ギリシャ神話

創作

神々の秘宝「オルマ」

神々の秘宝「オルマ」

古代ギリシャ、太陽神アポロンの黄金の宮殿に、一つの秘密があった。誰もその存在を知らないとされる宝物「オルマ」。オルマは神々の力を増幅させ、永遠の知恵を授けるとされる神秘の宝石であり、触れるだけで絶大な知恵と力が宿ると噂されていた。アポロンはその力を信頼しておらず、神々の間でも「オルマ」に触れることは禁忌とされ、永久に宮殿の奥深くに封印されていた。

ある日、アポロンの息子である若き半神エラトスが、父の宮殿でその封印に偶然出会う。エラトスは芸術と音楽の才能に恵まれ、人々に歌や詩を捧げていたが、真の力を持つ神ではなかった。そのため、力に対する渇望と恐れが常に彼の心の奥底に潜んでいたのだ。

「これが、オルマ…？」

エラトスは、深紅の輝きを放つその宝石に引き寄せられ、ついに触れてしまった。その瞬間、目がくらむほどの光がエラトスの体に流れ込み、彼は知恵と力を手に入れた。しかし、同時に「オルマ」が彼の心に囁きかけた。「欲望のすべてを叶えよう」と。

その夜から、エラトスは神々に並ぶ力を持つ存在として人々に恐れられ、尊敬されるようになった。彼は天候を操り、森に住む動物たちさえも彼の意志に従わせることができた。しかし、やがてその力の大きさが彼の心をむしばみ始めた。エラトスは次第に孤独に苛まれ、愛や喜びの代わりに、力への渇望が彼の全てを支配するようになったのだ。

アポロンは息子の異変に気づき、オルマに触れたことを知った。アポロンは彼に厳しく言った。

「エラトス、お前が触れたオルマは神々の禁忌。力と知恵を手に入れることは、人にとっての破滅への道でもある」

だがエラトスは、父の言葉に耳を傾けず、自らの道を進もうとした。すると、アポロンは太陽の炎を用い、息子からオルマの力を奪い取ろうと試みた。しかし、力を手に入れたエラトスもまたその場で反撃し、両者の間で激しい戦いが繰り広げられた。

最終的にアポロンは、神の力を用いてオルマを再び封印し、エラトスをその封印の守護者とする呪いをかけた。エラトスはオルマの力によって永遠に生き続け、二度とその力に触れることがないように、その石を守り続ける運命を背負わされた。

それからというもの、オルマは神々の隠れた宝として伝説の中にだけ囁かれ、エラトスは永遠の守護者として語り継がれていった。