発生し始めた。人々は恐れおののき、家を失う者も出てきた。アウゲイアースは、自分の手に負えない事態に直面し、ヘーラクレースを責めた。「お前がこの流れを変えたからだ!お前のせいで私の国が滅びる!」

ヘーラクレースは驚いた。「私の行動は牛小屋を掃除するためのものだった。洪水の責任を私に押し付けるのか?」と反論した。

エウリュステウスはこの一連の出来事を聞きつけ、ヘーラクレースが罪滅ぼしとして川の神の力を借りたため、掃除の功績を無効とし、「これをノーカウントにする」と宣言した。ヘーラクレースは悔しさと怒りを感じたが、自分の名誉と神々の命令を重んじ、ただ黙って受け入れた。

アウゲイアースは約束を守らず、ヘーラクレースの成功を知らんぷりした。彼は自らの利益を追求し、英雄に対する感謝の気持ちなど微塵もなかった。ヘーラクレースはその行為を忘れなかった。

数年後、ヘーラクレースは再びエーリス王国に足を踏み入れた。彼は心に決めた復讐の念を抱きながら、アウゲイアースの家に向かって歩いた。王の傲慢さを正すため、彼は力を借りて再びアウゲイアースに挑戦する時が来たと感じた。

王の城に着くと、アウゲイアースは悠然と座っていた。彼はヘーラクレースを見て、冷たい笑みを浮かべた。「お前は私を攻撃するつもりか?もう一度私の牛小屋を掃除してもらおうか?」と嘲笑した。

ヘーラクレースは冷静に言った。「お前が私の提案を無視したこと、そして自分の行動に責任を持たなかったことを忘れてはいない。今度は私の力をもってお前を正す。」彼は自らの強さを見せつけるように、周囲に立つ兵士たちに目を向けた。

戦いが始まった。アウゲイアースは兵士たちを率いてヘーラクレースに立ち向かうが、彼の力には敵わなかった。ヘーラクレースは剛腕を振るい、兵士たちを一掃していった。彼はアウゲイアースに近づくと、彼を捕らえ、「お前は私に背いた。今こそ、その報いを受ける時だ。」と告げた。

アウゲイアースは絶望の表情を浮かべたが、もう手遅れだった。彼はヘーラクレースの力に屈服し、彼の前にひざまずくこととなった。「お願いだ、許してくれ。私は間違っていた。」

ヘーラクレースは一瞬迷ったが、彼は自身の名誉を重んじ、アウゲイアースに言った。「お前が約束を守らなかったことを忘れない。だが、命を奪うことはしない。お前は自らの過ちを悔い、今後は善を行うことを誓え。」

アウゲイアースは涙を流しながら頷いた。「誓います。二度と過ちを犯しません。」

こうしてヘーラクレースはアウゲイアースを許し、彼の心に変化をもたらすこととなった。アウゲイアースは、自己中心的な王から人々のために生きる真の王へと変わる道を歩み始めたのだった。彼はヘーラクレースの教えを胸に刻み、改心した後は牛小屋を清潔に保つことを誓った。

エーリス王国は、ヘーラクレースによって新たな希望を見出し、アウゲイアースもまた、真の王として成長することができた。そして、ヘーラクレースの名声はさらに高まり、彼の功績は永遠に語り継がれることとなった。








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