ギリシャ神話

春秋花壇

文字の大きさ
1,011 / 1,436
創作

太陽神の贈り物

しおりを挟む
太陽神の贈り物

遠い昔、ギリシャのサントリーニ島がまだ名もなき島だったころ。この地には、小さな村がひとつだけあり、人々は暑い日差しの下で農業や漁業を営みながら暮らしていた。しかし、夏になると太陽の光が強すぎて、人々は疲れ果ててしまい、作物も枯れ、村は貧困に喘いでいた。

人々は神々に助けを求めた。村の中心にある小さな神殿に集まり、ゼウス、ポセイドン、デメテルなど多くの神々に祈りを捧げたが、特に太陽神アポロンに願った。「アポロン様、どうかこの地を守ってください。この暑さで、私たちは生きていけません」

その祈りが届いたのか、ある晩、アポロンの使いだという美しい青年が村を訪れた。彼の肌は黄金色に輝き、目は夏の空のように青かった。青年は村人たちに微笑み、「アポロン様の意思を受け、私はここに来た。この島の太陽はアポロンの祝福でもあるが、それが君たちを苦しめることは彼も望んでいない」と語った。

青年は村人たちを導き、島の岩山へと連れて行った。「ここにはアポロン様の力が宿る石がある。この石を砕き、家々の壁に塗るがよい。太陽の光を反射し、村を守ってくれるだろう」と言い、彼は真っ白な石を指さした。それは島に豊富にある石灰だった。

村人たちは半信半疑だったが、青年の指示に従い、石灰を集め始めた。石を砕き、水で練り、それを壁に塗っていった。最初に白く塗られた家は、村長の家だった。すると次の日から不思議なことが起きた。

村長の家の周りは、暑さが和らぎ、家の中は涼しい風が吹き抜けるようになった。光を反射する白い壁のおかげで、日差しの強さも和らいでいたのだ。

「これは神の奇跡だ!」村人たちは感激し、青年の言葉通り、全ての家を白く塗り始めた。どの家も白壁になり、村全体が眩しいほどに輝くようになった。そして、村は徐々に活気を取り戻し、作物も育ち始めた。

青年は村の変化を静かに見守っていた。そして、最後にこう告げた。「この白い壁は、アポロン様の祝福そのものだ。この島が太陽とともに生きていけるように、これからも大切にするがよい」

村人たちは深く感謝し、青年を見送った。それ以来、サントリーニ島では白壁の家が伝統となり、どの家も必ず白く塗られるようになった。

時は流れ、サントリーニ島はギリシャの中でも特別な場所として知られるようになった。白と青のコントラストが美しい島は、訪れる人々の心を魅了し続けている。

「なぜこの島の家は白いの?」という旅人の問いかけに、島の老人たちは微笑みながら答える。「それは、太陽神アポロンが私たちを守るために贈ってくれた祝福なのさ」

白い壁は、ただの石灰ではない。それは神と人々が共に築いた歴史の証であり、太陽と調和しながら生きる知恵の象徴だった。

終わり







しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...