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第2話
しおりを挟む「弁当…?」
思わず、そう呟く。何度見ても、それは弁当以外の何物でもなかった。…弁当!?食えって言ったよな?そうか、遂に罵るどころか毒を盛って殺してしまうつもりなんだな。
「えっと…死んで欲しいくらい嫌だったってことでいいのかな?」
「何を言っているの?…早く食べて頂戴」
どんどん彼女が不機嫌になってゆく。これは、もう大人しく死ぬしかないだろう。
「…いただきます」
せめて、ラーメン屋で超特大盛りを完食したかった…。覚悟を決めて、卵焼き(毒入り)を口に運ぶ。味は…
「…うまい」
なんだこれ!?死ぬどころかめちゃくちゃ上手いんだけど!?まるで、高級ホテルの朝ごはんみたいだ。…ま、食べたことなんてないんだけどな!
「そう。ならよかったわ」
なんか、瀬川さんが心なしか嬉しそうに見えるのような…。きっと、気のせいだな。そんなはずはないだろう。
「それで、なんで瀬川さんは僕に弁当を?」
毒が盛られていないとなると…何故瀬川さんが僕に弁当を渡してきたのかわからない。しかも、手作りの弁当を、だ。
「……って…んで」
「え?」
やっべ。考え事をしてたら聞き損ねちゃったや。いや、瀬川さんの声が小さかったのもあるだろうが。
「だから、結奈って呼んで…と言っているのよ。…それと、敬語もやめて頂戴」
「は…え…?」
結奈…ってのは、彼女の名前だ。瀬川結奈、それが彼女のフルネームなのだが…。解らん。マジで、彼女が何を考えているのかさっぱり解らん。
何故、昨日振った相手に名前呼びさせようと思うのか。おかしくね?いや、それなら弁当の方がもっとおかしいのだが。
「ダメ…かな?」
僕が黙っている事が否定の意思だと思ったのか、彼女が不安げにそう聞いてくる。いや、待て!?涙目…だと!?
「あー…分かったよ。ゆ、結奈」
「っ!!ありがとう…それでいいのよ」
なぜ涙目だし。そんな事されたら断れるわけないじゃん。いや、それよりも…少し口調がおかしくなかったか?
「あの…口調が」
「別に敬語を使う必要なんてないわ。それで、口調が何か?」
「いえ…いや、なんでもない」
そんな不機嫌そうに返されたらこれ以上なにもいえんがな。まぁ、聞かれたくないことの1つや2つ誰でも持ってるしな。
「それでね、啓介君にお話があるの」
それを聞いて思いっきり蒸せた。
「大丈夫?」
「ゲホゲホッ…け、啓介君ってなに?」
おい、啓介君ってなんだ啓介君って。いつ名前で呼ばれる仲になったというのだ。そりゃあ、まぁあの《冷姫》に名前呼びされるなんてめちゃくちゃ嬉しいが…人前で呼ばれたら多分殺されるな。主に男子共に。
「えっ!いや…べ、別に私が誰を名前で呼ぼうが勝手でしょ!!」
「いや、別にいいけどさ…人前では呼ばないでくれよな?」
「当たり前でしょ?」
何が当たり前なんだか…。人前で呼ばれたら僕は確実に表舞台から姿を消すだろーな。
それよりも、今日は一体何が起きてるというんだ?なんで、振られた相手に名前呼びされたり弁当貰ったりしてんだ?
「それでね、貴方にお話があるの」
急に真面目になりそう言ってくる瀬川…結奈。なんだ?ここに来て処刑宣告か?
「私ね、貴方の事が……」
そこで、急に放送が入る。
「3年A組久本啓介。職員室まで来なさい。繰り返します。3年ーー」
職員室…!?僕、なんかやらかしたっけ!?
「ちょっとごめん!行ってくる!!」
「あ、ちょっとーー」
彼女の言葉を聞き終える前に、取り敢えず職員室にダッシュした。
結論から言えば、僕はただ勇の自爆に巻き込まれただけだった。僕が教室を出た後、勇はクラスの数人でスマホを使っていたらしい。うちの学校は、学校内でのスマホ使用は禁止なので、それが先生にバレてまず怒られる。そこで、先生が他に使用していた者がいないか問い詰めた所、何故か勇が俺の名を出したという訳だ。
「いやー、すまないね。俺がスマホ没収されるならお前も一緒に、と思ってな」
「そうか、取り敢えず〇ね」
全く。なんでコイツの自爆に巻き込まれなきゃならんのだ。別に、俺は使ってないのにな。説明したところで先生には信じてもらえなかったし…。
「そういや、《冷姫》と何を話して来たんだ?」
「勇のせいで、話は途中だったんだけどね…」
まぁ、最後まで話せたとしても勇に話せるような内容ではなかったんだけどな。
…そういえば、結奈は最後なんか言いかけてたよな?
(私、貴方の事が…)
って言ってたよな。この続きは一体何だったのだろうか。まぁ、想像するには貴方の事が嫌い、とか。もう話しかけないで、とかそーいうことな気がする。いや、それだと弁当とか名前呼びの意味が解らないな…。
これも全部勇のせいなので、取り敢えず勇になんか奢ってもらうとするか。
この時、僕はこれ以上はなにも起きない。そう思っていた…。
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