母と妹が出来て婚約者が義理の家族になった伯爵令嬢は・・

結城芙由奈@コミカライズ連載中

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第6章 2 ついに訪れた瞬間

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 キィ~…

きしんだ音と共に、粗末な小屋の扉が開けられた。小屋の中は小さな窓ガラスが1つしかない為に、まだ午前中だと言うのに薄暗かった。そして薄暗い小屋の中に、壁に寄りかかってうつむき加減に座っている人物がいる。

「おい、ジャン。お前に客が来てるぞ」

リーが小屋の中を覗き込むような姿勢で呼びかけた。

「う…あぅ…ああ…」

その人物はゆっくり顔を上げた。髪はボサボサに伸び、顔にかかっている為に表情をうかがい知ることが出来ない。顔には無精ひげが生えており、着ている服はボロボロだった。

「う…強烈な臭いがするな…」

グスタフが鼻を抑えている。

「おい、彼は言葉が通じるのか?」

ヴィクトールがリーに尋ねた。

「ああ、多分俺達の話している言葉は理解出来ているはずだ。ただ話す事が出来ないけどな。それに異常なほど怖がりで、この暑いのに小屋の中から出てこようともしない」

「なるほど…この強烈な臭いは体臭って事か…」

グスタフが鼻を抑えながら顔を歪めた。

「…何とか彼を小屋の外に出す事が出来ないだろうか?」

ヴィクトールはリーを見た。

「さぁなぁ…だけど、トイレには言ってるようだがな」

「そうか…だが出て来てくれない事には事が進まない。近くで良く見ないと確認できないぞ」

考え込むヴィクトールにグスタフが言った。

「何迷ってるんだよ。出てこないなら、小屋の中に入ればいいじゃないか」

「ならお前が入れ」

ヴィクトールが言う。

「はっ?!何で俺がっ!」

「お前から小屋の中に入ればいいと言ったんだろう?」

ヴィクトールが腕組みをしながら言う。

「冗談じゃない!こんな暑い日こんなに小汚い屋の中、おまけに強烈な異臭を放つ場所に入れるはずないだろう?!」

グスタフの言葉にヴィクトールはニヤリと笑みを浮かべると言った。

「お前…いいのか?そんな台詞を言っても…後で後悔しても知らないからな?」

「な、何だって…?」

グスタフは未だに状況がつかめなかった。そしてリーは面白そうにニヤニヤしながら腕組みをしている。

ヴィクトールは小屋を覗き込むと声を掛けた。

「ジャン…」

「…」

しかし、男は無反応である。次にヴィクトールはある名前を口にした。

「リヒャルト様…」

「え…?お、おい!ヴィクトールッ!お前、何を言い出すんだっ?!こんな汚い身なりの男がリヒャルト様のはずがないだろうっ?!」

グスタフは突然ヴィクトールがリヒャルトの名を口にしたので驚いた。

「!」

すると…男の肩がピクリと動いた。

「え?」

グスタフが戸惑いの声をあげる。そしてそんなグスタフを横目でヴィクトールは見ると、再びその名を口にした。

「リヒャルト・シュバルツ様。お仕事のお時間でございます」

すると…。

「あ、あぁ…」

男がゆっくりと立ち上がるとフラフラと小屋の中から出てきたのだ。

「そ、そんな…っ!」

グスタフは衝撃のあまり、ヘナヘナとその場に座り込んでしまった。

「へぇ~…やっぱりビンゴかぁ…」

リーは楽し気に言う。ヴィクトールはリヒャルトの前に跪き、顔を上げると言った。

「やっと見つける事が出来ました、リヒャルト・シュバルツ様。貴方を…お迎えに参りました」

そして笑みを浮かべた―。


 それはリヒャルトの失踪、死亡説が流れてから3カ月目の出来事だった―。





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