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2-5 クローゼットの中で
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息を切らせながら私は屋敷迄走り・・勉強部屋の見える中庭へと足を踏み入れた。この中庭から見える左から2番目の部屋・・・そこが私の勉強部屋だ。この部屋はあまり太陽も差し込まず、少しかび臭い部屋だ。そんな部屋をあてがわれている私は何て哀れなんだろうと我ながら思ってしまった。そしてそれを当たり前と思い、受け入れて来た自分は今迄どれ程愚かだったのだろうと思う。
さて・・・歴史の家庭教師はもう私の部屋に来ているのだろうか・・・?私はゆっくりと部屋へ近付き、窓から中を覗きこんだ。
すると・・・やはり思った通り、母と家庭教師が背を向けて部屋の中にいる。窓がぴっちり占められているので2人の会話は何を話しているのか聞き取れないが、母は今迄見た事の無い位の笑顔で家庭教師を見上げている。目は潤み、頬を赤らめたその顔は・・・まるで男を誘惑する完全な1人の女の顔の様に私の目には移った。
それを見た途端、私の胸に一気に嫌悪感が走る。
家庭教師はこちらに背を向けているのでどのような表情を浮かべているのか伺い知る事は出来ないが、あの家庭教師は優男である。恐らく甘い笑みを浮かべて母にお金をねだっているに違いない。
しかし・・・母がただ家庭教師にしなだれかかっているだけでは浮気現場とは言えない。もっと決定的な証拠を掴まなければ・・・。
私は2人の動向を窓の外から注意深く伺っていた。
すると、母の口が何やら動いた。私には読唇術の心得は無いが、母が何を言っているのかは容易に想像がついた。
『私の部屋へ行きましょう。』
恐らく母はそう言ったに違いない。すると案の定、母は勉強部屋を出て行った。
その後を家庭教師が続く。
母の部屋は1階の中庭に面した右から2番目の日当たりの良い部屋である。私は急いで中庭をつっ切ると母の部屋の窓を目指した。中庭からの方が部屋の廊下を使うよりもずっと私の勉強部屋から母の部屋まで近いのだ。
一気に中庭を走りぬけ、祈るよう気持ちで母の部屋の窓を押すと、キイイと音を立てて窓が開いた。
よし!私は・・運がいいわっ!母の部屋への侵入が成功した私は急いでクローゼットのドレスの奥に隠れた。ここなら突然クローゼットを開けられてもハンガーにぶら下がっている大量の母のドレスに隠れて私の姿がみつかる事は無いだろう。
後は・・・どうか私の思惑通りに母と家庭教師が現れますように・・・!
祈る気持ちで隠れいてると、カチャリとドアが開かれる音が聞こえた。
「あら・・・窓が開いているわ。どうしてかしら?」
母の声だっ!
そしてキイイと窓の閉まる音が聞こえた。
「どうしましたか?マルグリット。」
あの声は・・・家庭教師だ!しかも母の名前を呼んでいる。やはり間違いない・・・この男は母の愛人だ!
「いえ、窓が開いていたのよ・・・大丈夫。今窓を閉めたから。ついでにカーテンも閉めましょう。」
再び母の声が聞こえ、シャッ!シャッ!とカーテンを閉める音が聞こえ・・・やがて艶っぽい母の声が聞こえてきた。
「トーマス・・・貴方と会えない1週間は・・・長すぎるわ・・。」
その声を聞いた私は背筋がゾッとした。未だかつて母のあのような声を聞いた事が無かったからだ。
「ああ・・・マルグリット、私もです・・・。」
母の名を呼ぶ家庭教師の声が聞こえてきた。
やがて・・・衣擦れの音と、ベッドが軋む音に男女の艶っぽい声が聞こえてきた。
私はそっとクローゼットを覗きこむと、母のベッドの上に掛けられた布団が盛り上がり、何やらもぞもぞと蠢いている。
「間違い無いわね・・・。」
私は息を吸い込むと、わざと勢いよくクローゼットを開け放った―。
さて・・・歴史の家庭教師はもう私の部屋に来ているのだろうか・・・?私はゆっくりと部屋へ近付き、窓から中を覗きこんだ。
すると・・・やはり思った通り、母と家庭教師が背を向けて部屋の中にいる。窓がぴっちり占められているので2人の会話は何を話しているのか聞き取れないが、母は今迄見た事の無い位の笑顔で家庭教師を見上げている。目は潤み、頬を赤らめたその顔は・・・まるで男を誘惑する完全な1人の女の顔の様に私の目には移った。
それを見た途端、私の胸に一気に嫌悪感が走る。
家庭教師はこちらに背を向けているのでどのような表情を浮かべているのか伺い知る事は出来ないが、あの家庭教師は優男である。恐らく甘い笑みを浮かべて母にお金をねだっているに違いない。
しかし・・・母がただ家庭教師にしなだれかかっているだけでは浮気現場とは言えない。もっと決定的な証拠を掴まなければ・・・。
私は2人の動向を窓の外から注意深く伺っていた。
すると、母の口が何やら動いた。私には読唇術の心得は無いが、母が何を言っているのかは容易に想像がついた。
『私の部屋へ行きましょう。』
恐らく母はそう言ったに違いない。すると案の定、母は勉強部屋を出て行った。
その後を家庭教師が続く。
母の部屋は1階の中庭に面した右から2番目の日当たりの良い部屋である。私は急いで中庭をつっ切ると母の部屋の窓を目指した。中庭からの方が部屋の廊下を使うよりもずっと私の勉強部屋から母の部屋まで近いのだ。
一気に中庭を走りぬけ、祈るよう気持ちで母の部屋の窓を押すと、キイイと音を立てて窓が開いた。
よし!私は・・運がいいわっ!母の部屋への侵入が成功した私は急いでクローゼットのドレスの奥に隠れた。ここなら突然クローゼットを開けられてもハンガーにぶら下がっている大量の母のドレスに隠れて私の姿がみつかる事は無いだろう。
後は・・・どうか私の思惑通りに母と家庭教師が現れますように・・・!
祈る気持ちで隠れいてると、カチャリとドアが開かれる音が聞こえた。
「あら・・・窓が開いているわ。どうしてかしら?」
母の声だっ!
そしてキイイと窓の閉まる音が聞こえた。
「どうしましたか?マルグリット。」
あの声は・・・家庭教師だ!しかも母の名前を呼んでいる。やはり間違いない・・・この男は母の愛人だ!
「いえ、窓が開いていたのよ・・・大丈夫。今窓を閉めたから。ついでにカーテンも閉めましょう。」
再び母の声が聞こえ、シャッ!シャッ!とカーテンを閉める音が聞こえ・・・やがて艶っぽい母の声が聞こえてきた。
「トーマス・・・貴方と会えない1週間は・・・長すぎるわ・・。」
その声を聞いた私は背筋がゾッとした。未だかつて母のあのような声を聞いた事が無かったからだ。
「ああ・・・マルグリット、私もです・・・。」
母の名を呼ぶ家庭教師の声が聞こえてきた。
やがて・・・衣擦れの音と、ベッドが軋む音に男女の艶っぽい声が聞こえてきた。
私はそっとクローゼットを覗きこむと、母のベッドの上に掛けられた布団が盛り上がり、何やらもぞもぞと蠢いている。
「間違い無いわね・・・。」
私は息を吸い込むと、わざと勢いよくクローゼットを開け放った―。
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