ギリシャ神話

春秋花壇

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創作

黄金の時代、アストレアの涙

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🌟 黄金の時代、アストレアの涙

――「正義の星が再び輝く日は、人間が己の愚かさを乗り越えた時――」

✨ 神々と人間の調和、黄金の時代の到来
遥かなる時代、オリンポスの神々がまだ人間と共に生き、地上を導いていた時。

世界には争いがなく、人々は互いに慈しみ合い、調和の中で生きていた。

この時代を人は**「黄金の時代」**と呼んだ。

その中心にいたのは、一人の女神――正義の女神・アストレア。

彼女は人間の持つ善なる心を信じ、愛を持って彼らを導いた。

「人は、互いに支え合うことで真の幸福を得られる」

彼女はそう語り、世界に法と秩序を授けた。

そして、人間はそれを守り、争いのない楽園を築き上げたのだ。

🔥 目覚める欲望、崩れゆく楽園
しかし、時と共に人間の心に、欲望が芽生え始めた。

最初は小さな嫉妬や疑念だった。

「なぜあの者は、私よりも豊かな暮らしをしているのか?」
「なぜ私は、あの者よりも力が弱いのか?」

その問いが、やがて争いを生んだ。

一握りの者が権力を握り、貪欲に富を求め、弱き者を踏みしだいた。
嘘がはびこり、裏切りが横行し、黄金の時代は急速に色あせていった。

アストレアは、それを見て深く嘆いた。

「人間たちよ、なぜ心を闇に染めるのか?なぜ愛を忘れてしまったのか?」

しかし、彼女の声は届かなかった。

人間は彼女の教えを忘れ、互いに争い続けた。

アストレアは、人間を愛していた。
だからこそ、彼らの堕落を見ることが、何よりも苦しかった。

💧 神々の離反、アストレアの涙
ある日、オリンポスの神々はアストレアのもとに集まり、彼女にこう告げた。

「アストレアよ、もはや人間に希望はない。彼らは己の愚かさに溺れ、滅びる運命なのだ」

ゼウスは人間に対する裁きを口にし、ポセイドンは怒りを露わにし、アレスは戦争の準備を進めていた。

「お前もオリンポスへ帰るがよい。地上は、もはや我らが関わるべき世界ではない」

アストレアは沈黙した。

「それでも、私は人間を信じたい」

彼女はそう願った。

だが、人間の争いは激化し、嘘と裏切りが蔓延し、善なる心は次々と闇に沈んでいった。

やがて、アストレアは耐えきれず、涙を流した。

その涙は純白の星のように光り、夜空に消えていった。

「私がいる限り、人間は正義を学ぶことができる……そう信じていた。けれど、今の彼らは、私の言葉すら聞こうとしない。」

そして、彼女は静かに天を仰ぎ、決意した。

🌠 天へと昇る女神、残された願い
「人間たちよ。私は、お前たちを愛している」

「だが、今の私には何もできない。お前たちが自らの愚かさを乗り越えない限り……」

「だから、私はここを去ろう」

アストレアは、ゆっくりと天へと昇った。

その姿を見て、一部の人間たちは涙を流し、彼女の言葉を思い出した。
しかし、多くの者は争いを止めず、彼女の存在すら忘れていった。

こうして、黄金の時代は終わりを迎えた。

しかし、アストレアは完全に消えたわけではなかった。

彼女は、夜空の星座「おとめ座」となり、人間たちを見守り続けることを選んだのだ。

そして、彼女は最後の願いを口にした。

「いつか、人間が正義を取り戻し、再び黄金の時代を築く日が来ることを信じて――」

🌎 人間の未来、そしてアストレアの帰還
時は流れ、人間は戦争を繰り返し、文明を築き、時に滅ぼし、また築いた。

しかし、どれほどの時が経とうとも、人間の心には、アストレアの言葉が微かに残り続けた。

夜空を見上げる者たちは、おとめ座にそっと願いをかけた。

「私たちは、いつか、正義を取り戻せるでしょうか?」

アストレアの星は、静かに輝き続けた。

そして、人間が再び己の過ちを乗り越えた時――

正義の女神は、地上に帰還し、新たな黄金の時代が始まるのだろう。

――「星が輝く限り、人間の心に希望は生き続ける」――

(完)








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