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第9章 1 エーリカの行方
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アグネスとエーリカが2人でオペラ観劇後から3日が経過していた。
リヒャルト達は弁護士の先生の元を尋ね、アグネス達を訴える法的措置を着々と進めていた。
アグネスもリヒャルトの動向が気になる処だったが、今はとてもそれどころではない状況に陥っていた―。
****
アグネスはリビングでソファに座り、イライラした様子で右親指を噛みながら壁に掛けてある時計をチラリと見る。時刻は午後5時を過ぎている。
(まだなの?まだ今日の報告は無いのかしら?)
コンコン
その時、扉のノックの音が部屋に響き渡った。
(帰って来たわね!)
「お入りなさい!」
「失礼致します」
扉が開かれ、現れたのはこの屋敷に潜入しているジャックだった。
「…それで?どうだったの?エーリカは見つかったの?」
「いえ、それがまだ見つかってはおりません」
「そうなの?一体お前は何をしているのよっ!人探しは得意だから自分にまかせてくれと言っておきながら既に2日が経過しているのよ!」
ヒステリックな声でジャックを叱責するアグネス。
「大変申し訳ございません」
ジャックは頭を下げながらチラリと上目遣いでアグネスの様子を伺った。
(かなりイラついているな…母娘の親子関係は完全に破たんしていると思っていたが、やはり心配していたのか)
実はあの日、レストランでエーリカは姿を消して以来、行方不明になっていたのだった。しかしアグネスは楽観視していた。どうせ次の日にはふらりと何事も無く屋敷に帰って来るに違いないと。過去にも数えきれない位エーリカは無断外泊をしてきた。その度に激しい親子関係になり、時にはつかみ合いの喧嘩を繰り返して来たのだが…。
「おかしいわ、あの子は確かに無断外泊を繰り返して来たけれども…3日間も帰ってこないなんてことは今まで一度も無かったのに…」
そこへジャックが言った。
「奥様。私は自分の知り合いにもエーリカ様を探す手伝いをお願いしています。情報が入り次第すぐにご連絡致しますのでもう少しだけお待ち下さい」
「フン、分ったわ。ただし、これ以上はもう待たせないでよ」
「はい、それでは失礼致します」
ジャックは一礼すると部屋を出て行った。
「全く…警察や探偵にエーリカを探して貰えるように頼めればいいのだけど…」
しかし、アグネスはそれを頼むことが出来ない。何故ならアグネスは過去に様々な犯罪を犯して来たからだ。年寄りの老人を騙して全財産を奪って自殺においやったこともある。結婚詐欺を働いた数など片手で足りない。他にも細々した犯罪を上げればきりがない。そしてそれらを全て隠ぺいしてきたのが今は軟禁状態にあるベルンヘルの警察署長なのであった。
「彼にはもう頼めないし…全く何てタイミングが悪いの!ただでさえリヒャルトの件で頭が一杯なのに…」
アグネスは髪をかきむしり、深いため息をつくのだった―。
****
一方、その頃リカルドは町で聞き込みをした際に情報屋からエーリカらしき人物を見かけたと言う事で、ある場所に来ていた。
そこは薄暗い路地裏にある木造2階建ての古い建物であった。
「…」
頭のつるりと禿げあがった男の案内でギシギシとなる床板を踏みしめて歩いていると左右の扉からは男女の情事の声が漏れて聞こえてくる。
(参ったな…どんな場所かと思ってついて来てみれば、ここは場末の娼館じゃないか…)
心の中で舌打ちしていると、前方を歩いている男が足を止めた。
「探している女かどうかは知らんが…この部屋によく似た女がいるぞ」
そしてドアノブに手を触れる。
「おい、待て。接客中だったらどうする」
慌てた様にリカルドが言うと、男はニヤリと笑った。
「何言ってる、旦那。客として来たんだろう?ここにいる女たちの中では一番言う事を聞いてくれるぞ?どんな要求にも応えるはずだ。何しろ薬漬けにされて正気を失っているからなぁ」
男は下卑た笑いをリカルドに見せると、カチャリと扉を開けた―。
リヒャルト達は弁護士の先生の元を尋ね、アグネス達を訴える法的措置を着々と進めていた。
アグネスもリヒャルトの動向が気になる処だったが、今はとてもそれどころではない状況に陥っていた―。
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アグネスはリビングでソファに座り、イライラした様子で右親指を噛みながら壁に掛けてある時計をチラリと見る。時刻は午後5時を過ぎている。
(まだなの?まだ今日の報告は無いのかしら?)
コンコン
その時、扉のノックの音が部屋に響き渡った。
(帰って来たわね!)
「お入りなさい!」
「失礼致します」
扉が開かれ、現れたのはこの屋敷に潜入しているジャックだった。
「…それで?どうだったの?エーリカは見つかったの?」
「いえ、それがまだ見つかってはおりません」
「そうなの?一体お前は何をしているのよっ!人探しは得意だから自分にまかせてくれと言っておきながら既に2日が経過しているのよ!」
ヒステリックな声でジャックを叱責するアグネス。
「大変申し訳ございません」
ジャックは頭を下げながらチラリと上目遣いでアグネスの様子を伺った。
(かなりイラついているな…母娘の親子関係は完全に破たんしていると思っていたが、やはり心配していたのか)
実はあの日、レストランでエーリカは姿を消して以来、行方不明になっていたのだった。しかしアグネスは楽観視していた。どうせ次の日にはふらりと何事も無く屋敷に帰って来るに違いないと。過去にも数えきれない位エーリカは無断外泊をしてきた。その度に激しい親子関係になり、時にはつかみ合いの喧嘩を繰り返して来たのだが…。
「おかしいわ、あの子は確かに無断外泊を繰り返して来たけれども…3日間も帰ってこないなんてことは今まで一度も無かったのに…」
そこへジャックが言った。
「奥様。私は自分の知り合いにもエーリカ様を探す手伝いをお願いしています。情報が入り次第すぐにご連絡致しますのでもう少しだけお待ち下さい」
「フン、分ったわ。ただし、これ以上はもう待たせないでよ」
「はい、それでは失礼致します」
ジャックは一礼すると部屋を出て行った。
「全く…警察や探偵にエーリカを探して貰えるように頼めればいいのだけど…」
しかし、アグネスはそれを頼むことが出来ない。何故ならアグネスは過去に様々な犯罪を犯して来たからだ。年寄りの老人を騙して全財産を奪って自殺においやったこともある。結婚詐欺を働いた数など片手で足りない。他にも細々した犯罪を上げればきりがない。そしてそれらを全て隠ぺいしてきたのが今は軟禁状態にあるベルンヘルの警察署長なのであった。
「彼にはもう頼めないし…全く何てタイミングが悪いの!ただでさえリヒャルトの件で頭が一杯なのに…」
アグネスは髪をかきむしり、深いため息をつくのだった―。
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一方、その頃リカルドは町で聞き込みをした際に情報屋からエーリカらしき人物を見かけたと言う事で、ある場所に来ていた。
そこは薄暗い路地裏にある木造2階建ての古い建物であった。
「…」
頭のつるりと禿げあがった男の案内でギシギシとなる床板を踏みしめて歩いていると左右の扉からは男女の情事の声が漏れて聞こえてくる。
(参ったな…どんな場所かと思ってついて来てみれば、ここは場末の娼館じゃないか…)
心の中で舌打ちしていると、前方を歩いている男が足を止めた。
「探している女かどうかは知らんが…この部屋によく似た女がいるぞ」
そしてドアノブに手を触れる。
「おい、待て。接客中だったらどうする」
慌てた様にリカルドが言うと、男はニヤリと笑った。
「何言ってる、旦那。客として来たんだろう?ここにいる女たちの中では一番言う事を聞いてくれるぞ?どんな要求にも応えるはずだ。何しろ薬漬けにされて正気を失っているからなぁ」
男は下卑た笑いをリカルドに見せると、カチャリと扉を開けた―。
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