ギリシャ神話

春秋花壇

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深海の影、オニボウズギス

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深海の影、オニボウズギス

古の時代、海はまだ神々の息吹で満ちていた。ポセイドンがその大海を支配し、無数の海の怪物たちが彼の領域を守っていた。その中でも最も恐れられた存在が、深海の闇に潜む「オニボウズギス」であった。

この怪物は、暗黒の海底に生まれ、無数の牙と鉄の鱗を持ち、その大顎で船を一口で砕くと言われていた。その存在は伝説の中で語り継がれ、船乗りたちはその名を聞くだけで震え上がった。

若き英雄テラモスは、父ゼウスの命を受け、海の怪物を討つために旅立った。テラモスは力強く、美しい青年で、戦場で数々の英雄的な戦果を上げてきた。だが、今回の敵は人知を超えた怪物。彼はアテナから授かった銀の槍と、ヘパイストスが鍛えた盾を携え、海の神ポセイドンに祈りを捧げて船を進めた。

夜の海は不気味な静寂に包まれ、星々が微かに揺れている。突然、海面が泡立ち、闇の中から巨大な影が浮かび上がった。鋭い歯をむき出しにし、赤い目が船を見据えている。それがオニボウズギスだった。

「我が領域に踏み込むとは、愚かなる人間よ」
その声は深海のうなりのように低く、船の木材さえも軋ませる力があった。

テラモスは怯まず、槍を構えた。「ポセイドンに誓って、貴様を討つ!」

怪物は嘲笑うように大口を開き、その顎が海水を切り裂く。だが、テラモスは瞬時に盾を掲げ、怪物の攻撃を受け止めた。鋭い牙が盾に食い込むが、ヘパイストスの鍛えた鉄はびくともしなかった。

テラモスは機を見て槍を突き立てた。銀の槍は怪物の鱗を貫き、その体から黒い血が海に広がった。だが、オニボウズギスは怯むことなく、その巨大な尾で船を打ち砕こうとした。

「我が名はオニボウズギス! 深海の王にして、永遠の影なり!」

その叫びと共に海は大波となり、船は激しく揺れた。テラモスは再び槍を振りかざし、怪物の赤い瞳を狙って突き刺した。悲鳴が海底から響き、怪物の体が痙攣した。最後の力を振り絞って反撃しようとするも、銀の槍がその心臓を貫いていた。

「我はゼウスの子、テラモス! 闇を討ち、光を取り戻す者なり!」

怪物はついに力尽き、その巨大な体が海に沈んでいった。黒い血が波に混じり、海面は再び静けさを取り戻した。テラモスは息を整え、神々への感謝を捧げた。

その後、オニボウズギスの名は永遠に忘れられることなく、海の底で語り継がれることとなった。テラモスは故郷に凱旋し、その勇敢さは後世の英雄たちに語り継がれることとなった。

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