13 / 58
1-13 初めての焼き立てパン
しおりを挟む
食堂を出た私は一度自室へ戻る事にした。どうせ町へ食事に出るならスケッチブックを持って行こうと思ったのだ。
食事を終えた後、何処か景色の良い場所を探して風景画を描けば・・・ジュリアン様に絵を買い取って貰えるかもしれない。
何せ前金として金貨を1枚貰っているのだから1枚でも多くのイラストを描いて満足して貰えるように頑張らなくては。
部屋に到着した私は早速机の棚からスケッチブックを取り出し、引き出しから色鉛筆を取り出すと中身をチェックした。
「・・・・」
すっかり短くなった12色の色鉛筆。これだけの色では・・・大したものは描けない。
「そうだわ、町の画材屋さんで・・ついでに色鉛筆を買いましょう。後は・・洋裁店に行って・・ドレスの服飾品を買って・・・。」
元々私があのドレスのイラストを描いたのは母のお古のドレスを自分で今の流行りのドレス風にリメイクするつもりだったからだ。その為には洋裁店に行って服飾品を買ってくる必要がある。私はメモ帳を引き出しから出すと買い物リストを作った。
何処の店で何を買うか・・細かく決めると、メモ帳をポケットにしまい、布袋にスケッチブックと色鉛筆をしまい、町へと向かった。
屋敷を出て歩き始めて20分・・・
私は下町へとやって来た。時刻はまだ9時を過ぎたばかりだったが、既に町の中心部にある広場には市場が並び、買い物客でごった返しになっていた。
「さて・・・まずは朝食を食べに行こうかしら・・。」
私は辺りをキョロキョロと見渡し、可愛らしい緑のとんがり屋根の建物が目に入った。店の軒先には看板が出され、そこに食パンやテーブルパンのイラストが描かれている。
「きっとあの店はパン屋ね・・・あそこでパンを買って公園のベンチで食べるのもいいかもしれないわね。」
そのパン屋は人気があるらしく、店の外にまで行列が出来ていた。恐らくパンならばそれ程高い金額ではないだろう。
今日は他にも画材を買ったり、ドレスをリメイクする為の服飾品も買わなくてはならない。少しでも節約できるところは節約をして置かないとならないのだから。
私は早速行列の出来ているパン屋に並び、順番が来るまでおとなしく待っていた。
15分程並び、ようやく店の中へと入ることが出来た。
店の中に入った途端、小麦の香ばしい匂いが店の中に漂っており、私の食欲が刺激されてしまった。棚に並べられた大小さまざまなパンはどれも美味しそうで、私は散々迷った挙句、チーズが練りこまれたハード生地のパンに、ドライイチジクが練りこまれたテーブルパン、そして甘い蜂蜜がたっぷりしみ込んだフワフワのパンを買う事にした。
紙袋に入れて手渡されたパンの値段は全部合わせても銅貨3枚分。
流石に金貨を見せた時にはお店の人に引かれてしまったけれども、持ち合わせが金貨1枚しかなかったから仕方が無い。
その次に私はパン屋の隣にテント販売しているドリンクスタンドでホットミルクを買い、こぼさないように気を付けながら広場の奥にある小さな公園のベンチに座り、焼きたてのパンを口に入れた。
「何これ・・・!すっごく美味しい・・・っ!」
私は夢中で食べ続け・・・あっという間に買ってきた全てのパンを食べてしまった。
「ふう~美味しかった・・・・。」
ホットミルクの残りを飲みながら、私は思った。
こんな下町にあるパンの美味しさに舌鼓を打つなんて・・・伯爵令嬢という身分にありながら、いかに私は粗末な料理を食べさせられてきたのかと思うと、流石に疑問が沸いて来た。
何故、私1人があのような目に遭わされなければならないのだろう?学校にも行かせて貰えず、ドレスは母のお古ばかり、そして極めつけは明らかに差別された粗末な食事・・・。
「決めたわ・・・。私ももう18歳、今年成人を迎えたのだから・・もうこれ以上あの家にいる必要は無いわ。お金が溜まったら・・・絶対にあの家を出るわ。あの家にいても私は永久に幸せにはなれないもの。」
グッと手を握りしめるとベンチから立ちあがった。
次の目的地は決まっている。画材屋さんへ行って、色鉛筆とスケッチブックを買いに行くのだ。
今までの私はお金を貰える立場では無かったから、必要最低限の品しか買って貰えなかった。けれど私は今、初めて自分の趣味で欲しいものを買える身分に慣れたのだ。
「さて、それじゃ画材屋さんに行こうかしら・。」
そして私は画材屋さんへと足を向けた―。
食事を終えた後、何処か景色の良い場所を探して風景画を描けば・・・ジュリアン様に絵を買い取って貰えるかもしれない。
何せ前金として金貨を1枚貰っているのだから1枚でも多くのイラストを描いて満足して貰えるように頑張らなくては。
部屋に到着した私は早速机の棚からスケッチブックを取り出し、引き出しから色鉛筆を取り出すと中身をチェックした。
「・・・・」
すっかり短くなった12色の色鉛筆。これだけの色では・・・大したものは描けない。
「そうだわ、町の画材屋さんで・・ついでに色鉛筆を買いましょう。後は・・洋裁店に行って・・ドレスの服飾品を買って・・・。」
元々私があのドレスのイラストを描いたのは母のお古のドレスを自分で今の流行りのドレス風にリメイクするつもりだったからだ。その為には洋裁店に行って服飾品を買ってくる必要がある。私はメモ帳を引き出しから出すと買い物リストを作った。
何処の店で何を買うか・・細かく決めると、メモ帳をポケットにしまい、布袋にスケッチブックと色鉛筆をしまい、町へと向かった。
屋敷を出て歩き始めて20分・・・
私は下町へとやって来た。時刻はまだ9時を過ぎたばかりだったが、既に町の中心部にある広場には市場が並び、買い物客でごった返しになっていた。
「さて・・・まずは朝食を食べに行こうかしら・・。」
私は辺りをキョロキョロと見渡し、可愛らしい緑のとんがり屋根の建物が目に入った。店の軒先には看板が出され、そこに食パンやテーブルパンのイラストが描かれている。
「きっとあの店はパン屋ね・・・あそこでパンを買って公園のベンチで食べるのもいいかもしれないわね。」
そのパン屋は人気があるらしく、店の外にまで行列が出来ていた。恐らくパンならばそれ程高い金額ではないだろう。
今日は他にも画材を買ったり、ドレスをリメイクする為の服飾品も買わなくてはならない。少しでも節約できるところは節約をして置かないとならないのだから。
私は早速行列の出来ているパン屋に並び、順番が来るまでおとなしく待っていた。
15分程並び、ようやく店の中へと入ることが出来た。
店の中に入った途端、小麦の香ばしい匂いが店の中に漂っており、私の食欲が刺激されてしまった。棚に並べられた大小さまざまなパンはどれも美味しそうで、私は散々迷った挙句、チーズが練りこまれたハード生地のパンに、ドライイチジクが練りこまれたテーブルパン、そして甘い蜂蜜がたっぷりしみ込んだフワフワのパンを買う事にした。
紙袋に入れて手渡されたパンの値段は全部合わせても銅貨3枚分。
流石に金貨を見せた時にはお店の人に引かれてしまったけれども、持ち合わせが金貨1枚しかなかったから仕方が無い。
その次に私はパン屋の隣にテント販売しているドリンクスタンドでホットミルクを買い、こぼさないように気を付けながら広場の奥にある小さな公園のベンチに座り、焼きたてのパンを口に入れた。
「何これ・・・!すっごく美味しい・・・っ!」
私は夢中で食べ続け・・・あっという間に買ってきた全てのパンを食べてしまった。
「ふう~美味しかった・・・・。」
ホットミルクの残りを飲みながら、私は思った。
こんな下町にあるパンの美味しさに舌鼓を打つなんて・・・伯爵令嬢という身分にありながら、いかに私は粗末な料理を食べさせられてきたのかと思うと、流石に疑問が沸いて来た。
何故、私1人があのような目に遭わされなければならないのだろう?学校にも行かせて貰えず、ドレスは母のお古ばかり、そして極めつけは明らかに差別された粗末な食事・・・。
「決めたわ・・・。私ももう18歳、今年成人を迎えたのだから・・もうこれ以上あの家にいる必要は無いわ。お金が溜まったら・・・絶対にあの家を出るわ。あの家にいても私は永久に幸せにはなれないもの。」
グッと手を握りしめるとベンチから立ちあがった。
次の目的地は決まっている。画材屋さんへ行って、色鉛筆とスケッチブックを買いに行くのだ。
今までの私はお金を貰える立場では無かったから、必要最低限の品しか買って貰えなかった。けれど私は今、初めて自分の趣味で欲しいものを買える身分に慣れたのだ。
「さて、それじゃ画材屋さんに行こうかしら・。」
そして私は画材屋さんへと足を向けた―。
77
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒―
私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。
「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」
その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。
※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています
虐げられた人生に疲れたので本物の悪女に私はなります 番外編<悪女の娘>
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
私の母は実母を陥れた悪女でした
<モンタナ事件から18年後の世界の物語>
私の名前はアンジェリカ・レスタ― 18歳。判事の父と秘書を務める母ライザは何故か悪女と呼ばれている。その謎を探るために、時折どこかへ出かける母の秘密を探る為に、たどり着いた私は衝撃の事実を目の当たりにする事に―!
※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
笑い方を忘れた令嬢
Blue
恋愛
お母様が天国へと旅立ってから10年の月日が流れた。大好きなお父様と二人で過ごす日々に突然終止符が打たれる。突然やって来た新しい家族。病で倒れてしまったお父様。私を嫌な目つきで見てくる伯父様。どうしたらいいの?誰か、助けて。
【完結】悪役令嬢な私が、あなたのためにできること
夕立悠理
恋愛
──これから、よろしくね。ソフィア嬢。
そう言う貴方の瞳には、間違いなく絶望が、映っていた。
女神の使いに選ばれた男女は夫婦となる。
誰よりも恋し合う二人に、また、その二人がいる国に女神は加護を与えるのだ。
ソフィアには、好きな人がいる。公爵子息のリッカルドだ。
けれど、リッカルドには、好きな人がいた。侯爵令嬢のメリアだ。二人はどこからどうみてもお似合いで、その二人が女神の使いに選ばれると皆信じていた。
けれど、女神は告げた。
女神の使いを、リッカルドとソフィアにする、と。
ソフィアはその瞬間、一組の恋人を引き裂くお邪魔虫になってしまう。
リッカルドとソフィアは女神の加護をもらうべく、夫婦になり──けれど、その生活に耐えられなくなったリッカルドはメリアと心中する。
そのことにショックを受けたソフィアは悪魔と契約する。そして、その翌日。ソフィアがリッカルドに恋をした、学園の入学式に戻っていた。
【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される
風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。
しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。
そんな時、隣国から王太子がやって来た。
王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。
すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。
アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。
そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。
アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。
そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。
【完結】私なりのヒロイン頑張ってみます。ヒロインが儚げって大きな勘違いですわね
との
恋愛
レトビア公爵家に養子に出されることになった貧乏伯爵家のセアラ。
「セアラを人身御供にするって事? おじ様、とうとう頭がおかしくなったの?」
「超現実主義者のお父様には関係ないのよ」
悲壮感いっぱいで辿り着いた公爵家の酷さに手も足も出なくて悩んでいたセアラに声をかけてきた人はもっと壮大な悩みを抱えていました。
(それって、一個人の問題どころか⋯⋯)
「これからは淑女らしく」ってお兄様と約束してたセアラは無事役割を全うできるの!?
「お兄様、わたくし計画変更しますわ。兎に角長生きできるよう経験を活かして闘いあるのみです!」
呪いなんて言いつつ全然怖くない貧乏セアラの健闘?成り上がり?
頑張ります。
「問題は⋯⋯お兄様は意外なところでポンコツになるからそこが一番の心配ですの」
ーーーーーー
タイトルちょっぴり変更しました(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾
さらに⋯⋯長編に変更しました。ストックが溜まりすぎたので、少しスピードアップして公開する予定です。
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
体調不良で公開ストップしておりましたが、完結まで予約致しました。ᕦ(ò_óˇ)ᕤ
ご一読いただければ嬉しいです。
R15は念の為・・
【完結】彼を幸せにする十の方法
玉響なつめ
恋愛
貴族令嬢のフィリアには婚約者がいる。
フィリアが望んで結ばれた婚約、その相手であるキリアンはいつだって冷静だ。
婚約者としての義務は果たしてくれるし常に彼女を尊重してくれる。
しかし、フィリアが望まなければキリアンは動かない。
婚約したのだからいつかは心を開いてくれて、距離も縮まる――そう信じていたフィリアの心は、とある夜会での事件でぽっきり折れてしまった。
婚約を解消することは難しいが、少なくともこれ以上迷惑をかけずに夫婦としてどうあるべきか……フィリアは悩みながらも、キリアンが一番幸せになれる方法を探すために行動を起こすのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる