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13.元妻からの手紙
離縁を受け入れられない俺は何度も子爵家へイザベラとの面会を申し込んだが、断られ会う事すら出来ないでいた。手紙も送っているが返事が来たことはない、きっと子爵家当主である義兄が握り潰しているのだろう。
(会って話すことさえ出来れば、きっと俺の元に戻って来てくれるはずだ。俺達には結婚生活10年という重みがあるし、可愛い子供が二人もいるんだから)
何とかして連絡を取ろうと足掻いていたら、子爵家の印が入った手紙が俺宛に送られてきた。
それは待ちに待ったイザベラからだった。手紙からはほんのり彼女の香りがして、思わず泣きそうになるほど嬉しくてしょうがなかった。
(やっぱりベラも俺の事を気に掛けていたんだ。きっと勢いで離縁したことを後悔しているに違いない)
俺は逸る気持ちを抑えられず、ペーパーナイフも使わずにその場で乱暴に開封し読み始めた。
*************************
トーマス・ドエイン様
お久し振りです。
本当は手紙を書くつもりはなかったのですが、あなたから何度も面会の申込みや手紙が送られて来たので、これを書いています。
貴方からの手紙には謝罪と後悔と私に対する愛が書かれていましたが、それは本当に愛でしょうか。私は貴方の中に私への愛はないと思っています。貴方が愛だと信じているものは、ただの執着でしょう。
貴方の浮気を知った時、私のなかに怒りと悲しみとまだ愛情がありました。浮気をされてもまだ貴方を愛していたのは、貴方も私を愛していると信じていたからです。
でもその後の貴方の態度からは、愛の欠片も感じる事はなかったです。本当に私を愛していたら、私の気持ちを考えることをしたはずですし、私の心がどんなに傷ついていたか気づいたはずです。
貴方は自分の事しか考えず、全然気づいてくれなかった。
それどころか周りから責められても助けもせずに、ボロボロになっている私を放置して浮気相手同伴の大切な仕事を選びました。
ほら貴方の行動の中に、私への愛なんて全く存在しないのが分かるでしょう。
あの時は貴方の行動に絶望しましたが、今となっては感謝すらしています。この最後の仕打ちで私の中から貴方への愛が完全に消滅し、『離縁』という大きな決断をする事が出来たんですから。
本当に有り難うございます。
それから子供達についてですが、お互いに子供の意思を尊重して行動しましょう。
親であることに変わりはないけれども、子供が望んだ時にだけ会って、子供の人生の邪魔だけはしないようにしましょう。
絶対にこれだけは守ってください、さもないと私は子爵家の力を使って貴方に報復を行うつもりです。
あとドエイン商会に子爵家から圧力を掛ける事は一切ないので安心してください。これは商会の為でも貴方の為でもありません、大切な息子リチャードが跡継ぎとしてそちらに残っているからです。あの子がそちらに残るのは大変残念ですが、リチャード自身が決めたことだから今は尊重します。
くれぐれも勘違いしないでください、圧力を掛けないだけで今までのように後ろ盾にはなりません。
きっと『今までも子爵家の名を出して商売をしたことはない』と思っているでしょうね。確かにドエイン商会は真っ当な商売をしていて、私が嫁いだ後も子爵家の力を頼ったことなど一度もありませんでした。でも人は勝手に忖度するものです。ドエイン商会の後ろに子爵家の存在を感じて商売をしていた相手は沢山いた事でしょう。
その影響がこれから出るとは思いますが、貴方なら周りに助けられ何とかするのでしょう、…あの時もそうでしたから。
これからは色々と大変でしょうが、もう他人である私に二度と連絡を取ろうとしないで下さい。もう私達の道が交わることは決してありません。
さようなら。
イザベラ・カローアより
****************************
俺は手紙を読み終わって、もう復縁の可能性がないことをはっきりと理解した。イザベラはもう俺を愛していない…。
(会って話すことさえ出来れば、きっと俺の元に戻って来てくれるはずだ。俺達には結婚生活10年という重みがあるし、可愛い子供が二人もいるんだから)
何とかして連絡を取ろうと足掻いていたら、子爵家の印が入った手紙が俺宛に送られてきた。
それは待ちに待ったイザベラからだった。手紙からはほんのり彼女の香りがして、思わず泣きそうになるほど嬉しくてしょうがなかった。
(やっぱりベラも俺の事を気に掛けていたんだ。きっと勢いで離縁したことを後悔しているに違いない)
俺は逸る気持ちを抑えられず、ペーパーナイフも使わずにその場で乱暴に開封し読み始めた。
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トーマス・ドエイン様
お久し振りです。
本当は手紙を書くつもりはなかったのですが、あなたから何度も面会の申込みや手紙が送られて来たので、これを書いています。
貴方からの手紙には謝罪と後悔と私に対する愛が書かれていましたが、それは本当に愛でしょうか。私は貴方の中に私への愛はないと思っています。貴方が愛だと信じているものは、ただの執着でしょう。
貴方の浮気を知った時、私のなかに怒りと悲しみとまだ愛情がありました。浮気をされてもまだ貴方を愛していたのは、貴方も私を愛していると信じていたからです。
でもその後の貴方の態度からは、愛の欠片も感じる事はなかったです。本当に私を愛していたら、私の気持ちを考えることをしたはずですし、私の心がどんなに傷ついていたか気づいたはずです。
貴方は自分の事しか考えず、全然気づいてくれなかった。
それどころか周りから責められても助けもせずに、ボロボロになっている私を放置して浮気相手同伴の大切な仕事を選びました。
ほら貴方の行動の中に、私への愛なんて全く存在しないのが分かるでしょう。
あの時は貴方の行動に絶望しましたが、今となっては感謝すらしています。この最後の仕打ちで私の中から貴方への愛が完全に消滅し、『離縁』という大きな決断をする事が出来たんですから。
本当に有り難うございます。
それから子供達についてですが、お互いに子供の意思を尊重して行動しましょう。
親であることに変わりはないけれども、子供が望んだ時にだけ会って、子供の人生の邪魔だけはしないようにしましょう。
絶対にこれだけは守ってください、さもないと私は子爵家の力を使って貴方に報復を行うつもりです。
あとドエイン商会に子爵家から圧力を掛ける事は一切ないので安心してください。これは商会の為でも貴方の為でもありません、大切な息子リチャードが跡継ぎとしてそちらに残っているからです。あの子がそちらに残るのは大変残念ですが、リチャード自身が決めたことだから今は尊重します。
くれぐれも勘違いしないでください、圧力を掛けないだけで今までのように後ろ盾にはなりません。
きっと『今までも子爵家の名を出して商売をしたことはない』と思っているでしょうね。確かにドエイン商会は真っ当な商売をしていて、私が嫁いだ後も子爵家の力を頼ったことなど一度もありませんでした。でも人は勝手に忖度するものです。ドエイン商会の後ろに子爵家の存在を感じて商売をしていた相手は沢山いた事でしょう。
その影響がこれから出るとは思いますが、貴方なら周りに助けられ何とかするのでしょう、…あの時もそうでしたから。
これからは色々と大変でしょうが、もう他人である私に二度と連絡を取ろうとしないで下さい。もう私達の道が交わることは決してありません。
さようなら。
イザベラ・カローアより
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俺は手紙を読み終わって、もう復縁の可能性がないことをはっきりと理解した。イザベラはもう俺を愛していない…。
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