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20.罠①
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夜会の時にエディの本当の気持ちが分かったので、会えない日は続いているが私は信じて待つことが出来ている。
きっと彼の言う仕事が終わったらすべてが元に戻るはずだと信じられるようになったから、彼の不在を寂しく感じているけど気持ちが揺らぐことはなくなっていた。
お昼寝から起きてご機嫌なルイを膝に乗せあやしながら、私はルイと庭にある東屋でお喋りを楽しんでいる。
「ルイ、早くお父様とまた三人でピクニックに行きたいわね。敷物の上で三人で川の字になってお昼寝をするの、きっと楽しいわよ。
私はルイとエディと家族水入らずで過ごす時間が一番幸せだわ。ねぇ、ルイもそうでしょう?」
「ばぶぅー。ダー、ダー」
「そうよ、ダディよ。すごく上手に言えたわね、お利口さんよ。きっとエディもこれを聞いたら飛び上がって喜ぶわ。
ルイも早く『ダディ』ってお父様に聞かせてあげたいわよね」
「ダーダー。キャッキャ!ジーイジー」
褒められて嬉しいのか、ルイは覚えた?言葉をご機嫌な様子で披露してくれる。でも最後に言った言葉はちょっと気にかかる。
「ルイ。ダディはいいけど最後のはちょっと違うかな…。
お母様はあなたにお父様みたいに誠実で素敵な人になって欲しいと願っているのよ。
ジェームズ叔父様は優しい人だけどちょっとあれだから…お手本にはならないかも」
「ばぶぅ…?キャッキャッキャー!」
何がおかしいのか、私の真剣な願いを聞いてルイは大喜びして膝の上でジャンプを繰り返す。
我が子の足の力強さに精悍な騎士であるエディを感じ『やはり親子ね』と微笑ましく思っていると、いきなり慌てた様子の侍女が一人の騎士を伴ってこちらに全力で走って来た。
「ゴッホ、ホッ。…お、奥様、失礼します。旦那様がお仕事中に怪我をされたようで、ゲッホ、な、なんでも大変な状態のようで、こち…らの騎士様が奥様とルイ様を旦那様の元へ急ぎお連れしてくれると、ゴッホッ」
侍女が息を切らせながらも必死に伝え聞いた状況を話してくれる。
「エディが怪我をしたの…。いったいどこで?
それで彼は今どんな具合なの?
意識はあるの?
お医者様はなんて言っているの?
ああどうしましょう…。神様…」
私は取り乱してしまい、怪我を負った彼の様子をより詳しく知りたくて侍女の隣に立っている初めて会う騎士に矢継ぎ早に質問をする。
「申しわけありません。私も詳しい事は何も知らないのです。ただ危ない状態のようで奥様とお子様のお名前を繰り返し呟いているので、早く二人をお連れするようにと言われて参りました。
さあ、馬車を待たせているのでお急ぎください」
「わ、分かりました。では準備を致しますので、」
「いいえ時間がありません!まずはお二人をお連れするので、必要な荷物などは後から侍女に持たせてください。折り返し馬車を寄こしますから。
さあ一刻の猶予もありませんからお早く!」
「わ、分かりました、よろしくお願いします」
必死な形相で言い募る騎士からはエディの状態の酷さを察せられる。私はすぐにでも彼の傍に行きたくて、侍女に後で来るように指示を出すと、言われるがままにルイを腕に抱いて騎士と一緒に馬車に乗り込んだ。
---お願いエディ、無事でいて…。すぐに行くから!
私は眠ってしまったルイを抱きながらエディの無事を祈っていると、ふと外の景色の異変に気が付いた。
エディは王宮で護衛をしているので馬車が向かうのは王宮だとばかり思っていたが、今は何故か森の中を走っている。
---なぜこんな場所を走っているの?…何かがおかしいわ。
「あの、夫は今どこにいるのですか?王宮で仕事をしているはずですが…」
一緒に馬車に乗っている騎士は私の質問に答えず、その代わり短剣を見せつけ『黙っていろ』と告げてきた。
狭い馬車の中では逃げ場もなく大人しく従うしかない。私は騙されたことが分かったが、騎士相手に抵抗するすべもなく、ただルイまでも危険な状況に巻き込んでしまったことを激しく後悔していた。
きっと彼の言う仕事が終わったらすべてが元に戻るはずだと信じられるようになったから、彼の不在を寂しく感じているけど気持ちが揺らぐことはなくなっていた。
お昼寝から起きてご機嫌なルイを膝に乗せあやしながら、私はルイと庭にある東屋でお喋りを楽しんでいる。
「ルイ、早くお父様とまた三人でピクニックに行きたいわね。敷物の上で三人で川の字になってお昼寝をするの、きっと楽しいわよ。
私はルイとエディと家族水入らずで過ごす時間が一番幸せだわ。ねぇ、ルイもそうでしょう?」
「ばぶぅー。ダー、ダー」
「そうよ、ダディよ。すごく上手に言えたわね、お利口さんよ。きっとエディもこれを聞いたら飛び上がって喜ぶわ。
ルイも早く『ダディ』ってお父様に聞かせてあげたいわよね」
「ダーダー。キャッキャ!ジーイジー」
褒められて嬉しいのか、ルイは覚えた?言葉をご機嫌な様子で披露してくれる。でも最後に言った言葉はちょっと気にかかる。
「ルイ。ダディはいいけど最後のはちょっと違うかな…。
お母様はあなたにお父様みたいに誠実で素敵な人になって欲しいと願っているのよ。
ジェームズ叔父様は優しい人だけどちょっとあれだから…お手本にはならないかも」
「ばぶぅ…?キャッキャッキャー!」
何がおかしいのか、私の真剣な願いを聞いてルイは大喜びして膝の上でジャンプを繰り返す。
我が子の足の力強さに精悍な騎士であるエディを感じ『やはり親子ね』と微笑ましく思っていると、いきなり慌てた様子の侍女が一人の騎士を伴ってこちらに全力で走って来た。
「ゴッホ、ホッ。…お、奥様、失礼します。旦那様がお仕事中に怪我をされたようで、ゲッホ、な、なんでも大変な状態のようで、こち…らの騎士様が奥様とルイ様を旦那様の元へ急ぎお連れしてくれると、ゴッホッ」
侍女が息を切らせながらも必死に伝え聞いた状況を話してくれる。
「エディが怪我をしたの…。いったいどこで?
それで彼は今どんな具合なの?
意識はあるの?
お医者様はなんて言っているの?
ああどうしましょう…。神様…」
私は取り乱してしまい、怪我を負った彼の様子をより詳しく知りたくて侍女の隣に立っている初めて会う騎士に矢継ぎ早に質問をする。
「申しわけありません。私も詳しい事は何も知らないのです。ただ危ない状態のようで奥様とお子様のお名前を繰り返し呟いているので、早く二人をお連れするようにと言われて参りました。
さあ、馬車を待たせているのでお急ぎください」
「わ、分かりました。では準備を致しますので、」
「いいえ時間がありません!まずはお二人をお連れするので、必要な荷物などは後から侍女に持たせてください。折り返し馬車を寄こしますから。
さあ一刻の猶予もありませんからお早く!」
「わ、分かりました、よろしくお願いします」
必死な形相で言い募る騎士からはエディの状態の酷さを察せられる。私はすぐにでも彼の傍に行きたくて、侍女に後で来るように指示を出すと、言われるがままにルイを腕に抱いて騎士と一緒に馬車に乗り込んだ。
---お願いエディ、無事でいて…。すぐに行くから!
私は眠ってしまったルイを抱きながらエディの無事を祈っていると、ふと外の景色の異変に気が付いた。
エディは王宮で護衛をしているので馬車が向かうのは王宮だとばかり思っていたが、今は何故か森の中を走っている。
---なぜこんな場所を走っているの?…何かがおかしいわ。
「あの、夫は今どこにいるのですか?王宮で仕事をしているはずですが…」
一緒に馬車に乗っている騎士は私の質問に答えず、その代わり短剣を見せつけ『黙っていろ』と告げてきた。
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