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6.怪しい令嬢①〜第三王子視点〜
地方で公務に出向いた時にはなるべくそこで開かれている夜会に足を運ぶことにしている。
夜会になど興味はないし楽しいと思ったことだって一度もない。権力にすり寄ってくる亡者達の相手なんて反吐が出る。
ただ必要に迫られて参加しているだけだ。
王家主催とは違って身分を隠しているので権力に引き寄せられる輩に囲まれることがないのがせめてもの救いだ。
俺はこの国の第三王子として生を受けた。生まれながらに華やかな生活と権力を手にしており望むものなら大概手に入る。
王位を継ぐ第一王子のように重圧はないし、スペアとして控えている第二王子のよう代替品としての心得を学ぶこともない。
まさに誰もが羨む気楽な立場、それが第三王子の立ち位置だった。
だがそれはあくまで表側でのことで実情とはかけ離れたものだった。
スペアでもない第三王子はただの捨て駒だ。死んでも惜しくないからいろいろな場面で重宝される。
王家とは絶対的な存在だが、不満を持った者がいなくなることはない。王家の力を使って事前に叩き潰すことは可能だが、それを毎回していたら暴君として民衆から反感を買ってしまう。
それは王家として避けたい。だから適度に手を抜く必要が出てくるのだ。
毎回不穏の芽を事前に潰すのではなく、時には襲撃を受けることによって不埒な輩を表立って処分する。
要はバランスが大切だということだ。
だから時々第三王子は襲撃を受ける。護衛騎士の体調不良や予定の急な変更など小さな不幸が偶然が重なって襲われる。上手い具合にたまたま隙ができその情報がなぜか事前に漏れるからだ。
その結果、俺の身体には大切な王子らしからぬ切り傷が多数存在する。
俺は幼い頃から聡かったので、このカラクリに気づいてしまった。
そして誰がどこまで関与しているのか裏で詳細に調べ上げた。そして周囲の者だけでなく血がつながった親でも信用できないという判断に行き着いた。
『やっぱりな…』
思うことはそれだけだった。
薄々は分かっていた、第三王子である自分は捨て駒として大切に飼われているに過ぎないと。
王家とは王族とは毒蛇の巣だ。
肉親への愛情が薄い俺にとって真実を知ったところでどうでもいい。生への執着もない。
だが自分の運命を他人に委ねるのだけは我慢ならない。どういう結果になろうと自分自身で道は決めていく。
その為には信頼できる者を周囲に置く必要がある。だから地方へと行くと王家の息が掛かっていない優秀な人物を身分に関係なく引き抜いてきた。
もう俺の側近から王家の犬はほとんど排除している。第三王子の側近は身分の低いものばかりだと馬鹿な奴は笑っているがそれでいい、警戒されては自由に動けなくなる。
求めるのは愚かな運命に振り回されるのでなく自分の力で生きていく自由だ。
今日もある夜会に忍び込み使えるやつがいないかと自ら探りを入れていた。だが今日は不発だった、欲しいと思える奴は一人もいない。
そろそろ帰ろうと思った時に一人の令嬢が目についた。
容姿だけ言えば極上の部類に入る令嬢だったがそれで気になったわけではない。目が離せない理由は珍妙な動きをしているからである。
若者はみなホールへと出て踊っているのに彼女はまず柱の陰に行き、あろうことかドレスの裾をサッと捲くりあげなから紙と鉛筆を取り出したのだ。
おいおい、そこは物を仕舞う場所じゃないぞ。
それにしっかりと見えてるぞ、中身も…。
お前は…本当に貴族の令嬢なのか?
悪い意味でその変な令嬢から目が離せなくなった。そしてその後も期待通り?に凄かった。
何かを熱心に見ながらスラスラと書き留め、途中途中に飲んだり食べたりしている。
別に飲食は皆がしている、おかしな事ではない。
だが彼女のそれは貴族の令嬢の慎ましやかなそれとは違った。
その一場面だけ見れば可愛い令嬢が礼儀作法を守って間食を楽しんでいるにすぎない。
けれども目を離さずに見ていれば明らかに変なのが分かる。
おい!ここは食べ放題飲み放題じゃねーぞ。
どんだけ食えば気が済むんだ?
それにその細い身体のどこに入っていくんだよっ。
凄いを通り越してるじゃねーか。
もうこれは人体の不思議レベルもんだな。
いやもう人外レベルと言っていいな…。
みな社交に夢中で彼女の様子に気づいていないが、ずっとその動きを見ている俺は呆れたり驚いたり感心したりと忙しかった。
気づけばもうあの怪しさ満点の令嬢から目を離すことが出来なくなっていた。
ここまで感情が揺さぶられたのは久しぶりだった。
夜会になど興味はないし楽しいと思ったことだって一度もない。権力にすり寄ってくる亡者達の相手なんて反吐が出る。
ただ必要に迫られて参加しているだけだ。
王家主催とは違って身分を隠しているので権力に引き寄せられる輩に囲まれることがないのがせめてもの救いだ。
俺はこの国の第三王子として生を受けた。生まれながらに華やかな生活と権力を手にしており望むものなら大概手に入る。
王位を継ぐ第一王子のように重圧はないし、スペアとして控えている第二王子のよう代替品としての心得を学ぶこともない。
まさに誰もが羨む気楽な立場、それが第三王子の立ち位置だった。
だがそれはあくまで表側でのことで実情とはかけ離れたものだった。
スペアでもない第三王子はただの捨て駒だ。死んでも惜しくないからいろいろな場面で重宝される。
王家とは絶対的な存在だが、不満を持った者がいなくなることはない。王家の力を使って事前に叩き潰すことは可能だが、それを毎回していたら暴君として民衆から反感を買ってしまう。
それは王家として避けたい。だから適度に手を抜く必要が出てくるのだ。
毎回不穏の芽を事前に潰すのではなく、時には襲撃を受けることによって不埒な輩を表立って処分する。
要はバランスが大切だということだ。
だから時々第三王子は襲撃を受ける。護衛騎士の体調不良や予定の急な変更など小さな不幸が偶然が重なって襲われる。上手い具合にたまたま隙ができその情報がなぜか事前に漏れるからだ。
その結果、俺の身体には大切な王子らしからぬ切り傷が多数存在する。
俺は幼い頃から聡かったので、このカラクリに気づいてしまった。
そして誰がどこまで関与しているのか裏で詳細に調べ上げた。そして周囲の者だけでなく血がつながった親でも信用できないという判断に行き着いた。
『やっぱりな…』
思うことはそれだけだった。
薄々は分かっていた、第三王子である自分は捨て駒として大切に飼われているに過ぎないと。
王家とは王族とは毒蛇の巣だ。
肉親への愛情が薄い俺にとって真実を知ったところでどうでもいい。生への執着もない。
だが自分の運命を他人に委ねるのだけは我慢ならない。どういう結果になろうと自分自身で道は決めていく。
その為には信頼できる者を周囲に置く必要がある。だから地方へと行くと王家の息が掛かっていない優秀な人物を身分に関係なく引き抜いてきた。
もう俺の側近から王家の犬はほとんど排除している。第三王子の側近は身分の低いものばかりだと馬鹿な奴は笑っているがそれでいい、警戒されては自由に動けなくなる。
求めるのは愚かな運命に振り回されるのでなく自分の力で生きていく自由だ。
今日もある夜会に忍び込み使えるやつがいないかと自ら探りを入れていた。だが今日は不発だった、欲しいと思える奴は一人もいない。
そろそろ帰ろうと思った時に一人の令嬢が目についた。
容姿だけ言えば極上の部類に入る令嬢だったがそれで気になったわけではない。目が離せない理由は珍妙な動きをしているからである。
若者はみなホールへと出て踊っているのに彼女はまず柱の陰に行き、あろうことかドレスの裾をサッと捲くりあげなから紙と鉛筆を取り出したのだ。
おいおい、そこは物を仕舞う場所じゃないぞ。
それにしっかりと見えてるぞ、中身も…。
お前は…本当に貴族の令嬢なのか?
悪い意味でその変な令嬢から目が離せなくなった。そしてその後も期待通り?に凄かった。
何かを熱心に見ながらスラスラと書き留め、途中途中に飲んだり食べたりしている。
別に飲食は皆がしている、おかしな事ではない。
だが彼女のそれは貴族の令嬢の慎ましやかなそれとは違った。
その一場面だけ見れば可愛い令嬢が礼儀作法を守って間食を楽しんでいるにすぎない。
けれども目を離さずに見ていれば明らかに変なのが分かる。
おい!ここは食べ放題飲み放題じゃねーぞ。
どんだけ食えば気が済むんだ?
それにその細い身体のどこに入っていくんだよっ。
凄いを通り越してるじゃねーか。
もうこれは人体の不思議レベルもんだな。
いやもう人外レベルと言っていいな…。
みな社交に夢中で彼女の様子に気づいていないが、ずっとその動きを見ている俺は呆れたり驚いたり感心したりと忙しかった。
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