9 / 10
9
今、俺はケイトの前で正座をさせられている。足が痺れているけど、そんなことは勿論言える雰囲気ではない。
ケイトと思いが通じ合った嬉しさから、『ケティがモテないようにするのが、大変だったんだぞ。アッハッハ』とつい調子に乗って話してしまったせいだ。
「ねえライ、いったい何をやってくれたのかしら?
正直に話してね……。じゃないと放牧するわよ」
「えっ、放牧って…?」
「お好きに逃げてくださいって意味よ。つまり結婚はなしということになるわね。それでいいの、ライ?」
「……っ!!」
ニッコリと笑いながらケイトはそう言う。
そんなケイトも可愛いけれど、今は纏っている雰囲気が怖くて仕方がない。
俺はブンブンと首を横に振り、ケイトの言葉を拒絶する。絶対に結婚したい、ケイトがいない人生なんて考えたくない。
「では話してちょうだいねっ?」
そう言いながらケイトはジリジリと迫ってくる。
俺は壁際まで追い詰められ、逃げ場を失った。つまり正座しながら壁ドン状態だ。一度はしてみたい憧れのシチュエーションに、思わず理性が飛びそうになるが、必死で抑える。
今はそれどころじゃない。
くそっ…残念だ……。
目の前のケイトは本気だ、誤魔化されないだろう。
もう俺には話すしか道は残されていない。
どうか見捨てないでくれと心のなかで叫びながら話し出す。
「あっ、えっと…大したことはやってない」
「……もっと詳しく聞きたいな♪」
間髪入れずケイトは、笑顔で言葉を返してくる。
可愛い、でもその笑顔が凄く……怖い。
「そ、そうだな。詳しく話さなきゃ伝わらないよな、はっはは…。ケイトに告白しようとした身の程知らずな奴は念入りに潰したかな。それと『可愛い』って変な目で見る奴は、ちょっとだけ潰したかな。ほら、俺って騎士だろ、あれは訓練でしたと片付けていたから全然問題はない。俺とケティの将来に悪影響は出ないようにしっかり後処理したから大丈夫だ、犯罪にはなっていない。ぎりぎりセーフだ、安心してくれ」
「問題はね…そこではないわよ、ライ。
私はね…、全然モテなくて真剣に悩んでいたのよー!!」
……すまん、ケティ。
心のなかで謝るが、また生まれ変わったとしても俺は同じことをやるだろう。
それからコンコンとお説教が続いた。
足の感覚は完全に消失し辛かったが、ケイトの口からは『嫌い』とか『別れる』って言葉は出てこなかったから、なんとか耐えられた。
そして最後には『本当にライって困った人ね、でも……大好き』とケイトが言って、お説教は終了となった。
本当に良かった、全部言わなくて…。
俺の可愛い天使は人気がある、だから本当は表沙汰には出来ないこともちょっとだけやっていた。
だがそれだけは内緒だ、だって嫌われたくはない。
あれと、あれと………あれは非常にまずいな…。
だから墓場まで持っていこうと秘かに誓う。
俺はケイトと一緒にケイレブの部屋を訪ねる。
やはり未来の義弟にはお礼を兼ねて最初に報告をしておきたい。
トントンと扉を叩いてから、ケイトと俺はケイレブの部屋に入る。
俺が口を開く前にケイレブのほうから話しだした。
「上手くいって良かったですね」
「ああこの通りだ。ありがとうな、ケイレブ」
俺とケイレブの会話に首を傾げて『どういう意味?』と聞いてくる。別に内緒にする必要もないので、俺はケイレブから助言を貰ったことを話す。
「そうだったのね。ケイレブ、ありがとう」
「いいえ、姉上と義兄上のお役に立てて良かったです」
「義兄上?なんだか呼び馴れている気がするのは気のせいかしら…」
「「………」」」
気まずい空気になる。
『ちょっとライ、いいかしら?』とまたもやケイトがニッコリと笑う。
そして俺はケイレブにずっと前から『義兄上』と呼ばせていたこと、そして義両親に『義息子』と呼んでくれとお願いしていたことをすべて話すことになった。
俺の告白を聞き、ケイトは無言になる。
「…怒ったか?」
「怒ってないわ。ちょっと呆れているだけ」
「でも俺のこと好きだよな?変わらずに愛しているよな…?」
ケイトの言葉に安心しつつも、もっと安心できる言葉が欲しいと縋るように尋ねてしまう。
「ふふ、ちょっと変わったかな。
もっと愛しくなったわ、ライ」
「ケティ、俺のほうがもっともっと愛しく思っているからなっ!」
甘い雰囲気が漂うなか、ケイトを力いっぱい抱きしめていると後ろから声が掛かった。
「二人とも僕の部屋から出ていってください」
腕を組んでこちらに冷たい眼差しを向けてくるケイレブ。その表情に、俺とケイトは固まって動けなくなる。
真の恐怖とはなにかを、俺達は義弟から学んだ…。
そして俺とケイトは、一ヶ月後に無事結婚式を挙げることになった。
貴族の結婚にしては、婚約から結婚まで有りえないほどの速さだったが、驚かれることはなかった。
全ては数年前から準備していたからだ。
ケイトのことを知り尽くしている俺が用意した式に、ケイトも喜んでくれている。
周りから祝福の言葉に囲まれ俺とケイトが微笑んでいると、どこからか『うわぁ、可愛い。こっそり愛人にしようかな』と呟く声が聞こえた。
ちらりと隣りにいるケイトを見るが、その表情は笑顔のままだ。
どうやら周りが賑やかなので、ケイトにはその不埒な声が聞こえていなかったらしい。
ホッとしながら、俺は横目で呟いた奴を確認する。
知らない顔だったが、その身なりから貴族なのは間違いない。
騎士ではないな、文官だろうか。
俺の友人には、王宮で働く文官も数人いる。なかにはかなり出世している奴もいるので、そいつに頼めばすぐに誰だか分かるだろう。
身元が判明したら、その先はもう決まっている。身の程知らずの馬鹿の運命は一つだけだ。
――はっはは、また一つ秘密が増えそうだ。
(完)
********************
これにて完結です。
最後まで読んでいただき、本当に有り難うございました٩(๑´3`๑)۶
完結はしますが、おまけの話を投稿する予定です。
そちらも読んで頂けたら幸いですヽ(=´▽`=)ノ
ケイトと思いが通じ合った嬉しさから、『ケティがモテないようにするのが、大変だったんだぞ。アッハッハ』とつい調子に乗って話してしまったせいだ。
「ねえライ、いったい何をやってくれたのかしら?
正直に話してね……。じゃないと放牧するわよ」
「えっ、放牧って…?」
「お好きに逃げてくださいって意味よ。つまり結婚はなしということになるわね。それでいいの、ライ?」
「……っ!!」
ニッコリと笑いながらケイトはそう言う。
そんなケイトも可愛いけれど、今は纏っている雰囲気が怖くて仕方がない。
俺はブンブンと首を横に振り、ケイトの言葉を拒絶する。絶対に結婚したい、ケイトがいない人生なんて考えたくない。
「では話してちょうだいねっ?」
そう言いながらケイトはジリジリと迫ってくる。
俺は壁際まで追い詰められ、逃げ場を失った。つまり正座しながら壁ドン状態だ。一度はしてみたい憧れのシチュエーションに、思わず理性が飛びそうになるが、必死で抑える。
今はそれどころじゃない。
くそっ…残念だ……。
目の前のケイトは本気だ、誤魔化されないだろう。
もう俺には話すしか道は残されていない。
どうか見捨てないでくれと心のなかで叫びながら話し出す。
「あっ、えっと…大したことはやってない」
「……もっと詳しく聞きたいな♪」
間髪入れずケイトは、笑顔で言葉を返してくる。
可愛い、でもその笑顔が凄く……怖い。
「そ、そうだな。詳しく話さなきゃ伝わらないよな、はっはは…。ケイトに告白しようとした身の程知らずな奴は念入りに潰したかな。それと『可愛い』って変な目で見る奴は、ちょっとだけ潰したかな。ほら、俺って騎士だろ、あれは訓練でしたと片付けていたから全然問題はない。俺とケティの将来に悪影響は出ないようにしっかり後処理したから大丈夫だ、犯罪にはなっていない。ぎりぎりセーフだ、安心してくれ」
「問題はね…そこではないわよ、ライ。
私はね…、全然モテなくて真剣に悩んでいたのよー!!」
……すまん、ケティ。
心のなかで謝るが、また生まれ変わったとしても俺は同じことをやるだろう。
それからコンコンとお説教が続いた。
足の感覚は完全に消失し辛かったが、ケイトの口からは『嫌い』とか『別れる』って言葉は出てこなかったから、なんとか耐えられた。
そして最後には『本当にライって困った人ね、でも……大好き』とケイトが言って、お説教は終了となった。
本当に良かった、全部言わなくて…。
俺の可愛い天使は人気がある、だから本当は表沙汰には出来ないこともちょっとだけやっていた。
だがそれだけは内緒だ、だって嫌われたくはない。
あれと、あれと………あれは非常にまずいな…。
だから墓場まで持っていこうと秘かに誓う。
俺はケイトと一緒にケイレブの部屋を訪ねる。
やはり未来の義弟にはお礼を兼ねて最初に報告をしておきたい。
トントンと扉を叩いてから、ケイトと俺はケイレブの部屋に入る。
俺が口を開く前にケイレブのほうから話しだした。
「上手くいって良かったですね」
「ああこの通りだ。ありがとうな、ケイレブ」
俺とケイレブの会話に首を傾げて『どういう意味?』と聞いてくる。別に内緒にする必要もないので、俺はケイレブから助言を貰ったことを話す。
「そうだったのね。ケイレブ、ありがとう」
「いいえ、姉上と義兄上のお役に立てて良かったです」
「義兄上?なんだか呼び馴れている気がするのは気のせいかしら…」
「「………」」」
気まずい空気になる。
『ちょっとライ、いいかしら?』とまたもやケイトがニッコリと笑う。
そして俺はケイレブにずっと前から『義兄上』と呼ばせていたこと、そして義両親に『義息子』と呼んでくれとお願いしていたことをすべて話すことになった。
俺の告白を聞き、ケイトは無言になる。
「…怒ったか?」
「怒ってないわ。ちょっと呆れているだけ」
「でも俺のこと好きだよな?変わらずに愛しているよな…?」
ケイトの言葉に安心しつつも、もっと安心できる言葉が欲しいと縋るように尋ねてしまう。
「ふふ、ちょっと変わったかな。
もっと愛しくなったわ、ライ」
「ケティ、俺のほうがもっともっと愛しく思っているからなっ!」
甘い雰囲気が漂うなか、ケイトを力いっぱい抱きしめていると後ろから声が掛かった。
「二人とも僕の部屋から出ていってください」
腕を組んでこちらに冷たい眼差しを向けてくるケイレブ。その表情に、俺とケイトは固まって動けなくなる。
真の恐怖とはなにかを、俺達は義弟から学んだ…。
そして俺とケイトは、一ヶ月後に無事結婚式を挙げることになった。
貴族の結婚にしては、婚約から結婚まで有りえないほどの速さだったが、驚かれることはなかった。
全ては数年前から準備していたからだ。
ケイトのことを知り尽くしている俺が用意した式に、ケイトも喜んでくれている。
周りから祝福の言葉に囲まれ俺とケイトが微笑んでいると、どこからか『うわぁ、可愛い。こっそり愛人にしようかな』と呟く声が聞こえた。
ちらりと隣りにいるケイトを見るが、その表情は笑顔のままだ。
どうやら周りが賑やかなので、ケイトにはその不埒な声が聞こえていなかったらしい。
ホッとしながら、俺は横目で呟いた奴を確認する。
知らない顔だったが、その身なりから貴族なのは間違いない。
騎士ではないな、文官だろうか。
俺の友人には、王宮で働く文官も数人いる。なかにはかなり出世している奴もいるので、そいつに頼めばすぐに誰だか分かるだろう。
身元が判明したら、その先はもう決まっている。身の程知らずの馬鹿の運命は一つだけだ。
――はっはは、また一つ秘密が増えそうだ。
(完)
********************
これにて完結です。
最後まで読んでいただき、本当に有り難うございました٩(๑´3`๑)۶
完結はしますが、おまけの話を投稿する予定です。
そちらも読んで頂けたら幸いですヽ(=´▽`=)ノ
あなたにおすすめの小説
婚約者の幼馴染にマウントを取られましたが、彼は最初から最後まで私の味方でした
柊
恋愛
学園で出会い、恋人になり、婚約したリアラとエルリック。
卒業後、リアラはエルリックの故郷へ挨拶に向かう。
彼の両親への挨拶に緊張していると、そこに現れたのはエルリックの幼馴染サラだった。
「私の方がエルリックを知ってる」
「サバサバしてるだけだから」
そんな言葉でリアラを見下し、距離を詰めてくるサラ。
さらにはリアラという婚約者がいるにも関わらず、エルリックに想いを告げてきて――
※複数のサイトに投稿しています。
幼馴染同士が両想いらしいので応援することにしたのに、なぜか彼の様子がおかしい
今川幸乃
恋愛
カーラ、ブライアン、キャシーの三人は皆中堅貴族の生まれで、年も近い幼馴染同士。
しかしある時カーラはたまたま、ブライアンがキャシーに告白し、二人が結ばれるのを見てしまった(と勘違いした)。
そのためカーラは自分は一歩引いて二人の仲を応援しようと決意する。
が、せっかくカーラが応援しているのになぜかブライアンの様子がおかしくて……
※短め、軽め
彼はヒロインを選んだ——けれど最後に“愛した”のは私だった
みゅー
恋愛
前世の記憶を思い出した瞬間、悟った。
この世界では、彼は“ヒロイン”を選ぶ――わたくしではない。
けれど、運命になんて屈しない。
“選ばれなかった令嬢”として終わるくらいなら、強く生きてみせる。
……そう決めたのに。
彼が初めて追いかけてきた——「行かないでくれ!」
涙で結ばれる、運命を越えた恋の物語。
最近彼氏の様子がおかしい!私を溺愛し大切にしてくれる幼馴染の彼氏が急に冷たくなった衝撃の理由。
佐藤 美奈
恋愛
ソフィア・フランチェスカ男爵令嬢はロナウド・オスバッカス子爵令息に結婚を申し込まれた。
幼馴染で恋人の二人は学園を卒業したら夫婦になる永遠の愛を誓う。超名門校のフォージャー学園に入学し恋愛と楽しい学園生活を送っていたが、学年が上がると愛する彼女の様子がおかしい事に気がつきました。
一緒に下校している時ロナウドにはソフィアが不安そうな顔をしているように見えて、心配そうな視線を向けて話しかけた。
ソフィアは彼を心配させないように無理に笑顔を作って、何でもないと答えますが本当は学園の経営者である理事長の娘アイリーン・クロフォード公爵令嬢に精神的に追い詰められていた。
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
愛を知らないアレと呼ばれる私ですが……
ミィタソ
恋愛
伯爵家の次女——エミリア・ミーティアは、優秀な姉のマリーザと比較され、アレと呼ばれて馬鹿にされていた。
ある日のパーティで、両親に連れられて行った先で出会ったのは、アグナバル侯爵家の一人息子レオン。
そこで両親に告げられたのは、婚約という衝撃の二文字だった。
妹から私の旦那様と結ばれたと手紙が来ましたが、人違いだったようです
今川幸乃
恋愛
ハワード公爵家の長女クララは半年ほど前にガイラー公爵家の長男アドルフと結婚した。
が、優しく穏やかな性格で領主としての才能もあるアドルフは女性から大人気でクララの妹レイチェルも彼と結ばれたクララをしきりにうらやんでいた。
アドルフが領地に次期当主としての勉強をしに帰ったとき、突然クララにレイチェルから「アドルフと結ばれた」と手紙が来る。
だが、レイチェルは知らなかった。
ガイラー公爵家には冷酷非道で女癖が悪く勘当された、アドルフと瓜二つの長男がいたことを。
※短め。
夫「お前は価値がない女だ。太った姿を見るだけで吐き気がする」若い彼女と再婚するから妻に出て行け!
佐藤 美奈
恋愛
華やかな舞踏会から帰宅した公爵夫人ジェシカは、幼馴染の夫ハリーから突然の宣告を受ける。
「お前は価値のない女だ。太った姿を見るだけで不快だ!」
冷酷な言葉は、長年連れ添った夫の口から発せられたとは思えないほど鋭く、ジェシカの胸に突き刺さる。
さらにハリーは、若い恋人ローラとの再婚を一方的に告げ、ジェシカに屋敷から出ていくよう迫る。
優しかった夫の変貌に、ジェシカは言葉を失い、ただ立ち尽くす。