17 / 36
16.夜会③
しおりを挟む
周囲の注目は私ではなく王女とエディが仲睦まじく踊る姿に移っている。私から周囲の気がそれた事に少しホッとし、それでいて複雑な気持ちで一人壁際に佇みながらエディの姿だけを目で追いかけていた。周りや王女のことは視界に入っているが見ないようにする。
---エディ、それはどういうこと…。
夫であるエディの態度について考えていると、いきなり隣から話し掛けられた。
「よぉ!キャサリン、夜会楽しんでいるかー」
「キャッ!いきなり話し掛けてびっくりさせないでちょうだい、お兄様。心臓が止まるかと思ったわ」
「ハハハ、すまんすまん。誰かさんに夢中になっていてお前が優しい兄に気づかないからつい驚かしたくなってな。そう怒るなよ、可愛い顔が台無しだぞ。それに夫婦と言えどもストーカーは駄目だぞ」
「怒ってないわよ。そしてストーカーなんてしていませんからね!
それに…可愛くなんてないから私は」
そう言って同じ色のドレスで優雅に踊っている王女の方をちらりと横目で見る。言動は兎も角アイラ王女は可憐で華やかだ、そんな人が私と全く同じ色のドレスを身に纏い同じ会場に居たら嫌でも比べられる。
そうなると私は完全にアイラ王女の引き立て役でしかない、…悔しいがそれが現実だ。もう『はぁ~』とため息しか出てこない。
グリグリグリ、兄が拳で私のこめかみを遠慮なしで押してくる。
「い、痛いわ。止めてお兄様!髪型が崩れてしまうじゃない」
「おいおい、お前は世界一可愛い自慢の俺の妹なんだぞ。勝手に馬鹿なことを考えて落ち込むなよ。
それに穴が開くほどエドを見ていたのだから、もうお前には分かっているんだろう?うん?」
口角を上げ楽しそうな顔をしている兄。『ほらどうだ!』と言わんばかりだ。
「…ええ、そうね。お兄様の助言通り彼のことだけを見たらちゃんと分かったわ、彼の本当の気持ちが」
「クックック。見ろよあのエドの顔、久しぶりに見たな~。融通が利かない脳筋のあいつにしては本当に頑張っているじゃないか」
面白がっている兄が視線をやる先にはアイラ王女と楽し気に踊るエディの姿があった。いつも女性には不愛想だと評されるその顔には珍しく笑顔が浮かんでいる。
そんなエディの表情を見て周囲は勝手に『やはりあの噂は本当だったのか』とざわつき、私に同情を寄せている。確かにエディが女性に対してあんな顔をすることはほとんどない。だからみんなあの表情をプラスの意味に誤解している。
けれども兄や私は幼い頃からエディをよく知っているので、あの表情の本当の意味が分かってしまう。
エディがあの表情を作っている時は不機嫌で嫌なことから早く逃げたい時だ。
昔親戚のおば様方に囲まれて不愛想にしていた彼に兄が教えたのだ。
『おい本当に嫌な時は嘘でもいいから笑っておけ。その方が周りは自分に都合よく解釈してくれるんだ。結果として嫌な時間も短くなるんだぞ、だいたいな~』
エディは今、アイラ王女と一緒に居るのを心底嫌がっている。これだけは絶対だ。
---エディは変わってなかった。
王女を愛しているどころか嫌悪しているわ。
本当に良かった…。
ふっ、でもちっとも子供の頃からあの無理して笑顔を作るのは変わっていないのね。…まったくいつまでも経っても子供みたいで可愛い人なんだから。
彼をちゃんと見ればすぐに正しい真実が分かった。なぜエディがこんな事を続けているのかは分からないままだけど、彼の気持ちが全く変わっていない事が分かっただけで今はいい。
かなり遠回りしてしまったけれども、これは大きな一歩だ。
私はアイラ王女と踊り終わったエディを見つめ、一瞬目が合った時ににっこりと微笑んで見せた。それを見た彼が一瞬嬉しそうに目を細めたのはきっと見間違いではないはずだ。
---エディ、それはどういうこと…。
夫であるエディの態度について考えていると、いきなり隣から話し掛けられた。
「よぉ!キャサリン、夜会楽しんでいるかー」
「キャッ!いきなり話し掛けてびっくりさせないでちょうだい、お兄様。心臓が止まるかと思ったわ」
「ハハハ、すまんすまん。誰かさんに夢中になっていてお前が優しい兄に気づかないからつい驚かしたくなってな。そう怒るなよ、可愛い顔が台無しだぞ。それに夫婦と言えどもストーカーは駄目だぞ」
「怒ってないわよ。そしてストーカーなんてしていませんからね!
それに…可愛くなんてないから私は」
そう言って同じ色のドレスで優雅に踊っている王女の方をちらりと横目で見る。言動は兎も角アイラ王女は可憐で華やかだ、そんな人が私と全く同じ色のドレスを身に纏い同じ会場に居たら嫌でも比べられる。
そうなると私は完全にアイラ王女の引き立て役でしかない、…悔しいがそれが現実だ。もう『はぁ~』とため息しか出てこない。
グリグリグリ、兄が拳で私のこめかみを遠慮なしで押してくる。
「い、痛いわ。止めてお兄様!髪型が崩れてしまうじゃない」
「おいおい、お前は世界一可愛い自慢の俺の妹なんだぞ。勝手に馬鹿なことを考えて落ち込むなよ。
それに穴が開くほどエドを見ていたのだから、もうお前には分かっているんだろう?うん?」
口角を上げ楽しそうな顔をしている兄。『ほらどうだ!』と言わんばかりだ。
「…ええ、そうね。お兄様の助言通り彼のことだけを見たらちゃんと分かったわ、彼の本当の気持ちが」
「クックック。見ろよあのエドの顔、久しぶりに見たな~。融通が利かない脳筋のあいつにしては本当に頑張っているじゃないか」
面白がっている兄が視線をやる先にはアイラ王女と楽し気に踊るエディの姿があった。いつも女性には不愛想だと評されるその顔には珍しく笑顔が浮かんでいる。
そんなエディの表情を見て周囲は勝手に『やはりあの噂は本当だったのか』とざわつき、私に同情を寄せている。確かにエディが女性に対してあんな顔をすることはほとんどない。だからみんなあの表情をプラスの意味に誤解している。
けれども兄や私は幼い頃からエディをよく知っているので、あの表情の本当の意味が分かってしまう。
エディがあの表情を作っている時は不機嫌で嫌なことから早く逃げたい時だ。
昔親戚のおば様方に囲まれて不愛想にしていた彼に兄が教えたのだ。
『おい本当に嫌な時は嘘でもいいから笑っておけ。その方が周りは自分に都合よく解釈してくれるんだ。結果として嫌な時間も短くなるんだぞ、だいたいな~』
エディは今、アイラ王女と一緒に居るのを心底嫌がっている。これだけは絶対だ。
---エディは変わってなかった。
王女を愛しているどころか嫌悪しているわ。
本当に良かった…。
ふっ、でもちっとも子供の頃からあの無理して笑顔を作るのは変わっていないのね。…まったくいつまでも経っても子供みたいで可愛い人なんだから。
彼をちゃんと見ればすぐに正しい真実が分かった。なぜエディがこんな事を続けているのかは分からないままだけど、彼の気持ちが全く変わっていない事が分かっただけで今はいい。
かなり遠回りしてしまったけれども、これは大きな一歩だ。
私はアイラ王女と踊り終わったエディを見つめ、一瞬目が合った時ににっこりと微笑んで見せた。それを見た彼が一瞬嬉しそうに目を細めたのはきっと見間違いではないはずだ。
145
あなたにおすすめの小説
騎士の妻ではいられない
Rj
恋愛
騎士の娘として育ったリンダは騎士とは結婚しないと決めていた。しかし幼馴染みで騎士のイーサンと結婚したリンダ。結婚した日に新郎は非常召集され、新婦のリンダは結婚を祝う宴に一人残された。二年目の結婚記念日に戻らない夫を待つリンダはもう騎士の妻ではいられないと心を決める。
全23話。
2024/1/29 全体的な加筆修正をしました。話の内容に変わりはありません。
イーサンが主人公の続編『騎士の妻でいてほしい 』(https://www.alphapolis.co.jp/novel/96163257/36727666)があります。
おしどり夫婦の茶番
Rj
恋愛
夫がまた口紅をつけて帰ってきた。お互い初恋の相手でおしどり夫婦として知られるナタリアとブライアン。
おしどり夫婦にも人にはいえない事情がある。
一話完結。『一番でなくとも』に登場したナタリアの話です。未読でも問題なく読んでいただけます。
貴方の知る私はもういない
藍田ひびき
恋愛
「ローゼマリー。婚約を解消して欲しい」
ファインベルグ公爵令嬢ローゼマリーは、婚約者のヘンリック王子から婚約解消を言い渡される。
表向きはエルヴィラ・ボーデ子爵令嬢を愛してしまったからという理由だが、彼には別の目的があった。
ローゼマリーが承諾したことで速やかに婚約は解消されたが、事態はヘンリック王子の想定しない方向へと進んでいく――。
※ 他サイトにも投稿しています。
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる