ギリシャ神話

創作

オリュンポス・ホストクラブ

オリュンポス・ホストクラブ

月が高く昇る頃、オリュンポス山の頂上に、一際煌びやかな光が輝いていた。その光の正体は、神々の中でも特に美しい男たちが集う「オリュンポス・ホストクラブ」だった。そこには世界中のイケメンたちが集まり、神々や人間をも虜にしていた。

その入り口に立つのは、黄金の鎧に身を包んだ戦の神アレース、滑らかな銀髪を揺らす美の神アポロン、そして機知と速さの神メルクリウス。彼らは夜な夜な訪れる女神や人間の心をとろけさせ、その心を優しくも強く掌中に収めていた。

だが、この夜、そのクラブに姿を現したのは、神々の女王にしてゼウスの正妻、ヘーラーだった。

「これは…一体何なの？」

黄金の御座に君臨するヘーラーがその場に現れると、一瞬で場の空気が張り詰めた。

アポロンは慌てて琴の弦を鳴らし、メルクリウスは軽やかなステップでヘーラーの前にひざまずいた。

「これはこれは、我が愛しき女王ヘーラーよ。どうしてこんな場所に？」

ヘーラーはその美しい目を細めた。彼女の白い腕は輝くような力を宿し、誰もが見惚れるような美しさを放っていた。

「私の夫、ゼウスがここにいると聞いたのだけれど？」

その言葉に、アレースは思わず肩をすくめた。

「母上、ここはただの遊び場ですよ。ゼウスは…いえ、父上はここにはいません」

だが、ヘーラーの目は鋭く、彼の言葉をすべては信じていなかった。

その時、クラブの奥から甘い香りとともに、長身で筋肉質な男が現れた。その男は黄金の瞳と黒髪を持ち、その目には何とも言えない艶やかな輝きが宿っていた。

「ヘーラー、久しぶりだな」

ゼウスだった。彼は白いローブを纏い、肩には真珠のような輝きを放つ白孔雀が止まっている。

「ゼウス…あなた、こんな場所で何をしているの？」

ヘーラーの声は冷たく、しかしどこか震えていた。ゼウスは微笑みながら近づき、彼女の白い手を取り、その甲に軽く口づけをした。

「嫉妬する必要はない、ヘーラー。私はここでただ、少し気分転換をしているだけだ」

ヘーラーの胸の奥で、怒りが燃え上がるのを感じた。しかし、彼女はその怒りを飲み込み、冷静さを保つことに決めた。

「ならば、私もここで楽しむことにするわ」

その言葉に、アポロンは目を見開いた。

「母上、それは…！」

だが、ヘーラーはすでに決めていた。彼女はその場で白いローブを脱ぎ捨て、美しい刺繍が施された真紅のドレスを纏った。その姿は、他のどの女神とも違う、威厳と美しさが融合した完璧な姿だった。

「さあ、ゼウス。あなたも私を楽しませなさい。今夜だけは、私がこのクラブの女王よ」

その言葉に、ゼウスは驚き、そして微笑んだ。彼の黄金の瞳がきらめき、彼らの間にかつての情熱がよみがえった。

アレースは照れくさそうに目をそらし、アポロンはその場で新しい旋律を奏で始めた。メルクリウスはヘーラーのドレスの裾を優雅に持ち上げ、そのままフロアへとエスコートした。

「さあ、ヘーラー。今宵はあなたが主役だ」

その夜、オリュンポス・ホストクラブはいつにも増して賑やかだった。美しい神々が踊り、笑い、ささやくその中で、ヘーラーは再び自分の価値を感じていた。

「私が女王である限り、この愛は揺るがない」

その誇り高き言葉は、夜空に輝く星々に届くほど力強く、そして美しかった。