ギリシャ神話

創作

創作ギリシャ神話：「新たなる神の誕生――カオスの後継者」

創作ギリシャ神話：「新たなる神の誕生――カオスの後継者」

プロローグ――忘れられし原初の記憶
遥かなる時の始まり、世界はまだ混沌（カオス）のゆりかごにあった。そこから、ガイア（大地）とウラノス（天空）が生まれ、数多の神々が産声を上げた。しかし、ウラノスは子らを恐れ、深き奈落タルタロスへと幽閉した。

ガイアは嘆き、その嘆きはクロノスの反逆を招いた。クロノスは父ウラノスを討ち、世界の支配者となる。だが、クロノスもまた、子らに王座を奪われることを恐れ、生まれた子を飲み込む暴虐を繰り返した。

レアは末子ゼウスを密かにクレタ島へと逃し、彼はやがて成長し、父クロノスを討ち、兄弟たちを解放する。
こうして、新たなる神々の時代――オリュンポス十二神の時代が幕を開けた。

しかし、その陰で、ゼウスによる秩序に不満を抱く者たちがいた。

「なぜ、ゼウスだけが世界の全てを支配するのか？」

そう呟いたのは、夜の女神ニュクス。彼女は、カオスから直接生まれた原初の神でありながら、ゼウスによってオリュンポスから遠ざけられていた。

彼女は、静かに宣言した。

「カオスは死んではいない。私は、新たな神を生み出す。ゼウスに抗い、真の秩序をもたらす神を――」

第一章――禁忌の儀式、カオスの胎動
ニュクスは、タルタロスの最深部へと降り立った。そこは、ゼウスによって封じられた旧き神々の嘆きがこだまする場所。彼女はそこで、世界の始まりの力――カオスの残滓を見つけた。

それは、世界の原初より存在する、純粋なる混沌のエネルギー。

ニュクスは、自らの神血を捧げ、禁忌の儀式を執り行った。

「カオスよ、再び目覚めよ。そして、我が手に、新たな神を」

闇と光の狭間に、新たな神が誕生しようとしていた。その胎動は、オリュンポスにまで響き渡り、ゼウスの耳にも届いた。

第二章――オリュンポスの動揺、迫りくる影
オリュンポス山に、雷鳴が轟いた。ゼウスは、玉座に座したまま、怒りの雷を宿らせた。

「ニュクスが、何かを企んでいる……！」

神々はざわめき、アテナは冷静に事態を分析し、ヘルメスは情報を集めるために飛び立った。アレスは剣を抜き、戦いを望んだ。

「カオスの力が蘇るなど、決して許さぬ！」

ゼウスは、ポセイドンとハデスを呼び寄せ、タルタロスへと向かう。ニュクスの儀式を阻止するために。

第三章――目覚めし神、エレボスの誕生
タルタロスの奥底。ニュクスの儀式は終わりを迎えようとしていた。

闇が渦巻き、やがてひとつの形を成す。

新たなる神――エレボス。

彼は、カオスの力を受け継ぎながらも、ニュクスの意志を体現する者として生まれた。

その瞳は深淵よりも黒く、声は静かに響いた。

「母よ、我は何をなすべきか」

ニュクスは微笑み、答えた。

「ゼウスの独裁を終わらせ、真の秩序をもたらすのだ」

第四章――神々の衝突、カオスの奔流
ゼウス、ポセイドン、ハデスがタルタロスに到着したとき、エレボスはすでに完全に目覚めていた。

ゼウスは雷を掲げ、叫んだ。

「新たな神など不要！ 我こそが、この世界の支配者だ！」

エレボスは、恐れることなく応じた。

「ならば問おう、ゼウス。お前に、世界を支配する資格があるのか？」

ゼウスが雷を放つ。だが、エレボスはそれを吸収した。

「何……！？」

カオスの力を受け継いだエレボスは、ゼウスの神力すらも取り込むことができた。

戦いは激化し、タルタロスは崩壊し始める。ポセイドンは海を操り、ハデスは死者の軍勢を召喚するが、エレボスはそれら全てを吸収し、無へと変えた。

「これが、カオスの後継者……」

ゼウスは、初めて恐怖を感じた。

終章――新たなる秩序、カオスの意志
戦いの最中、ニュクスは静かにエレボスに告げた。

「お前の役目は、支配ではない。新たな秩序を創造することだ」

エレボスは頷き、ゼウスたちに言った。

「神々の時代は、終わりを告げる。今こそ、真の秩序を築こう」

その瞬間、タルタロスの奥深くから光と闇が混ざり合う渦が発生し、ゼウスたちはその中へと吸い込まれていった。

ゼウスが気がつくと、オリュンポス山に戻っていた。しかし、神々の力は以前とは異なっていた。

エレボスは、カオスの力を分け与え、すべての神々を平等にしたのだ。

オリュンポス十二神の時代は終焉を迎え、新たなる秩序が生まれた。

「カーストは消え、神々は平等となる。これが、カオスの意志だ」

エレボスの声が、世界に響き渡った。