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30.王女の末路~王女視点~①
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『ギャァー、痛い、痛い。誰か薬を、薬をもっとちょうだい!』
『なりません。これ以上の薬の摂取はお体に障ります。アイラ王女様どうかご辛抱ください』
『私に死ねって言うの!この役立たずがっ』
ガッシャーン!!
喚き散らす甲高い声、物が割れる音、必死に宥める医師や侍女の声。
キアヌ第一王子がアイラ王女のいる部屋に入ると、その耳には早速王女の甲高い罵声が飛び込んでくる。
失った右手首の痛みに苦しんでいる王女はまだ兄である第一王子が部屋に入ってきたことに気づいてもいない。
残った左手でベットの脇に置いてある水差しを持ち医師に投げつけようとするが、利き手ではない手ではそれも叶わず、水差しは床にぶつかり砕け散る。
パリーーン…。
片付けをしようとした侍女達が第一王子の存在に気づき慌てて礼を取ると、暴れていた王女もやっと兄の存在に気づき顔を青ざめ、ガタガタ震え始める。
---ヒッ!お、おに、い様…。
「どうだい調子は?アイラ」
キアヌ第一王子が優しく声を掛けているが、震えは酷くなるばかりで止まることはない。
「お、お兄さ…ま。今日はどう…して、こ、こちらに…いらっしゃいました…の、です…か?」
「なあに不慮の事故で怪我をした可愛い妹のお見舞いだ。どうした?なんで震えている。
ハッハハ、おかしな妹だな見舞いに来た優しい兄を見て震えるなんて。それとも右手首の切断という些細な怪我が痛いのか?」
手首の切断を些細だと言い切る兄は、私の反応を楽しんでいるようだ。ここで怒りに身を任せたらきっと…。
「もう、だ、大丈夫で…ございま、す」
私はあの現場で兄に取り押さえられた後、『優秀で品行方正だけど私には甘い兄』と見縊っていた人の真の姿を知ることになった。
兄は優秀で冷静沈着なだけでなく『王族とはこうあるべき』という冷酷な王族そのものだった。
可哀想な妹への情けなど一切持ってなかった。
---あの人は鬼だわ。
騎士団長に右手首を切り落とされ泣き叫び助けを求める妹の私に『それで済んで良かったな』と言い捨て、淡々とこれからの処遇を告げた後、私の耳元で嬉しそうな声音で囁いた。
『お前はもう終わりだ。これ以上手を煩わせるな。大人しく出来ないのならまたどこかを無くす事になる。まあ人間四肢を失ってもちゃんと処置さえすれば生きられるから安心しろ。
っふ、試してみるか…?』
『えっ‥本気…な‥の?』
まさかと思って見た兄の顔には、温かみが一切ないぞっとするような恐ろしい悪魔の微笑みが浮かんでいた。
---いや、いや…怖い。正気じゃ‥ない!
私は大人しく従うしかなかった。
でも王宮で父上と母上に泣きつけば何とかなるとその時は考えていた。
だが私の犯した罪の証拠を兄から見せられた父上は『愚かなことを』と言って私に背を向けた。母上に至っては会うことすら許されていない。
第二王女の私は完全に見捨てられてしまった。
『なりません。これ以上の薬の摂取はお体に障ります。アイラ王女様どうかご辛抱ください』
『私に死ねって言うの!この役立たずがっ』
ガッシャーン!!
喚き散らす甲高い声、物が割れる音、必死に宥める医師や侍女の声。
キアヌ第一王子がアイラ王女のいる部屋に入ると、その耳には早速王女の甲高い罵声が飛び込んでくる。
失った右手首の痛みに苦しんでいる王女はまだ兄である第一王子が部屋に入ってきたことに気づいてもいない。
残った左手でベットの脇に置いてある水差しを持ち医師に投げつけようとするが、利き手ではない手ではそれも叶わず、水差しは床にぶつかり砕け散る。
パリーーン…。
片付けをしようとした侍女達が第一王子の存在に気づき慌てて礼を取ると、暴れていた王女もやっと兄の存在に気づき顔を青ざめ、ガタガタ震え始める。
---ヒッ!お、おに、い様…。
「どうだい調子は?アイラ」
キアヌ第一王子が優しく声を掛けているが、震えは酷くなるばかりで止まることはない。
「お、お兄さ…ま。今日はどう…して、こ、こちらに…いらっしゃいました…の、です…か?」
「なあに不慮の事故で怪我をした可愛い妹のお見舞いだ。どうした?なんで震えている。
ハッハハ、おかしな妹だな見舞いに来た優しい兄を見て震えるなんて。それとも右手首の切断という些細な怪我が痛いのか?」
手首の切断を些細だと言い切る兄は、私の反応を楽しんでいるようだ。ここで怒りに身を任せたらきっと…。
「もう、だ、大丈夫で…ございま、す」
私はあの現場で兄に取り押さえられた後、『優秀で品行方正だけど私には甘い兄』と見縊っていた人の真の姿を知ることになった。
兄は優秀で冷静沈着なだけでなく『王族とはこうあるべき』という冷酷な王族そのものだった。
可哀想な妹への情けなど一切持ってなかった。
---あの人は鬼だわ。
騎士団長に右手首を切り落とされ泣き叫び助けを求める妹の私に『それで済んで良かったな』と言い捨て、淡々とこれからの処遇を告げた後、私の耳元で嬉しそうな声音で囁いた。
『お前はもう終わりだ。これ以上手を煩わせるな。大人しく出来ないのならまたどこかを無くす事になる。まあ人間四肢を失ってもちゃんと処置さえすれば生きられるから安心しろ。
っふ、試してみるか…?』
『えっ‥本気…な‥の?』
まさかと思って見た兄の顔には、温かみが一切ないぞっとするような恐ろしい悪魔の微笑みが浮かんでいた。
---いや、いや…怖い。正気じゃ‥ない!
私は大人しく従うしかなかった。
でも王宮で父上と母上に泣きつけば何とかなるとその時は考えていた。
だが私の犯した罪の証拠を兄から見せられた父上は『愚かなことを』と言って私に背を向けた。母上に至っては会うことすら許されていない。
第二王女の私は完全に見捨てられてしまった。
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