母と妹が出来て婚約者が義理の家族になった伯爵令嬢は・・

結城芙由奈@コミカライズ連載中

文字の大きさ
167 / 199

第7章 12 リヒャルトの過去 8

しおりを挟む
 リヒャルトは朦朧とする意識の中、小屋の中に人が入ってくる気配を感じて、顔を上げると、先程の2人の人物が見下ろすように立っていた。

「ほう…気を失っているかと思ったが…意識が合ったか」

署長と呼ばれた男は再びマッチを擦ってパイプに火をつけて吸い込むと煙をリヒャルトに吹きかけた。

「ゴ…ゴホッ!」

タバコを吸ったことがないリヒャルトは煙を浴びせられ、思わず咳き込んだ。

「おい…やれ」

署長は連れの男を振り向くと言った。

「はい」

男の手には葉巻が握られている。そして署長がマッチを擦り、葉巻に火をつけた。

「ま、待て…私に何をするつもりだ…?」

リヒャルトは声を震わせて男に言った。

「ああ…お前にはこれを吸ってもらおう」

署長は無理やりリヒャルトの口をこじ開けさせると男は葉巻を口に加えさせた。

「ん~っ!!」

無理やり口を押さえつけられ、葉巻を加えさせられたリヒャルトは徐々に意識が朦朧としてきた。

(こ、これは一体何だ…っ?!)

するとリヒャルトを押さえつけながら署長が言った。

「これは『アヘン』だ」

(ア…アヘン…ッ?!)

リヒャルトは目の前が真っ暗になった気がした。

「お前は殺さない。まだまだ役立って貰わないとならないからな…アヘン漬けにして私達の操り人形になってもらおう。これも私の可愛いアグネスの為だ…」

それはまるで悪魔のような囁きにリヒャルトには聞こえた。そしてリヒャルトは意識を失った―。



 そこから先の事は殆ど分からない。気づけば体中がアザだらけで薄暗い小屋の中に押し込められ、現実か夢か分からない狭間の世界でリヒャルトは生きた。たまにリヒャルトのもとにボロボロの身なりの男たちがやってきては食べ物を与えてくれた。彼等は何故か『ジャン』と呼び、哀れんだ目でリヒャルトを見た。それはリヒャルトがアヘン中毒にされてしまった事への同情の目であった。
実際、リヒャルトは阿片中毒症状に苦しめられていた。時折身体に激しい激痛が走り、あまりの苦しみで身悶えていると、何者かがリヒャルトに葉巻を与えた。すると不思議な事に激痛は収まり、気分が楽になった。…その繰り返しだった。もはや自分の名前も思い出せない、何故ここにいるのかも分からない…そんな状態がどれ程続いたか…ある時小屋の扉が開かれて、見たこともない人物が現れて言った。

「ああ…やっと見つけた。こんな所にいたのか」

と―。



****

 リヒャルトの長い話が終わった。今まで黙ってリヒャルトの話を聞いていた彼等はすぐには口を開くことが出来なかった。それほどにリヒャルトの話は衝撃的だったのだ。最初に言葉を掛けたのはスカーレットだった。

「お父様…お父様を助けに現れたのは…?」

「ああ…彼は『リー』と呼ばれる情報屋で…『ベルンヘル』の副所長に雇われている男だった。彼がヴィクトールに私の事を教えてくれたそうだ」

「な、なんて言うことだ…」

アリオスはあまりの話に頭を押さえると言った。

「ではその署長は裏世界と繋がっていたということか?そして副所長が監視していた…?」

「はい、そのようです。今副所長は署長を追い詰める為の証拠を集めている最中らしいです。でも私の意識が目覚めたので…」

「お父様が…証人になる…?ということですか?」

スカーレットはリヒャルトを見た。

「…おそらくそうなるだろうね。だからすぐにでも私はヴィクトールと合流しなければならないんだ」

そしてリヒャルトはアリオスに言った。

「どうぞ、スカーレットをよろしくお願い致します」

勿論、アリオスの返事は決まっていた―。
しおりを挟む
感想 70

あなたにおすすめの小説

あなたの姿をもう追う事はありません

彩華(あやはな)
恋愛
幼馴染で二つ年上のカイルと婚約していたわたしは、彼のために頑張っていた。 王立学園に先に入ってカイルは最初は手紙をくれていたのに、次第に少なくなっていった。二年になってからはまったくこなくなる。でも、信じていた。だから、わたしはわたしなりに頑張っていた。  なのに、彼は恋人を作っていた。わたしは婚約を解消したがらない悪役令嬢?どう言うこと?  わたしはカイルの姿を見て追っていく。  ずっと、ずっと・・・。  でも、もういいのかもしれない。

悪役令嬢はSランク冒険者の弟子になりヒロインから逃げ切りたい

恋愛
王太子の婚約者として、常に控えめに振る舞ってきたロッテルマリア。 尽くしていたにも関わらず、悪役令嬢として婚約者破棄、国外追放の憂き目に合う。 でも、実は転生者であるロッテルマリアはチートな魔法を武器に、ギルドに登録して旅に出掛けた。 新米冒険者として日々奮闘中。 のんびり冒険をしていたいのに、ヒロインは私を逃がしてくれない。 自身の目的のためにロッテルマリアを狙ってくる。 王太子はあげるから、私をほっといて~ (旧)悪役令嬢は年下Sランク冒険者の弟子になるを手直ししました。 26話で完結 後日談も書いてます。

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

【完結】私が誰だか、分かってますか?

美麗
恋愛
アスターテ皇国 時の皇太子は、皇太子妃とその侍女を妾妃とし他の妃を娶ることはなかった 出産時の出血により一時病床にあったもののゆっくり回復した。 皇太子は皇帝となり、皇太子妃は皇后となった。 そして、皇后との間に産まれた男児を皇太子とした。 以降の子は妾妃との娘のみであった。 表向きは皇帝と皇后の仲は睦まじく、皇后は妾妃を受け入れていた。 ただ、皇帝と皇后より、皇后と妾妃の仲はより睦まじくあったとの話もあるようだ。 残念ながら、この妾妃は産まれも育ちも定かではなかった。 また、後ろ盾も何もないために何故皇后の侍女となったかも不明であった。 そして、この妾妃の娘マリアーナははたしてどのような娘なのか… 17話完結予定です。 完結まで書き終わっております。 よろしくお願いいたします。

【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!

美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』  そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。  目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。  なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。  元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。  ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。  いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。  なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。  このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。  悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。  ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――

そんなに妹が好きなら死んであげます。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』 フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。 それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。 そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。 イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。 異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。 何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

地味で器量の悪い公爵令嬢は政略結婚を拒んでいたのだが

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 心優しいエヴァンズ公爵家の長女アマーリエは自ら王太子との婚約を辞退した。幼馴染でもある王太子の「ブスの癖に図々しく何時までも婚約者の座にいるんじゃない、絶世の美女である妹に婚約者の座を譲れ」という雄弁な視線に耐えられなかったのだ。それにアマーリエにも自覚があった。自分が社交界で悪口陰口を言われるほどブスであることを。だから王太子との婚約を辞退してからは、壁の花に徹していた。エヴァンズ公爵家てもつながりが欲しい貴族家からの政略結婚の申し込みも断り続けていた。このまま静かに領地に籠って暮らしていこうと思っていた。それなのに、常勝無敗、騎士の中の騎士と称えられる王弟で大将軍でもあるアラステアから結婚を申し込まれたのだ。

タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒― 私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。 「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」 その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。 ※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

処理中です...