ギリシャ神話

春秋花壇

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創作

デルフィの神託と選ばれし者

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デルフィの神託と選ばれし者

古代ギリシャの神々の中でも、アポロンが司るデルフィの神託所は、最も神聖な場所の一つとされていた。デルフィには「オムファロス」と呼ばれる世界の中心を示す石があり、神託を求める者たちはその石の前で巫女ピュティアの言葉を待った。

エリオスという若者がいた。彼は羊飼いの家に生まれ、幼い頃から山々で羊を追いながら星を見上げ、神々の話を聞いて育った。ある日、エリオスの村が奇妙な病に襲われた。川の水が濁り、作物が枯れ、村人たちは次々に倒れていった。絶望した村長は、エリオスをデルフィへ派遣し、神託を仰ぐよう命じた。

「神々が私たちを見捨てたのではないか」と村人たちは口々に言うが、エリオスは心の中で希望を抱いていた。彼は神々が怒りを示すときでも、その裏には何らかの意味があると信じていた。

デルフィへの旅は長く険しかった。エリオスは盗賊に遭遇し、危うく命を落としそうになったが、旅の途中で出会った見知らぬ老人に助けられた。老人はエリオスに、金色のリースを手渡した。

「これはアポロンに捧げるためのものだ。お前の心が清いならば、これが道を照らしてくれるだろう」

エリオスが礼を言おうと顔を上げたとき、老人は既に姿を消していた。

デルフィに到着したエリオスは、神殿の荘厳さに圧倒された。大理石の柱が青空にそびえ立ち、祭壇には絶え間なく香が焚かれている。神託を求めるためには順番を待たねばならず、エリオスは数日間、神殿の周囲で過ごした。

ついにエリオスの番が来た。彼は巫女ピュティアの前に進み出た。ピュティアは三脚の台座に座り、トリポッドの煙が彼女を包み込んでいる。彼女は深い声で言った。

「汝、若き者よ。我が言葉を聞け。川は神聖なる泉を汚す者の血を流すまで清められることはない。だが、黄金の光が道を示し、闇を照らすだろう」

エリオスは神託の意味を理解できなかったが、金色のリースを思い出した。それを祭壇に捧げると、不思議なことにリースが輝き始めた。そして、彼の前に一羽の白い鴉が現れ、空へ舞い上がった。

エリオスはその鴉を追い、山中深くへ入っていった。そこで彼は、一人の若い男が川辺で奇妙な儀式を行っているのを目撃した。男は邪悪な神ポセイドンを呪い、その力を借りようとしていた。エリオスは咄嗟に男に飛びかかり、儀式を止めようとした。

だが、男の力は強大で、エリオスは簡単に跳ね飛ばされてしまった。そのとき、空から白い鴉が再び現れ、男の顔に鋭い爪で襲いかかった。エリオスはその隙をついて男を押さえ込み、川の水を再び清める儀式を行った。

村に戻ると、病は消え去り、川の水も透明に戻っていた。村人たちはエリオスを英雄として称え、彼がもたらした神託の力に感謝した。

その後、エリオスはデルフィに戻り、アポロンの神殿で仕えることを決意した。彼は神託の意味を深く学び、神々と人々を結ぶ橋となる存在へと成長していった。

デルフィの神託は、エリオスを通じてさらに語り継がれ、村もまた、神々の祝福を受ける聖なる地として広く知られるようになったという。






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