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5.クレアの見た事実②
マリーの結婚式当日は雲一つない晴天だった。
皆から祝福の言葉を貰い幸せそうに笑っている薄紅色の衣装を纏った花嫁の姿は誰から見ても素晴らしいものだった。
けれども私はその姿を目にして驚くしかなかった。
えっ、な、なんで…。
似ているだけ…なの?
で、でも、あれは…。
まさに幸せな花嫁という感じで笑っているマリーが身に着けている花嫁衣装はなんと以前ロアンナが大切そうに見せてくれたものだった。
色が純白から薄紅色に染め変えられ、長かったドレスが大胆に短くなっていたがあれはロアンナのものだ。
‥‥間違いない。
あの胸元にある見事な刺繍はあの日、ロアンナが嬉しそうに『亡くなった母は刺繍が得意だったそうなんです。幼かったので覚えていないんですけど、私が向日葵が好きって言ったから母は張り切って花嫁衣装に向日葵の刺繍を刺してくれたんですよ。ふふふ、母の頑張りが無駄にならなくて良かったです』と言っていた。
あの見事な刺繍は唯一無二のものだ、それに花嫁衣装に向日葵の刺繍は珍しかったので覚えているのだ。
あれはロアンナの花嫁衣装だわ。
なんであれをマリーが着ているの?
それに色を形まで変えてしまっている…。
ロアンナが譲ってあげたっていうの…、いいえ考えられないわ。
そんなことするはずないっ、だってあれは亡くなった母親の想いが詰まっているものだもの。いくら義妹の頼みでもあげる訳ないわ。
嫌な予感がした。
マリーはいい子だけれども早くに両親を亡くしたので兄であるザイが可哀想だと甘やかした結果、自分勝手な面がある。勿論他人に対してはちゃんと分別を付けているが、兄や義姉に対しては我が儘を言っても許されると思っているのだ。
とにかく事の真相を確かめたかったが、祝いの場を壊すようなことはしたくない。さりげなくザイにマリーが着ている婚礼衣装のことを確かめようとしたが、タイミングが悪く話すことが出来なかった。
忙しそうに動き回るロナが台所に入り一人になった時にそっと話し掛けた。
「ロアンナ、あのね…、マリーが着ている花嫁衣装のことだけど、」
全てを言葉にするまでもなかった。振り返ったロアンナの顔色は悪く目から涙を零しており、それで全てが分かった。
やはりあれはロアンナの花嫁衣装だったものだ。
それにあの衣装は譲られたものではなく、ロアンナの意思に反してマリーが着ているのだろう。
それも勝手に手を加えて……。
信じられなかった、こんな事があっていいはずがない。だってあれは幼い娘を残して亡くなった母親の深い愛情そのものだ。
それを他人が手を加えるなんて許されない。
なんてことをしたの…マリー…。
あなたって子はどうして笑ってられるのっ!
幼い頃から知っている可愛いマリーだけれども、今回ばかりは怒りが沸いてくる。
「ロアンナ大丈夫?あの、このことはザイは…承知している…の?」
ロアンナがあの花嫁衣装をどんなに大切にしているか知っていたザイがこの事を事前に承知しているとは信じたくないけれど、マリーが一存でやったこととも思えない。…だってザイはあの花嫁衣装を着ている妹を見て嬉しそうに笑っていた。
でも一縷の望みを持ってロアンナに聞いてみる。
どんな返事が返って来ても許せることではないが、せめてマリーの独断であって欲しかった。
「ザイが事前に知っていたかは分からない…。
私も今日初めて知ったの。支度が終わったあの子はね『義姉さん見て、少し古臭かったから私が素敵に変身させたの』って。
あは…は…は…、屈託のない顔でそう言いながら笑っていた」
ハラハラと涙を零しながらロアンナは震えていた。
「それならザイはきっとこのことを知らなかったのね、」
私がそう言った後に慰めの言葉を続けようとしたらそれはロアンナの言葉によって遮られた。
「ふっ、知らなかった…?そんなことどうでもいいわ。後から来たあの人はね、マリーの姿を見て『マリー素敵な花嫁衣装だ、凄く似合っているよ』って褒めたの。あの衣装が私のものだって気づきもしなかったし、それを見て震えている私にも気づかなかった。
たった一回見ただけのクレアさんでさえ気づいたのに。
私は彼の前で純白だったあれを着て見せたこともあったの、その時は『結婚式でそれを着る君を早く見たい』って言っていたのに、それなのに…全く気づきもしなかった。
妹が着ている衣装が元は私の花嫁衣装だったと分かりもせず、黙ったままその場を離れる私にも気づかないくらい浮かれていた…。
ザイは私のことなんて…ちっとも見てやし…かったの、よ」
声を震わせながらそういう彼女は全てを諦めてしまった顔をしていた。
絶望…それだけしか今の彼女の顔には浮かんでいない。
そして気丈にもまだやる事があるからと言って私の前から去ってしまった後も、みんなが笑って楽しんでいる宴の陰でひたすら働き続けていた。
その一方でザイとマリーは彼女の絶望にも気づかず、今日という幸せな瞬間を『花嫁とその兄』として心から楽しんでいたのだ。
結婚式の翌日にロアンナが家を出て行ったと知ったのはザイが慌てて私の家を訪ねて来た時だった。
驚きはしなかった。あの時の彼女を知っていたから当然の結果だと思った。
隣町の彼女の実家を訪ねた時のことを話してから『どうか結婚式の時に言い掛けた言葉を教えて欲しい』と必死の形相でザイは訴えてきたのだ。
なにを今更…もう遅いでしょうに。
私は知っていること全てを話して聞かせた。
あの時のロアンナの涙を、震える声を、笑顔で隠した絶望を、彼が笑っている間に目も向けなかった事実を隠すことなく伝えた。
今までは親戚でもないのだからと厳しい言葉を投げつける事はなかった、今日も厳しい言葉は何一つ使ってはいない。けれども彼を地獄に突き落とすにはただの事実だけで十分だった。
私の話を聞き終わった彼はあの時のロアンナと同じ顔をしていた。
自分の犯した過ちを知って絶望が彼を覆い尽くしている。
自業自得とはいえそんなザイを見るのは辛かった。
きっと彼に悪気はなかった。ただ大切なものがあまりに自然に隣にあったから失うなんて思わずにいただけ…。
兄として必死になるあまりに、愛する人に向き合う時間を後回しにしただけ…。
ザイはふらふらと立ち上がりると『クレアさん、お邪魔し…、した』と囁くように告げて家へと帰っていった。私はその後ろ姿に慰めの言葉は掛けなかった、彼には今どんな言葉も耳には入らないだろうから。
真実を知ったザイはこれからどうするのだろう。
出て行ってしまったロアンナは優しく穏やかだったけど真の強い女性だった。きっとザイが謝っても許してくれないのではないだろうか…。
こんな結末を望んでいたわけではない。
私があの時にザイとちゃんと話せていたら結末は変わっていたかもしれない。
そう思うと亡くなった友人達の悲しそうな顔が頭に浮かんできて、自分の無力さに打ちのめされるばかりだった。
皆から祝福の言葉を貰い幸せそうに笑っている薄紅色の衣装を纏った花嫁の姿は誰から見ても素晴らしいものだった。
けれども私はその姿を目にして驚くしかなかった。
えっ、な、なんで…。
似ているだけ…なの?
で、でも、あれは…。
まさに幸せな花嫁という感じで笑っているマリーが身に着けている花嫁衣装はなんと以前ロアンナが大切そうに見せてくれたものだった。
色が純白から薄紅色に染め変えられ、長かったドレスが大胆に短くなっていたがあれはロアンナのものだ。
‥‥間違いない。
あの胸元にある見事な刺繍はあの日、ロアンナが嬉しそうに『亡くなった母は刺繍が得意だったそうなんです。幼かったので覚えていないんですけど、私が向日葵が好きって言ったから母は張り切って花嫁衣装に向日葵の刺繍を刺してくれたんですよ。ふふふ、母の頑張りが無駄にならなくて良かったです』と言っていた。
あの見事な刺繍は唯一無二のものだ、それに花嫁衣装に向日葵の刺繍は珍しかったので覚えているのだ。
あれはロアンナの花嫁衣装だわ。
なんであれをマリーが着ているの?
それに色を形まで変えてしまっている…。
ロアンナが譲ってあげたっていうの…、いいえ考えられないわ。
そんなことするはずないっ、だってあれは亡くなった母親の想いが詰まっているものだもの。いくら義妹の頼みでもあげる訳ないわ。
嫌な予感がした。
マリーはいい子だけれども早くに両親を亡くしたので兄であるザイが可哀想だと甘やかした結果、自分勝手な面がある。勿論他人に対してはちゃんと分別を付けているが、兄や義姉に対しては我が儘を言っても許されると思っているのだ。
とにかく事の真相を確かめたかったが、祝いの場を壊すようなことはしたくない。さりげなくザイにマリーが着ている婚礼衣装のことを確かめようとしたが、タイミングが悪く話すことが出来なかった。
忙しそうに動き回るロナが台所に入り一人になった時にそっと話し掛けた。
「ロアンナ、あのね…、マリーが着ている花嫁衣装のことだけど、」
全てを言葉にするまでもなかった。振り返ったロアンナの顔色は悪く目から涙を零しており、それで全てが分かった。
やはりあれはロアンナの花嫁衣装だったものだ。
それにあの衣装は譲られたものではなく、ロアンナの意思に反してマリーが着ているのだろう。
それも勝手に手を加えて……。
信じられなかった、こんな事があっていいはずがない。だってあれは幼い娘を残して亡くなった母親の深い愛情そのものだ。
それを他人が手を加えるなんて許されない。
なんてことをしたの…マリー…。
あなたって子はどうして笑ってられるのっ!
幼い頃から知っている可愛いマリーだけれども、今回ばかりは怒りが沸いてくる。
「ロアンナ大丈夫?あの、このことはザイは…承知している…の?」
ロアンナがあの花嫁衣装をどんなに大切にしているか知っていたザイがこの事を事前に承知しているとは信じたくないけれど、マリーが一存でやったこととも思えない。…だってザイはあの花嫁衣装を着ている妹を見て嬉しそうに笑っていた。
でも一縷の望みを持ってロアンナに聞いてみる。
どんな返事が返って来ても許せることではないが、せめてマリーの独断であって欲しかった。
「ザイが事前に知っていたかは分からない…。
私も今日初めて知ったの。支度が終わったあの子はね『義姉さん見て、少し古臭かったから私が素敵に変身させたの』って。
あは…は…は…、屈託のない顔でそう言いながら笑っていた」
ハラハラと涙を零しながらロアンナは震えていた。
「それならザイはきっとこのことを知らなかったのね、」
私がそう言った後に慰めの言葉を続けようとしたらそれはロアンナの言葉によって遮られた。
「ふっ、知らなかった…?そんなことどうでもいいわ。後から来たあの人はね、マリーの姿を見て『マリー素敵な花嫁衣装だ、凄く似合っているよ』って褒めたの。あの衣装が私のものだって気づきもしなかったし、それを見て震えている私にも気づかなかった。
たった一回見ただけのクレアさんでさえ気づいたのに。
私は彼の前で純白だったあれを着て見せたこともあったの、その時は『結婚式でそれを着る君を早く見たい』って言っていたのに、それなのに…全く気づきもしなかった。
妹が着ている衣装が元は私の花嫁衣装だったと分かりもせず、黙ったままその場を離れる私にも気づかないくらい浮かれていた…。
ザイは私のことなんて…ちっとも見てやし…かったの、よ」
声を震わせながらそういう彼女は全てを諦めてしまった顔をしていた。
絶望…それだけしか今の彼女の顔には浮かんでいない。
そして気丈にもまだやる事があるからと言って私の前から去ってしまった後も、みんなが笑って楽しんでいる宴の陰でひたすら働き続けていた。
その一方でザイとマリーは彼女の絶望にも気づかず、今日という幸せな瞬間を『花嫁とその兄』として心から楽しんでいたのだ。
結婚式の翌日にロアンナが家を出て行ったと知ったのはザイが慌てて私の家を訪ねて来た時だった。
驚きはしなかった。あの時の彼女を知っていたから当然の結果だと思った。
隣町の彼女の実家を訪ねた時のことを話してから『どうか結婚式の時に言い掛けた言葉を教えて欲しい』と必死の形相でザイは訴えてきたのだ。
なにを今更…もう遅いでしょうに。
私は知っていること全てを話して聞かせた。
あの時のロアンナの涙を、震える声を、笑顔で隠した絶望を、彼が笑っている間に目も向けなかった事実を隠すことなく伝えた。
今までは親戚でもないのだからと厳しい言葉を投げつける事はなかった、今日も厳しい言葉は何一つ使ってはいない。けれども彼を地獄に突き落とすにはただの事実だけで十分だった。
私の話を聞き終わった彼はあの時のロアンナと同じ顔をしていた。
自分の犯した過ちを知って絶望が彼を覆い尽くしている。
自業自得とはいえそんなザイを見るのは辛かった。
きっと彼に悪気はなかった。ただ大切なものがあまりに自然に隣にあったから失うなんて思わずにいただけ…。
兄として必死になるあまりに、愛する人に向き合う時間を後回しにしただけ…。
ザイはふらふらと立ち上がりると『クレアさん、お邪魔し…、した』と囁くように告げて家へと帰っていった。私はその後ろ姿に慰めの言葉は掛けなかった、彼には今どんな言葉も耳には入らないだろうから。
真実を知ったザイはこれからどうするのだろう。
出て行ってしまったロアンナは優しく穏やかだったけど真の強い女性だった。きっとザイが謝っても許してくれないのではないだろうか…。
こんな結末を望んでいたわけではない。
私があの時にザイとちゃんと話せていたら結末は変わっていたかもしれない。
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