1 / 11
プロローグ
しおりを挟む「僕と付き合ってください!!」
そう言って、頭を下げる。正直…この告白は乗り気ではない。なんせ…相手はあの《冷姫》だ。僕は、これから精神を打ち砕かんとばかりに浴びせられる罵倒に耐えなければならないからだ。下を向いているからわからないが、きっと彼女は呆れているだろう。なにせ、彼女が男に告白されるのは日常茶飯事の事だからだ。そして、それを毒舌で返すことも。
ーーおい、あの《冷姫》がついに百人斬りを達成したらしいぞ
ーー告白した奴は、もう立ち直れないほどの罵声を浴びせられたとか…流石はあの《冷姫》だよな…
そう、彼女は告白に対して毒舌で返す。それも、立ち直れないほどキツイものを。それ故に、周りからは《冷姫》と呼ばれている。
では、なぜ毒舌を浴びせられるのにも関わらず彼女に告白する人が後を絶たないのか。それは、彼女の美しさが理由の一つだろう。
整った顔立ちに、艶のあるストレートの黒髪。また、その口調や仕草はどこかのお嬢様を思わせる程だ。とにかく、彼女はとても美しいのだ。
さらに、彼女は生徒会長も務めている。そのカリスマ性から、多くの同年代や後輩から慕われている。
そんな人物を自分の彼女に…そう思ってしまうのも無理はないだろう。まぁ、叶わない願いなのだがね。
さて、話を戻そう。なぜ僕が彼女に告白をすることになったのか。それは、昨日の出来事だった。
「あぁ…やっぱ、始業式ってつまんねぇな!」
桜の舞い散る道を、勇と並んで帰る。彼の名前は工藤勇。中学校時代からの親友で、高校でも仲良くしてくれている。
「まぁね。でも、同じクラスになったんだし良いこともあったじゃん」
「まぁ…啓介と同じクラスになれたのはよかったけどさ…」
久本啓介、それが僕の名前だ。容姿は悪くもなく、決して良くもない。学力も、上位に入る程ではないが下の方というわけでもない。…つまり、普通なのだ。スポーツが出来るわけでもなく、これといった特技もない。まぁ、精々少しばかり武術を会得している位だ。
「さて、じゃあ同じクラスになった祝いにラーメン行くか!」
「結構な頻度で行ってるけどね…」
実際、一週間に一回は勇と一緒にラーメンを食べているだろう。まぁ、それはアレをしているからでもあるが…。
「へいっ!味噌大盛りお待ちっ!」
そう言って、大将が僕達にラーメンを出してくれる。別に、僕達はなにかを頼んだわけじゃない。もう、何も言わなくても大将は解っているのだ…僕達がこれからなにをするのかを。
「よし、準備はいいか?よーい…ドンっ!!」
大将がスタートの合図を出した瞬間、僕達は一斉にラーメンに食らいつく。勢いよく麺をすすり、大量のスープでそれを咽に流し込む。これは、戦争だ。如何に無駄のない動きで麺をすすれるか、またスープを飲むタイミングも見極めなければならない過酷な戦いだ。
余談だが、このラーメンは大将が僕達の為に温度や麺の硬さ、塩分の量を調整してくれている。この勝負は、大将の協力もあって成り立っているのだ。普通のラーメンでやったら死んじゃうからね。
「ズズズ…終わったッ!俺の勝ちだ!」
「ズズ…いや、僕も終わった!」
ほぼ同時に終わった…か。さて、決着は如何に。
「今のは…勇の勝ちだな」
「よっしゃあ!!勝ったぜっ!」
「クソっ…むせなければ勝てていたのに…」
あそこで蒸せなければ、絶対に勝てていたはずだ…。だが、仕方ない。負けは負けだ。
「さて、なにを命令する?」
そう、これがいつも僕達がやっているゲームだ。ラーメンを早く食べ終えた方が、負けた方に一つ命令をすることが出来るのだ。…拒否権は、ない。
「そーだなぁ…。じゃあ、あれだな」
「あれ…?」
そう言って、彼が指を差したのは…窓?窓でなにかするのか?
「窓がどうかしたのか?」
「そうじゃねぇよ…もっと先を見てみろ」
言われた通りに窓よりも先を見ると…あれはうちの制服か?をきた人が歩いている。いやまて、あれって…まさか!?
「お、おい。まさか…命令って…」
「あぁ!命令は《冷姫》に告れ、だ!」
こうして冒頭に戻る訳だ。まぁ、どうせズタボロに言われるのだ。誰が、こんな冴えない普通の少年なんかを好きになるものか。そんな物好きはいないだろう。
にしてもおかしいな…。いくら現実逃避をしていても罵声が飛んでこない。もはや呆れて言葉も出ないのか?そう思い、顔を上げてみると…彼女は泣いていた。
「えっ…?」
「あ、いやこれは…」
え、ちょっと待ってくれ。なんで彼女は泣いているんだ!?まさか、泣くほど嫌だったのか?…いや、そうに違いないな。
「そ、そうですよね!僕なんかにこんなことされたら嫌ですよね!忘れてくださいっ!!」
「あ、ちょっとまっ…」
彼女の言葉を聞く前に、告白した場所である屋上から走り去る。
まさか、泣くほど嫌だったとは…これは、あとで勇に報告しなきゃな。ま、まぁ…泣かれた位だから逃げてきても文句は言われないよね。
取り敢えず、僕は家で今日の事を懺悔するとしよう…。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!
satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。
働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。
早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。
そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。
大丈夫なのかなぁ?
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる