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第94話 個人保護法?
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応接室の扉は開け放たれたままで、中の様子がよく見えた。
部屋に置かれた1人掛けのソファにはそれぞれ、セドリックとアリスが座っている。
その様子を眺めていると背後からフットマンが声を掛けてきた。
「アドルフ様、お茶の用意はいかが致しますか?」
「え?お茶だって?」
「ひぃいい!す、すみませんっ!」
振り向く僕に怯えるフットマン。
う~ん……そんなにまだ僕が怖いのだろうか?
だけどお茶か……。
お茶を持ってこられるのはかなりマズイかもしれない。
前世の話をしている最中に誰かに聞かれるわけにはいかないし。
「お茶はいらないよ。その代わり、誰もこの応接室に入れないようにしてくれるかな?」
「え?そ、それで宜しいのですか?」
「うん、あ。それじゃついでにこの付近には誰も近づかないように他の使用人達にも伝えておいてよ」
「はい、承知致しました」
頷くフットマン。
「それじゃ、頼むよ」
「かしこまりました」
彼が去っていくのを見届けると、僕は応接室へと入っていった。
「お待たせ、2人とも」
すると、サチとセドリックが同時に声を上げた。
「お兄ちゃん!!」
「お兄さん!!」
「駄目だよ!2人とも!そんな大きな声を出したら!」
慌てて扉を閉めると2人に注意した。
「あ……ごめんなさい、ついうっかり」
「ごめん」
2人は申し訳なさそうに謝ってきた。
「うん、今から気をつけてくれればいいよ」
そして空いているソファに座ると、早速サチに尋ねた。
「さて、アリス。僕が前世では日本人で兄だったことを説明した話はセドリックから聞かされているんだろう?」
セドリックの前だったので僕は敢えてサチと呼ぶのはやめて、アリスと呼んだ。
「うん、聞いたよ…」
頷くサチ。
「それで?どうしてセドリックに僕が前世で兄だったことを伝えなかったんだい?」
「そ、それは……」
サチは何故か中々口を割ろうとしない。
するとセドリックがため息をついた。
「いいよ、俺から説明するよ」
すると……。
「イヤアアアッ!王子!そんな乱暴な口を聞かないでよぉ!」
サチが突然叫んだ。
「わ、分かったよ……。言葉遣いを直せばいいんだよね?」
「ええ、そうです!例え前世が日本人でも今はこの世界では王子様なのですから、それらしくして下さい!」
どうやらサチはセドリックには原作の漫画通りに王子らしい振る舞いをしてもらいたいようだ。
「それじゃ……何故アリスが僕達に互いの事情を說明しなかったのか話すよ」
「うん。頼むよ」
サチが僕達に説明しなかったのは、きっと深い理由があるに違いない……。
そう思っていたのに、王子の口からは予想もしない言葉が飛び出してきた。
「つまり、個人情報の問題だって言うんだよ」
「え?」
あまりの言葉に耳を疑い……次にサチを見た。
「アリス……。個人情報って……一体何のことかな……?」
「う、うん。ほら、勝手に相手の許可なく個人の秘密を明かすのはいけないことかな~って思って……。ね?よく日本で言われていたでしょう?個人情報保護法って……私は2人から前世が日本人だったことや、更には私やお兄ちゃんが兄妹だったことを誰かに話していいって許可を貰っていなかったから……說明しなかったんだよね…アハハハハハハ……」
最後に笑って誤魔化すサチ。
「な、な、何だって~~っ!!」
僕が大きな声を上げたのは、言うまでも無かった――。
****
今、僕とセドリックは2人でサチに詰め寄っていた。
「とにかく、アリスがもっと早く僕達のことを説明してくれればセドリックも誤解することが無かったんだぞ?」
「そうだ、お兄さんの言う通りだ。まさか、ずっと黙っているつもりだったのか?」
するとセドリックの言葉に激しく首を振る。
「まさか!2人の許可を得られたらすぐに説明しようと思っていたけど、セドリック王子が中々目を放してくれないから……お兄ちゃんと2人で会うチャンスも無くて……」
そしてサチはセドリックをちらりと見た。
「そ、そんなのは当然だろう?僕の侍女として連れてきたのに、勝手に男と会うなんて……み、認められるはずないじゃないかっ!」
セドリックは少しだけ頬を赤く染めながら訴える。
なるほど……。
つまり僕は2人に巻き込まれて王子には遠慮をし、エディットからは距離を取ろうとしていたんだ。
尤も今の僕はエディットから離れようとは思ってもいないけれど。
「ま、まぁ…こうして偶然にも?地球の、しかも日本人だった記憶を持つ3人が集まったのだから…これって凄い奇跡な出来事として……良しとしない?」
地球の、日本人だった記憶を持つ……。
うん?地球の…記憶?
「そうだ!2人とも!」
サチの言葉に昨日の出来事を突然思い出し、声を上げた――。
部屋に置かれた1人掛けのソファにはそれぞれ、セドリックとアリスが座っている。
その様子を眺めていると背後からフットマンが声を掛けてきた。
「アドルフ様、お茶の用意はいかが致しますか?」
「え?お茶だって?」
「ひぃいい!す、すみませんっ!」
振り向く僕に怯えるフットマン。
う~ん……そんなにまだ僕が怖いのだろうか?
だけどお茶か……。
お茶を持ってこられるのはかなりマズイかもしれない。
前世の話をしている最中に誰かに聞かれるわけにはいかないし。
「お茶はいらないよ。その代わり、誰もこの応接室に入れないようにしてくれるかな?」
「え?そ、それで宜しいのですか?」
「うん、あ。それじゃついでにこの付近には誰も近づかないように他の使用人達にも伝えておいてよ」
「はい、承知致しました」
頷くフットマン。
「それじゃ、頼むよ」
「かしこまりました」
彼が去っていくのを見届けると、僕は応接室へと入っていった。
「お待たせ、2人とも」
すると、サチとセドリックが同時に声を上げた。
「お兄ちゃん!!」
「お兄さん!!」
「駄目だよ!2人とも!そんな大きな声を出したら!」
慌てて扉を閉めると2人に注意した。
「あ……ごめんなさい、ついうっかり」
「ごめん」
2人は申し訳なさそうに謝ってきた。
「うん、今から気をつけてくれればいいよ」
そして空いているソファに座ると、早速サチに尋ねた。
「さて、アリス。僕が前世では日本人で兄だったことを説明した話はセドリックから聞かされているんだろう?」
セドリックの前だったので僕は敢えてサチと呼ぶのはやめて、アリスと呼んだ。
「うん、聞いたよ…」
頷くサチ。
「それで?どうしてセドリックに僕が前世で兄だったことを伝えなかったんだい?」
「そ、それは……」
サチは何故か中々口を割ろうとしない。
するとセドリックがため息をついた。
「いいよ、俺から説明するよ」
すると……。
「イヤアアアッ!王子!そんな乱暴な口を聞かないでよぉ!」
サチが突然叫んだ。
「わ、分かったよ……。言葉遣いを直せばいいんだよね?」
「ええ、そうです!例え前世が日本人でも今はこの世界では王子様なのですから、それらしくして下さい!」
どうやらサチはセドリックには原作の漫画通りに王子らしい振る舞いをしてもらいたいようだ。
「それじゃ……何故アリスが僕達に互いの事情を說明しなかったのか話すよ」
「うん。頼むよ」
サチが僕達に説明しなかったのは、きっと深い理由があるに違いない……。
そう思っていたのに、王子の口からは予想もしない言葉が飛び出してきた。
「つまり、個人情報の問題だって言うんだよ」
「え?」
あまりの言葉に耳を疑い……次にサチを見た。
「アリス……。個人情報って……一体何のことかな……?」
「う、うん。ほら、勝手に相手の許可なく個人の秘密を明かすのはいけないことかな~って思って……。ね?よく日本で言われていたでしょう?個人情報保護法って……私は2人から前世が日本人だったことや、更には私やお兄ちゃんが兄妹だったことを誰かに話していいって許可を貰っていなかったから……說明しなかったんだよね…アハハハハハハ……」
最後に笑って誤魔化すサチ。
「な、な、何だって~~っ!!」
僕が大きな声を上げたのは、言うまでも無かった――。
****
今、僕とセドリックは2人でサチに詰め寄っていた。
「とにかく、アリスがもっと早く僕達のことを説明してくれればセドリックも誤解することが無かったんだぞ?」
「そうだ、お兄さんの言う通りだ。まさか、ずっと黙っているつもりだったのか?」
するとセドリックの言葉に激しく首を振る。
「まさか!2人の許可を得られたらすぐに説明しようと思っていたけど、セドリック王子が中々目を放してくれないから……お兄ちゃんと2人で会うチャンスも無くて……」
そしてサチはセドリックをちらりと見た。
「そ、そんなのは当然だろう?僕の侍女として連れてきたのに、勝手に男と会うなんて……み、認められるはずないじゃないかっ!」
セドリックは少しだけ頬を赤く染めながら訴える。
なるほど……。
つまり僕は2人に巻き込まれて王子には遠慮をし、エディットからは距離を取ろうとしていたんだ。
尤も今の僕はエディットから離れようとは思ってもいないけれど。
「ま、まぁ…こうして偶然にも?地球の、しかも日本人だった記憶を持つ3人が集まったのだから…これって凄い奇跡な出来事として……良しとしない?」
地球の、日本人だった記憶を持つ……。
うん?地球の…記憶?
「そうだ!2人とも!」
サチの言葉に昨日の出来事を突然思い出し、声を上げた――。
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