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第3章 7 意外な来客
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スカーレットとブリジットはアリオスの執務室の前に到着した。スカーレットは一度深呼吸をして呼吸を整えるとノックをした。
コンコン
「誰だ?今来客中なのだが」
部屋の中からアリオスの声が聞こえた。しかし来客中との言葉を聞いてスカーレットは慌てた。
「これは申し訳ございませんでした。まさかお客様がお見えになっていると知らずに…申し訳ございませんでした」
「ん?その声は…もしやスカーレットか?」
アリオスの意外そうな声が聞こえ、すぐにカチャリと扉が開かれた。
「!」
意外な程近くにアリオスが現れたのでスカーレットに緊張が走る。しかし、その様子に気づいた風も無く、アリオスが言った。
「スカーレット、ちょうどよい所に現れたな。実はお前たち2人の知り合いが来ており、会わせて欲しいと言っているのだ」
「え?私達にですか?」
スカーレットとブリジットは顔を見合わせた。2人にはここ『ミュゼ』では知り合いが誰もいないから誰が尋ねてきたのか皆目検討がつかなかったのだ。
「あの…私達に会いたいとおっしゃっている方とは…?」
するとアリオスは言う。
「まずは中へ入ってくれ。そうすれば誰が訪れてきたか分かるだろう」
「は、はい。分かりました…」
「失礼致します」
スカーレットとブリジットはアリオスの執務室へと足を踏み入れた。するとそこにはソファに腰掛けた品の良い服を来た年老いた老夫婦と、その2人の背後に立つのは…
「ま、まあ…!アーベルッ?!」
「アーベル様ではありませんかっ!」
なんと笑みを浮かべて2人の方を向いて立っていたのはアーベルであった。
「お久しぶりでございます。スカーレット様、ブリジット様」
黒い背広に身を包んだアーベルを見て2人は驚いた。するとアーベルの前に座っていた老夫婦が声を掛けてきた。
「おお…貴女がシュバルツ家のご令嬢でいらっしゃいますか?」
白い口髭の男性がスカーレットに声をかける。
「私達はシュバルツ家のお隣の領地に暮らすレイヤー家の者です」
「レイヤー家の方ですか…?」
その家紋にはスカーレットは聞き覚えがあった。辺境の地に住むレイヤー男爵夫妻。
子供はなく、穏やかな老夫婦でひっそりと暮らしていると聞く。
「実はシュバルツ家で執事をしていた彼を我々の執事に招いたのですよ」
老紳士は笑みを浮かべながら言う。
「まあ…そうだったのですね?」
事情を全く知らなかったスカーレットは関心したかのように返事をする。ブリジットは少しだけ話を聞いていたが、アーベルには口止めされていた。あの頃のスカーレットには全く余裕が無かったので、余計なことでスカーレットの事を悩ませたくないからとの意向があったからであった。
「実はチェスター家とレイヤー家は遠縁に当たる関係で、ご夫妻は近々王宮で開催されるパーティーに出席されるためにいらしたのだ。そこでチェスター家に1週間程滞在することになったのだ。色々積もる話もあるだろう。後で時間を見つけて3人で話をするといい」
「お心遣い、感謝致します」
アーベルが頭を下げる。
「それで、君達は何の用で尋ねてきたのだ?」
アリオスがスカーレットの方を向いた。
「はい、カール様が目を覚まされたのでお伝えに参りました」
「そうか、カールの目が覚めたのか。分かった、後で顔を出しに行く」
「よろしくお願い致します。それでは私達は失礼致します」
スカーレットとブリジットは頭を下げて執務室を後にした―。
コンコン
「誰だ?今来客中なのだが」
部屋の中からアリオスの声が聞こえた。しかし来客中との言葉を聞いてスカーレットは慌てた。
「これは申し訳ございませんでした。まさかお客様がお見えになっていると知らずに…申し訳ございませんでした」
「ん?その声は…もしやスカーレットか?」
アリオスの意外そうな声が聞こえ、すぐにカチャリと扉が開かれた。
「!」
意外な程近くにアリオスが現れたのでスカーレットに緊張が走る。しかし、その様子に気づいた風も無く、アリオスが言った。
「スカーレット、ちょうどよい所に現れたな。実はお前たち2人の知り合いが来ており、会わせて欲しいと言っているのだ」
「え?私達にですか?」
スカーレットとブリジットは顔を見合わせた。2人にはここ『ミュゼ』では知り合いが誰もいないから誰が尋ねてきたのか皆目検討がつかなかったのだ。
「あの…私達に会いたいとおっしゃっている方とは…?」
するとアリオスは言う。
「まずは中へ入ってくれ。そうすれば誰が訪れてきたか分かるだろう」
「は、はい。分かりました…」
「失礼致します」
スカーレットとブリジットはアリオスの執務室へと足を踏み入れた。するとそこにはソファに腰掛けた品の良い服を来た年老いた老夫婦と、その2人の背後に立つのは…
「ま、まあ…!アーベルッ?!」
「アーベル様ではありませんかっ!」
なんと笑みを浮かべて2人の方を向いて立っていたのはアーベルであった。
「お久しぶりでございます。スカーレット様、ブリジット様」
黒い背広に身を包んだアーベルを見て2人は驚いた。するとアーベルの前に座っていた老夫婦が声を掛けてきた。
「おお…貴女がシュバルツ家のご令嬢でいらっしゃいますか?」
白い口髭の男性がスカーレットに声をかける。
「私達はシュバルツ家のお隣の領地に暮らすレイヤー家の者です」
「レイヤー家の方ですか…?」
その家紋にはスカーレットは聞き覚えがあった。辺境の地に住むレイヤー男爵夫妻。
子供はなく、穏やかな老夫婦でひっそりと暮らしていると聞く。
「実はシュバルツ家で執事をしていた彼を我々の執事に招いたのですよ」
老紳士は笑みを浮かべながら言う。
「まあ…そうだったのですね?」
事情を全く知らなかったスカーレットは関心したかのように返事をする。ブリジットは少しだけ話を聞いていたが、アーベルには口止めされていた。あの頃のスカーレットには全く余裕が無かったので、余計なことでスカーレットの事を悩ませたくないからとの意向があったからであった。
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「はい、カール様が目を覚まされたのでお伝えに参りました」
「そうか、カールの目が覚めたのか。分かった、後で顔を出しに行く」
「よろしくお願い致します。それでは私達は失礼致します」
スカーレットとブリジットは頭を下げて執務室を後にした―。
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