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エピローグ 醜い悪役令嬢は美しくなって幸せを手に入れました
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「う~ん・・。」
突然意識が目覚めてパチリと目が覚めた私はムクリと起き上がり、身体が半分透けていることに気が付いた。
「あ・・・身体が・・透けている・・。
でも不思議と恐怖は感じなかった。直観的に思ったのだ。ああ・・・きっと私は今夜この世界から消えるのだと―。
ふと前方を見ると、キョロキョロとあたりを見渡しているロザリアの姿があった。そこで私は彼女に近付くと声をかけた。
「お待たせ。」
「あ・・・り、里香さん・・・身体が透き通って・・・。」
ロザリアが泣きそうな顔をしている。
「うん・・そうなんだよね。さっき貴女と話した直後に意識が無くなって・・そして気づいたらロザリアがいたのよ。私・・多分今夜消えるんだと思う。役目を終えたって事だよね?」
私は笑ってロザリアに言うものの・・・内心寂しさがあった。いつの間にかロザリアが自分の妹のように感じていたからだ。・・すっかり情がうつっていたのだ。
「り、里香さん・・・わ、私・・・・。」
「こら、そんな顔しないの。やっと幸せになったんでしょう?」
涙を浮かべるロザリアに私はこつんとおでこをこずいた。
「り、里香さん・・・。」
何だかロザリアの泣き顔を見ているとこちらも貰い泣きしてしまいそうになる。だからあえて私は明るく言った。
「お幸せにね。」
「え?」
「最初・・この身体に憑依させられた時は・・・すごく自分の境遇を恨んだけど・・、でもなかなかこの世界を楽しめたわよ?ありがとう。」
そう言って私は半分透けた身体でギュッとロザリアを抱きしめた。
「う・・・り、里香さん・・・!」
ついにロザリアは我慢の限界に来たのか、私にしがみつくとワンワン泣き出した。
「泣かないの、ほら・・幸せになるんでしょう・・?」
私はロザリアの頭を撫でながら言う。するとまたより一層身体が透けて、ついにロザリアに触れる事が出来なくなってしまった。
「あ・・・もう、限界なのかも・・・・。」
ほとんど消えかかった手を見ながら呟くと。ロザリアは泣きじゃくった。
「そんな・・・!まだ消えないで下さいよっ!私・・・私、まだ何も出来ないことたくさんあるのに!私にはまだ里香さんが必要なのにっ!お願い、私を置いていかないで下さいっ!」
堰を切ったように涙を流すロザリアに私は言った。
「大丈夫だよ、ロザリアなら・・もう私がいなくたって1人で平気だよ。それに素敵な人が出来たじゃない。自信持ちなよ。だから、泣くんじゃないの。」
言いながら私の意識がどんどん遠くなっていくのが自分でも分かる。
「そんな・・・里香さんっ!」
もうロザリアの姿も見えなくなってきた。でも、最後にこれだけは言わなくちゃ。
「さよなら、ロザリア。」
そして私の意識は真っ白になった―。
****
うっうっうっ・・・
誰かがそばで泣いている・・。その声はすごく悲し気だった・・・。
う~ん・・。泣いたら駄目だって言ったのに・・どんどん泣き声は大きくなってくる。
「・・・うう・・姉ちゃん・・・目ぇ、開けてくれよ・・・。」
「お姉ちゃん・・・お願い、目を覚ましてよ・・・!」
え?姉ちゃん・・・?
突然意識が覚醒すると私はベッドに横になっていて、双子の弟妹がベッドに縋って泣いていた。
「え・・・?湊・・・唯・・・?」
起き上がって声をかける私。
「お姉ちゃん!」
「目・・覚めたのかっ?!」
顔を上げてこちらを見た2人の目は・・泣きぬれて真っ赤になっていた。
「うわあああーん!お姉ちゃーん!」
「姉ちゃん!」
気付けば私は泣きじゃくる2人に抱きしめられていた―。
****
聞いた話によると、私は蓋が外れていた深さ2m程のマンホールの穴に落ちて・・偶然通りかかった通行人の通報で助け出され・・病院に運ばれて5日間意識を失っていたらしい。
「それにしても5日かぁ・・・私が見ていたのは夢だったのかなぁ・・?」
今日、退院してきたばかりの私はリビングでコーヒーを飲みながら呟いていた。
「え?何が夢なの?」
そこへ洗濯を干し終えた唯が戻ってきた。
「ううん、何でもない。ところで湊ー、本当に料理手伝わなくていいの?」
私はキッチンでエプロンを締めて料理をしている湊に声を掛けた。
「ああ、大丈夫だから・・・あんまこっち見んなよ。・・・恥ずかしいだろう?」
湊は顔を赤らめながらフライパンでジュウジュウ炒め物をしている。すると唯が耳元で囁いてきた。
「ふふ・・・湊ねぇ・・・お姉ちゃんが目を覚ましたら真っ先に手料理を作って食べさせてやるって言ってたんだからね?」
「え?!嘘っ!」
私は唯の言葉に驚き、湊を見つめた。
双子の可愛い弟妹たちは、私が目を覚まさなくなったことで、すっかり改心していた。
私は今の生活に満足だった。だけど・・・何故か心にぽかりと穴が開いた空虚感を感じる。これは一体何だろう・・・。何か肝心な事を忘れている気がする・・。
その時、床の上に一冊の本が落ちていることに気が付いた。
「ん・・?何だろう、これ・・。」
手に取ると唯が言った。
「あ~それね・・・友達がくれた本なんだよね。でもまだ読んでいないんだけど・・。」
「ふ~ん・・・。」
私はその本を手に取り・・・息を飲んだ。
『醜い悪役令嬢は美しくなって幸せを手に入れました』
それが本のタイトル名だった。何故だろう?何故・・こんなにも胸がドキドキするのだろう?震えながら・・・パラパラと本をめくっていった。
お話の中身は単純だった。太っていて、頭もよくない貴族令嬢が一念発起してダイエットや勉強を頑張り、最後は幸せをに入れる話。そして主人公の名は・・・。
「ロ・・・ロザリア・・・。」
そうだ!あの2人・・・最後は一体どうなったんだろう?!私は一番最後のページをめくり・・・気づけば、目に涙が浮かんでいた。
「え?!お、お姉ちゃん・・!ど、どうしたのっ?!」
唯が驚いて声を掛けてきた。
「ううん・・・何でもない・・・よ・・。」
私は涙を流しながら返事をし・・・じっと本を見つめた。
ロザリアはリチャード皇子と結婚し、子供も沢山産まれて一生幸せに暮らしたと書かれていた。
一方、ジョバンニ親子は爵位を失い、没落していた。
そして本の一番最後のページには・・・・
『私の大切な恩人、里香さんへ捧げる』
そう、記されていた―。
<終>
突然意識が目覚めてパチリと目が覚めた私はムクリと起き上がり、身体が半分透けていることに気が付いた。
「あ・・・身体が・・透けている・・。
でも不思議と恐怖は感じなかった。直観的に思ったのだ。ああ・・・きっと私は今夜この世界から消えるのだと―。
ふと前方を見ると、キョロキョロとあたりを見渡しているロザリアの姿があった。そこで私は彼女に近付くと声をかけた。
「お待たせ。」
「あ・・・り、里香さん・・・身体が透き通って・・・。」
ロザリアが泣きそうな顔をしている。
「うん・・そうなんだよね。さっき貴女と話した直後に意識が無くなって・・そして気づいたらロザリアがいたのよ。私・・多分今夜消えるんだと思う。役目を終えたって事だよね?」
私は笑ってロザリアに言うものの・・・内心寂しさがあった。いつの間にかロザリアが自分の妹のように感じていたからだ。・・すっかり情がうつっていたのだ。
「り、里香さん・・・わ、私・・・・。」
「こら、そんな顔しないの。やっと幸せになったんでしょう?」
涙を浮かべるロザリアに私はこつんとおでこをこずいた。
「り、里香さん・・・。」
何だかロザリアの泣き顔を見ているとこちらも貰い泣きしてしまいそうになる。だからあえて私は明るく言った。
「お幸せにね。」
「え?」
「最初・・この身体に憑依させられた時は・・・すごく自分の境遇を恨んだけど・・、でもなかなかこの世界を楽しめたわよ?ありがとう。」
そう言って私は半分透けた身体でギュッとロザリアを抱きしめた。
「う・・・り、里香さん・・・!」
ついにロザリアは我慢の限界に来たのか、私にしがみつくとワンワン泣き出した。
「泣かないの、ほら・・幸せになるんでしょう・・?」
私はロザリアの頭を撫でながら言う。するとまたより一層身体が透けて、ついにロザリアに触れる事が出来なくなってしまった。
「あ・・・もう、限界なのかも・・・・。」
ほとんど消えかかった手を見ながら呟くと。ロザリアは泣きじゃくった。
「そんな・・・!まだ消えないで下さいよっ!私・・・私、まだ何も出来ないことたくさんあるのに!私にはまだ里香さんが必要なのにっ!お願い、私を置いていかないで下さいっ!」
堰を切ったように涙を流すロザリアに私は言った。
「大丈夫だよ、ロザリアなら・・もう私がいなくたって1人で平気だよ。それに素敵な人が出来たじゃない。自信持ちなよ。だから、泣くんじゃないの。」
言いながら私の意識がどんどん遠くなっていくのが自分でも分かる。
「そんな・・・里香さんっ!」
もうロザリアの姿も見えなくなってきた。でも、最後にこれだけは言わなくちゃ。
「さよなら、ロザリア。」
そして私の意識は真っ白になった―。
****
うっうっうっ・・・
誰かがそばで泣いている・・。その声はすごく悲し気だった・・・。
う~ん・・。泣いたら駄目だって言ったのに・・どんどん泣き声は大きくなってくる。
「・・・うう・・姉ちゃん・・・目ぇ、開けてくれよ・・・。」
「お姉ちゃん・・・お願い、目を覚ましてよ・・・!」
え?姉ちゃん・・・?
突然意識が覚醒すると私はベッドに横になっていて、双子の弟妹がベッドに縋って泣いていた。
「え・・・?湊・・・唯・・・?」
起き上がって声をかける私。
「お姉ちゃん!」
「目・・覚めたのかっ?!」
顔を上げてこちらを見た2人の目は・・泣きぬれて真っ赤になっていた。
「うわあああーん!お姉ちゃーん!」
「姉ちゃん!」
気付けば私は泣きじゃくる2人に抱きしめられていた―。
****
聞いた話によると、私は蓋が外れていた深さ2m程のマンホールの穴に落ちて・・偶然通りかかった通行人の通報で助け出され・・病院に運ばれて5日間意識を失っていたらしい。
「それにしても5日かぁ・・・私が見ていたのは夢だったのかなぁ・・?」
今日、退院してきたばかりの私はリビングでコーヒーを飲みながら呟いていた。
「え?何が夢なの?」
そこへ洗濯を干し終えた唯が戻ってきた。
「ううん、何でもない。ところで湊ー、本当に料理手伝わなくていいの?」
私はキッチンでエプロンを締めて料理をしている湊に声を掛けた。
「ああ、大丈夫だから・・・あんまこっち見んなよ。・・・恥ずかしいだろう?」
湊は顔を赤らめながらフライパンでジュウジュウ炒め物をしている。すると唯が耳元で囁いてきた。
「ふふ・・・湊ねぇ・・・お姉ちゃんが目を覚ましたら真っ先に手料理を作って食べさせてやるって言ってたんだからね?」
「え?!嘘っ!」
私は唯の言葉に驚き、湊を見つめた。
双子の可愛い弟妹たちは、私が目を覚まさなくなったことで、すっかり改心していた。
私は今の生活に満足だった。だけど・・・何故か心にぽかりと穴が開いた空虚感を感じる。これは一体何だろう・・・。何か肝心な事を忘れている気がする・・。
その時、床の上に一冊の本が落ちていることに気が付いた。
「ん・・?何だろう、これ・・。」
手に取ると唯が言った。
「あ~それね・・・友達がくれた本なんだよね。でもまだ読んでいないんだけど・・。」
「ふ~ん・・・。」
私はその本を手に取り・・・息を飲んだ。
『醜い悪役令嬢は美しくなって幸せを手に入れました』
それが本のタイトル名だった。何故だろう?何故・・こんなにも胸がドキドキするのだろう?震えながら・・・パラパラと本をめくっていった。
お話の中身は単純だった。太っていて、頭もよくない貴族令嬢が一念発起してダイエットや勉強を頑張り、最後は幸せをに入れる話。そして主人公の名は・・・。
「ロ・・・ロザリア・・・。」
そうだ!あの2人・・・最後は一体どうなったんだろう?!私は一番最後のページをめくり・・・気づけば、目に涙が浮かんでいた。
「え?!お、お姉ちゃん・・!ど、どうしたのっ?!」
唯が驚いて声を掛けてきた。
「ううん・・・何でもない・・・よ・・。」
私は涙を流しながら返事をし・・・じっと本を見つめた。
ロザリアはリチャード皇子と結婚し、子供も沢山産まれて一生幸せに暮らしたと書かれていた。
一方、ジョバンニ親子は爵位を失い、没落していた。
そして本の一番最後のページには・・・・
『私の大切な恩人、里香さんへ捧げる』
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