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1-8 家紋
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ジュリアン侯爵が御馳走してくれた料理はそれは素晴らしい味だった。今まで味わった事もない肉厚でジューシーなステーキ。焼きたてのテーブルパンに彩の美しいサラダ、透明で透き通ったオニオンスープは絶妙な味加減で、極めつけはデザートだった。赤ワインで甘く煮詰めたリンゴの上にはアイスクリームが添えられ、正に極上の味で、私は夢のようなひと時を過ごす事が出来た。
本来なら我が食卓にもこのような豪勢な料理が並ぶのだが、それらを食する事が出来るのは父と母、そしてカサンドラだけであり、私は同じ食卓に着いているにもかかわらず使用人たちが食べている賄い料理だったのである。
「ごちそうさまでした、ジュリアン様。本当に美味しい料理でした。」
全ての食事を終えた後、満面の笑みを浮かべながら私が言うと、ジュリアン侯爵もニコニコしながら言った。
「いや、こちらこそ素晴らしい時間を過ごす事が出来ましたよ。いつも昼食は1人で食べていたので、誰かと一緒に食べるのは本当に久しぶりの事でした。貴女の食事をしている姿は本当に幸せそうで見ているこちらも楽しくなってきましたよ。」
その言葉を聞き、思わず耳まで真っ赤になってしまった。失敗してしまった・・普段あまりにも粗末な食事ばかりしていたので、がつがつ食べてしまい、侯爵の前で恥ずかしい姿をさらけ出してしまったようだ。
「あ、あの・・お見苦しい姿を見せてしまい、も、申し訳ございませんでした・・・。」
恥ずかしく、消え入りそうな声で謝罪するもジュリアン侯爵は首を振った。
「何をおっしゃるのですか?妙にかしこまった姿で食事をするよりも、自然体で食べる姿の方がむしろ好感を持てますよ?また・・・是非ご一緒に食事をでも如何でしょうか?」
「え・・・・?」
私は耳を疑った。ま、又・・このような豪華な食事を口にするチャンスが・・?
しかし、私は慌てて首を振った。図々しい女には見られたくなかったからだ。
「いいえ、そんな・・・一度だけでもう十分です。何故なら私にはジュリアン様にお返し出来る物が何一つないのですから。」
すると侯爵は言った。
「何をおっしゃるのですか?貴女には素晴らしい才能があるではありませんか?絵を描くと言う才能が。なので、私に今度何か貴女の得意な絵を描いて・・・プレゼントに頂けないでしょうか?それをお礼代わりにしてください。」
何所まで紳士的な侯爵の態度に私はすっかり舞い上がってしまった。
「は、はい・・私の絵でよければ・・。」
「よし、では話もまとまった事ですし・・。ご自宅は何所ですか?送らせて頂きますよ。」
「え・・・ですが・・・。」
思わず言いよどむと、ジュリアン侯爵は腕時計を見た。
「ライザ、もう午後3時になるのですよ。家の方が心配しているのでは?見た処・・貴女も貴族の女性の様ですし。」
古めかしいドレスを着てはいるが、私が貴族令嬢であることを見抜いたようだ。
しかし・・・私が侯爵と一緒に帰宅したら、屋敷中で何と言われるか・・。
返事に迷っていると、侯爵は立ち上がった。
「さ、参りましょう。」
そして右手を差し出して来た。
「は、はい・・・よろしくお願い致します。」
私は覚悟を決め、ジュリアン侯爵の右手を取った。
一頭立ての立派な馬車に揺られ、私は屋敷へと帰って来た。
「おや・・・この家紋は・・・?」
門に辿り着くと侯爵は眉をひそめた。
「え?ジュリアン様は・・我が家紋を御存じなのですか?」
馬車から降り立った私は公爵に尋ねた。
「ええ、勿論です。この家紋はシュナイダー家の家紋ですよね?名門ではありませんか?」
そしてじっと私を見つめた。
ああ・・・きっと侯爵は名門の家紋を持つ娘がこのようなみすぼらしいドレスを着ているなんて・・・と思ったに違いない。
「あ、あの・・・ジュリアン様。実は・・・。」
言いかけた処へ、突然名前を呼ばれた。
「ライザッ!」
振り向くと、息せき切った母が駆け寄って来た。
本来なら我が食卓にもこのような豪勢な料理が並ぶのだが、それらを食する事が出来るのは父と母、そしてカサンドラだけであり、私は同じ食卓に着いているにもかかわらず使用人たちが食べている賄い料理だったのである。
「ごちそうさまでした、ジュリアン様。本当に美味しい料理でした。」
全ての食事を終えた後、満面の笑みを浮かべながら私が言うと、ジュリアン侯爵もニコニコしながら言った。
「いや、こちらこそ素晴らしい時間を過ごす事が出来ましたよ。いつも昼食は1人で食べていたので、誰かと一緒に食べるのは本当に久しぶりの事でした。貴女の食事をしている姿は本当に幸せそうで見ているこちらも楽しくなってきましたよ。」
その言葉を聞き、思わず耳まで真っ赤になってしまった。失敗してしまった・・普段あまりにも粗末な食事ばかりしていたので、がつがつ食べてしまい、侯爵の前で恥ずかしい姿をさらけ出してしまったようだ。
「あ、あの・・お見苦しい姿を見せてしまい、も、申し訳ございませんでした・・・。」
恥ずかしく、消え入りそうな声で謝罪するもジュリアン侯爵は首を振った。
「何をおっしゃるのですか?妙にかしこまった姿で食事をするよりも、自然体で食べる姿の方がむしろ好感を持てますよ?また・・・是非ご一緒に食事をでも如何でしょうか?」
「え・・・・?」
私は耳を疑った。ま、又・・このような豪華な食事を口にするチャンスが・・?
しかし、私は慌てて首を振った。図々しい女には見られたくなかったからだ。
「いいえ、そんな・・・一度だけでもう十分です。何故なら私にはジュリアン様にお返し出来る物が何一つないのですから。」
すると侯爵は言った。
「何をおっしゃるのですか?貴女には素晴らしい才能があるではありませんか?絵を描くと言う才能が。なので、私に今度何か貴女の得意な絵を描いて・・・プレゼントに頂けないでしょうか?それをお礼代わりにしてください。」
何所まで紳士的な侯爵の態度に私はすっかり舞い上がってしまった。
「は、はい・・私の絵でよければ・・。」
「よし、では話もまとまった事ですし・・。ご自宅は何所ですか?送らせて頂きますよ。」
「え・・・ですが・・・。」
思わず言いよどむと、ジュリアン侯爵は腕時計を見た。
「ライザ、もう午後3時になるのですよ。家の方が心配しているのでは?見た処・・貴女も貴族の女性の様ですし。」
古めかしいドレスを着てはいるが、私が貴族令嬢であることを見抜いたようだ。
しかし・・・私が侯爵と一緒に帰宅したら、屋敷中で何と言われるか・・。
返事に迷っていると、侯爵は立ち上がった。
「さ、参りましょう。」
そして右手を差し出して来た。
「は、はい・・・よろしくお願い致します。」
私は覚悟を決め、ジュリアン侯爵の右手を取った。
一頭立ての立派な馬車に揺られ、私は屋敷へと帰って来た。
「おや・・・この家紋は・・・?」
門に辿り着くと侯爵は眉をひそめた。
「え?ジュリアン様は・・我が家紋を御存じなのですか?」
馬車から降り立った私は公爵に尋ねた。
「ええ、勿論です。この家紋はシュナイダー家の家紋ですよね?名門ではありませんか?」
そしてじっと私を見つめた。
ああ・・・きっと侯爵は名門の家紋を持つ娘がこのようなみすぼらしいドレスを着ているなんて・・・と思ったに違いない。
「あ、あの・・・ジュリアン様。実は・・・。」
言いかけた処へ、突然名前を呼ばれた。
「ライザッ!」
振り向くと、息せき切った母が駆け寄って来た。
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