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第61話 弁明する余地も無く
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今サチは僕の伸ばした両足の上に座り、上体を起こした僕の顔を両手で挟んでいる。
はっきり言って、これは誰がどう見ても非常に勘違いされてしまうシチュエーションだ。
しかもよくよく考えてみれば、何故今授業中のはずなのにサチやエディット、それに王子がここにいるのだろう?
「キャアッ!…セドリック様っ!あ、あのですね。こ、これには深いわけが…」
サチは僕の上に乗ったまま王子に必死に言い訳しようとしている。
一方、僕の方はエディットが真っ青な顔でこちらを見ていることに驚いて言葉を失っていた。
すると……。
「アリス、早く彼から降りなよ」
王子が眉間にシワを寄せたまま、サチに声を掛けた。
「は、はいっ!」
サチは僕の上から慌てて降りると立ち上がった。
「ほら、彼女も困っている。早く集合場所に行こう」
「はい、分かりました!」
サチはそれだけ言うと、僕の方を振り返ること無く王子の元へと駆け寄っていく。
「それじゃ、行こう」
「はい」
王子に声を掛けられ、サチが返事をする。
「あ、あの…わ、私は……」
エディットは僕が気になるのか、こちらをじっと見つめている。
「エディット……」
「今は授業中だから行こう。他のグループが心配するよ」
王子はエディットを促す。
「は、はい……」
エディットは小さく返事をすると、3人は僕に背を向けた。
そしてこの場を立ち去ろうとするエディットに僕は声を掛けた。
「エディットッ!」
その声にエディットは肩をピクリとさせた。
「放課後……あの場所で待ってるからっ!」
王子やサチの手前、それだけ告げるのが精一杯だった。するとエディットは僕に背を向けたままコクリと頷く。
そんな僕に王子は一瞬、こちらを向き……すぐに前を向くと2人を連れて歩き去って行った。
そんな彼等を黙って見送る僕。
「エディット……」
サチのことも気がかりだったけど、今の僕の頭の中はエディットのことで頭を占めていた――。
****
キーンコーンカーンコーン…
4時限目の文学の授業が終わり、ブラッドリーが声を掛けてきた。
「どうしたんだ?アドルフ。お前医務室へ行って戻ってから随分元気がないじゃないか?ひょっとして腹でも空いているのか?朝食を抜くのは身体に毒だぞ?」
「朝食ならちゃんと食べてきてるよ。別に何でも無いさ」
言いながら不自由な手で教科書やノートをカバンにしまっていく。
「おい、片付けなら手伝ってやるから早く学食へ行くぞっ!何しろスペシャルAランチは1日限定100食しかないからな!」
ブラッドリーが僕からカバンをひったくると、乱暴な手付きでグッチャグチャに詰め込んでいく。
「うわぁ!な、何するんだよ!」
「いいから行くぞ!早く来いっ!」
ラモンに無理やり腕を掴まれて立たされる。
「い、痛いって!」
「俺は先に4人分席を確保してくるからなっ!」
エミリオは教室を飛び出して行った。
「よし!片付け終了!行くぞ!2人とも!」
ブラッドリーは僕のカバンを椅子の上にぶん投げると声を掛けてきた。
「ああ!急ぐぞ!」
ラモンは返事をすると、あっという間に走り去っていく。
そんなにスペシャルAランチとやらが食べたいのだろうか……?
「ほら!お前も急げよっ!」
「わ、分かったよっ!」
ブラッドリーにまるで背中を押されるように僕達は学食を目指した――。
****
それから約1時間後――。
「ふ~……美味かったな…スペシャルAランチ…」
太陽がサンサンと降り注ぐオープンテラス席で、ブラッドリーが食後のコーヒーを飲みながらポツリと言った。
「ああ、最高だったな」
「食べたのは約1ヶ月ぶりか……」
ラモンに続きエミリオも感嘆のため息?をつく。
「うん、あの肉汁が染み出した厚切りステーキは確かにすごく美味しかったけど…だったら何で毎回食べないんだい?」
コーヒーを飲みながら僕は3人に尋ねた。
「お前なぁ……ほんとに、そんなことすら忘れてしまったのか?スペシャルAランチは月に1度の特別メニューじゃないか?」
エミリオが呆れた様子で僕を見る。
「え?そうだったのかい?」
「また、『そうだったのかい?』ってナヨナヨした女みたいな喋り方して……おい。もう一度お前、馬に蹴られてみたらどうだ?元のアドルフに戻れるんじゃないか?」
ラモンが恐ろしいことを言う。
「じょ、冗談じゃないよ!今度蹴られたら本当に命は無いかもしれないじゃないか」
その時……。
「おい、アドルフッ!あれを見ろよっ!エディットだぞっ!」
突然ブラッドリーが慌てた様子で僕に声を掛けてきた。
「え?エディットが?でもここは学食だし、いても当然じゃ…」
「バカッ!そんなんじゃないっ!一緒にいる人物を見てみろよっ!」
そしてブラッドリーはある方向を指さした。
「え……?」
ブラッドリーが指差した先にはエディットと、王子…そしてサチの姿がテーブル席に着席していた――。
はっきり言って、これは誰がどう見ても非常に勘違いされてしまうシチュエーションだ。
しかもよくよく考えてみれば、何故今授業中のはずなのにサチやエディット、それに王子がここにいるのだろう?
「キャアッ!…セドリック様っ!あ、あのですね。こ、これには深いわけが…」
サチは僕の上に乗ったまま王子に必死に言い訳しようとしている。
一方、僕の方はエディットが真っ青な顔でこちらを見ていることに驚いて言葉を失っていた。
すると……。
「アリス、早く彼から降りなよ」
王子が眉間にシワを寄せたまま、サチに声を掛けた。
「は、はいっ!」
サチは僕の上から慌てて降りると立ち上がった。
「ほら、彼女も困っている。早く集合場所に行こう」
「はい、分かりました!」
サチはそれだけ言うと、僕の方を振り返ること無く王子の元へと駆け寄っていく。
「それじゃ、行こう」
「はい」
王子に声を掛けられ、サチが返事をする。
「あ、あの…わ、私は……」
エディットは僕が気になるのか、こちらをじっと見つめている。
「エディット……」
「今は授業中だから行こう。他のグループが心配するよ」
王子はエディットを促す。
「は、はい……」
エディットは小さく返事をすると、3人は僕に背を向けた。
そしてこの場を立ち去ろうとするエディットに僕は声を掛けた。
「エディットッ!」
その声にエディットは肩をピクリとさせた。
「放課後……あの場所で待ってるからっ!」
王子やサチの手前、それだけ告げるのが精一杯だった。するとエディットは僕に背を向けたままコクリと頷く。
そんな僕に王子は一瞬、こちらを向き……すぐに前を向くと2人を連れて歩き去って行った。
そんな彼等を黙って見送る僕。
「エディット……」
サチのことも気がかりだったけど、今の僕の頭の中はエディットのことで頭を占めていた――。
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キーンコーンカーンコーン…
4時限目の文学の授業が終わり、ブラッドリーが声を掛けてきた。
「どうしたんだ?アドルフ。お前医務室へ行って戻ってから随分元気がないじゃないか?ひょっとして腹でも空いているのか?朝食を抜くのは身体に毒だぞ?」
「朝食ならちゃんと食べてきてるよ。別に何でも無いさ」
言いながら不自由な手で教科書やノートをカバンにしまっていく。
「おい、片付けなら手伝ってやるから早く学食へ行くぞっ!何しろスペシャルAランチは1日限定100食しかないからな!」
ブラッドリーが僕からカバンをひったくると、乱暴な手付きでグッチャグチャに詰め込んでいく。
「うわぁ!な、何するんだよ!」
「いいから行くぞ!早く来いっ!」
ラモンに無理やり腕を掴まれて立たされる。
「い、痛いって!」
「俺は先に4人分席を確保してくるからなっ!」
エミリオは教室を飛び出して行った。
「よし!片付け終了!行くぞ!2人とも!」
ブラッドリーは僕のカバンを椅子の上にぶん投げると声を掛けてきた。
「ああ!急ぐぞ!」
ラモンは返事をすると、あっという間に走り去っていく。
そんなにスペシャルAランチとやらが食べたいのだろうか……?
「ほら!お前も急げよっ!」
「わ、分かったよっ!」
ブラッドリーにまるで背中を押されるように僕達は学食を目指した――。
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それから約1時間後――。
「ふ~……美味かったな…スペシャルAランチ…」
太陽がサンサンと降り注ぐオープンテラス席で、ブラッドリーが食後のコーヒーを飲みながらポツリと言った。
「ああ、最高だったな」
「食べたのは約1ヶ月ぶりか……」
ラモンに続きエミリオも感嘆のため息?をつく。
「うん、あの肉汁が染み出した厚切りステーキは確かにすごく美味しかったけど…だったら何で毎回食べないんだい?」
コーヒーを飲みながら僕は3人に尋ねた。
「お前なぁ……ほんとに、そんなことすら忘れてしまったのか?スペシャルAランチは月に1度の特別メニューじゃないか?」
エミリオが呆れた様子で僕を見る。
「え?そうだったのかい?」
「また、『そうだったのかい?』ってナヨナヨした女みたいな喋り方して……おい。もう一度お前、馬に蹴られてみたらどうだ?元のアドルフに戻れるんじゃないか?」
ラモンが恐ろしいことを言う。
「じょ、冗談じゃないよ!今度蹴られたら本当に命は無いかもしれないじゃないか」
その時……。
「おい、アドルフッ!あれを見ろよっ!エディットだぞっ!」
突然ブラッドリーが慌てた様子で僕に声を掛けてきた。
「え?エディットが?でもここは学食だし、いても当然じゃ…」
「バカッ!そんなんじゃないっ!一緒にいる人物を見てみろよっ!」
そしてブラッドリーはある方向を指さした。
「え……?」
ブラッドリーが指差した先にはエディットと、王子…そしてサチの姿がテーブル席に着席していた――。
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