ギリシャ神話

春秋花壇

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創作

彗星の涙

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創作ギリシャ神話 - 「彗星の涙」

序章 - 永遠の旅人

夜空に突如として現れ、尾を引いて消え去る彗星。その存在は古代の人々にとって、神々からのメッセージであり、運命の兆しと考えられていた。だが、その彗星にもまた、秘められた物語があった。

その名はコメーテス。かつては神々の宮殿に仕える美しい若者であり、光と闇の狭間に生きる星の子であった。

一章 - 天界の宴

ある日のこと、オリュンポスの神々は大いなる宴を開いていた。ゼウスの雷鳴が空に響き、アポロンの竪琴が美しい調べを奏で、ヘラの豪華な衣が空を染めた。その祝宴には、星の子たちも招かれていた。

コメーテスもその一人であり、彼はその美しい長髪が夜空に尾を引くように輝く姿で知られていた。彼は天界でも特に誇り高く、自由を愛する若者であった。

だが、その宴のさなか、彼は一人の美しい女神に心を奪われる。それはエリス、争いと混乱の女神であった。彼女の瞳は暗く、螺旋を描くような不思議な力を秘めていた。

二章 - 禁じられた愛

コメーテスはエリスに心を捧げ、彼女もまた彼に惹かれていった。しかし、エリスはゼウスから忌み嫌われる存在であり、その愛は決して許されるものではなかった。

「コメーテス、あなたは星々の秩序を乱すことになる。それでも私を愛するのか?」
エリスはそう問いかけた。

「たとえゼウスの雷が私を焼き尽くそうとも、私はあなたを愛し続けるだろう」
コメーテスはそう誓い、彼らは夜空の隅で密かに逢瀬を重ねるようになった。

三章 - ゼウスの怒り

だが、やがてその禁じられた愛はゼウスの知るところとなる。雷の神は激怒し、天を裂くような咆哮を上げた。

「愚か者め!星の秩序を乱し、混沌を招く者よ!その罪は重い!」
ゼウスはその雷でコメーテスを打ち、彼を永遠に夜空を彷徨う運命へと追いやった。

終章 - 彗星の涙

コメーテスはその時、長く美しい尾を引きながら宇宙の闇へと放り出された。彼は永遠に太陽の周りを巡る孤独な旅に出ることとなり、その姿は時折、夜空に一瞬の閃光として現れることとなった。

「エリス……愛する者よ、私は決してあなたを忘れない。たとえ星々の間を彷徨う孤独な魂となろうとも……」

そして、その悲痛な叫びは尾を引く光として地上に届き、人々はそれを「彗星」と呼ぶようになった。

エピローグ - 永遠の軌道

エリスもまた、彼の姿を追うように、混沌と争いを巻き起こしながら宇宙をさまようようになった。

それ以来、彗星が夜空に現れるたびに、人々はそれがコメーテスの涙であり、禁じられた愛の証であると信じるようになった。

──彗星は、永遠の軌道を巡る愛の亡霊。
その光は一瞬にして消えゆくも、その記憶は星々と共に永遠に輝き続ける。

(完)
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