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第7章 12 リヒャルトの過去 8
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リヒャルトは朦朧とする意識の中、小屋の中に人が入ってくる気配を感じて、顔を上げると、先程の2人の人物が見下ろすように立っていた。
「ほう…気を失っているかと思ったが…意識が合ったか」
署長と呼ばれた男は再びマッチを擦ってパイプに火をつけて吸い込むと煙をリヒャルトに吹きかけた。
「ゴ…ゴホッ!」
タバコを吸ったことがないリヒャルトは煙を浴びせられ、思わず咳き込んだ。
「おい…やれ」
署長は連れの男を振り向くと言った。
「はい」
男の手には葉巻が握られている。そして署長がマッチを擦り、葉巻に火をつけた。
「ま、待て…私に何をするつもりだ…?」
リヒャルトは声を震わせて男に言った。
「ああ…お前にはこれを吸ってもらおう」
署長は無理やりリヒャルトの口をこじ開けさせると男は葉巻を口に加えさせた。
「ん~っ!!」
無理やり口を押さえつけられ、葉巻を加えさせられたリヒャルトは徐々に意識が朦朧としてきた。
(こ、これは一体何だ…っ?!)
するとリヒャルトを押さえつけながら署長が言った。
「これは『アヘン』だ」
(ア…アヘン…ッ?!)
リヒャルトは目の前が真っ暗になった気がした。
「お前は殺さない。まだまだ役立って貰わないとならないからな…アヘン漬けにして私達の操り人形になってもらおう。これも私の可愛いアグネスの為だ…」
それはまるで悪魔のような囁きにリヒャルトには聞こえた。そしてリヒャルトは意識を失った―。
そこから先の事は殆ど分からない。気づけば体中がアザだらけで薄暗い小屋の中に押し込められ、現実か夢か分からない狭間の世界でリヒャルトは生きた。たまにリヒャルトのもとにボロボロの身なりの男たちがやってきては食べ物を与えてくれた。彼等は何故か『ジャン』と呼び、哀れんだ目でリヒャルトを見た。それはリヒャルトがアヘン中毒にされてしまった事への同情の目であった。
実際、リヒャルトは阿片中毒症状に苦しめられていた。時折身体に激しい激痛が走り、あまりの苦しみで身悶えていると、何者かがリヒャルトに葉巻を与えた。すると不思議な事に激痛は収まり、気分が楽になった。…その繰り返しだった。もはや自分の名前も思い出せない、何故ここにいるのかも分からない…そんな状態がどれ程続いたか…ある時小屋の扉が開かれて、見たこともない人物が現れて言った。
「ああ…やっと見つけた。こんな所にいたのか」
と―。
****
リヒャルトの長い話が終わった。今まで黙ってリヒャルトの話を聞いていた彼等はすぐには口を開くことが出来なかった。それほどにリヒャルトの話は衝撃的だったのだ。最初に言葉を掛けたのはスカーレットだった。
「お父様…お父様を助けに現れたのは…?」
「ああ…彼は『リー』と呼ばれる情報屋で…『ベルンヘル』の副所長に雇われている男だった。彼がヴィクトールに私の事を教えてくれたそうだ」
「な、なんて言うことだ…」
アリオスはあまりの話に頭を押さえると言った。
「ではその署長は裏世界と繋がっていたということか?そして副所長が監視していた…?」
「はい、そのようです。今副所長は署長を追い詰める為の証拠を集めている最中らしいです。でも私の意識が目覚めたので…」
「お父様が…証人になる…?ということですか?」
スカーレットはリヒャルトを見た。
「…おそらくそうなるだろうね。だからすぐにでも私はヴィクトールと合流しなければならないんだ」
そしてリヒャルトはアリオスに言った。
「どうぞ、スカーレットをよろしくお願い致します」
勿論、アリオスの返事は決まっていた―。
「ほう…気を失っているかと思ったが…意識が合ったか」
署長と呼ばれた男は再びマッチを擦ってパイプに火をつけて吸い込むと煙をリヒャルトに吹きかけた。
「ゴ…ゴホッ!」
タバコを吸ったことがないリヒャルトは煙を浴びせられ、思わず咳き込んだ。
「おい…やれ」
署長は連れの男を振り向くと言った。
「はい」
男の手には葉巻が握られている。そして署長がマッチを擦り、葉巻に火をつけた。
「ま、待て…私に何をするつもりだ…?」
リヒャルトは声を震わせて男に言った。
「ああ…お前にはこれを吸ってもらおう」
署長は無理やりリヒャルトの口をこじ開けさせると男は葉巻を口に加えさせた。
「ん~っ!!」
無理やり口を押さえつけられ、葉巻を加えさせられたリヒャルトは徐々に意識が朦朧としてきた。
(こ、これは一体何だ…っ?!)
するとリヒャルトを押さえつけながら署長が言った。
「これは『アヘン』だ」
(ア…アヘン…ッ?!)
リヒャルトは目の前が真っ暗になった気がした。
「お前は殺さない。まだまだ役立って貰わないとならないからな…アヘン漬けにして私達の操り人形になってもらおう。これも私の可愛いアグネスの為だ…」
それはまるで悪魔のような囁きにリヒャルトには聞こえた。そしてリヒャルトは意識を失った―。
そこから先の事は殆ど分からない。気づけば体中がアザだらけで薄暗い小屋の中に押し込められ、現実か夢か分からない狭間の世界でリヒャルトは生きた。たまにリヒャルトのもとにボロボロの身なりの男たちがやってきては食べ物を与えてくれた。彼等は何故か『ジャン』と呼び、哀れんだ目でリヒャルトを見た。それはリヒャルトがアヘン中毒にされてしまった事への同情の目であった。
実際、リヒャルトは阿片中毒症状に苦しめられていた。時折身体に激しい激痛が走り、あまりの苦しみで身悶えていると、何者かがリヒャルトに葉巻を与えた。すると不思議な事に激痛は収まり、気分が楽になった。…その繰り返しだった。もはや自分の名前も思い出せない、何故ここにいるのかも分からない…そんな状態がどれ程続いたか…ある時小屋の扉が開かれて、見たこともない人物が現れて言った。
「ああ…やっと見つけた。こんな所にいたのか」
と―。
****
リヒャルトの長い話が終わった。今まで黙ってリヒャルトの話を聞いていた彼等はすぐには口を開くことが出来なかった。それほどにリヒャルトの話は衝撃的だったのだ。最初に言葉を掛けたのはスカーレットだった。
「お父様…お父様を助けに現れたのは…?」
「ああ…彼は『リー』と呼ばれる情報屋で…『ベルンヘル』の副所長に雇われている男だった。彼がヴィクトールに私の事を教えてくれたそうだ」
「な、なんて言うことだ…」
アリオスはあまりの話に頭を押さえると言った。
「ではその署長は裏世界と繋がっていたということか?そして副所長が監視していた…?」
「はい、そのようです。今副所長は署長を追い詰める為の証拠を集めている最中らしいです。でも私の意識が目覚めたので…」
「お父様が…証人になる…?ということですか?」
スカーレットはリヒャルトを見た。
「…おそらくそうなるだろうね。だからすぐにでも私はヴィクトールと合流しなければならないんだ」
そしてリヒャルトはアリオスに言った。
「どうぞ、スカーレットをよろしくお願い致します」
勿論、アリオスの返事は決まっていた―。
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