婚約者はこの世界のヒロインで、どうやら僕は悪役で追放される運命らしい

結城芙由奈@コミカライズ連載中

文字の大きさ
140 / 221

第140話 裏切りの後で……

しおりを挟む
「え?!な、何でここにいるんだよ?出張で後1週間は帰ってこないはずだっただろう?!」

 ブラッドリーの両親は会社を経営している。その為、屋敷を不在にしていることは日常茶飯事だった。その2人が突然帰宅してきたのだから驚くのは無理も無いかもしれない。

「執事から連絡が入ったんだ。お前は今日、アドルフを怪我させて停学処分になったとな。それで慌てて母さんと2人で帰って来たんだ」

「ブラッドリー!何てことをしてくれたの?!」

そして2人は僕に向き直ると頭を下げて来た。

「アドルフ、怪我の具合は大丈夫なのかい?うちの息子がとんでもないことを……。すまない、本当に申し訳なかった」

「ごめんなさいね……アドルフ。まさかあの子が貴方にそんなことを‥‥」

夫人は涙目になっている。

「いえ、この通り僕は大丈夫ですから」

次に伯爵はエディットの方を向いた。

「君は確か……エディット嬢だったね?」

「はい、そうです。お久しぶりです、伯爵様」

エディットは制服のスカートをつまんで挨拶をした。

「アドルフ、後程君のお宅に謝罪に伺わせてもらう。悪いが……今日の所は帰ってもらってもいいだろうか?ブラッドリーに色々尋ねなければならないことがあるからな」

「ごめんなさいね、アドルフ」

伯爵夫妻の顔には疲れが見えた。一方のブラッドリーはまるで存在を消しているかのように無言を貫いている。

「分かりました。エディット、行こう」
「はい。アドルフ様」

コクリと頷くエディット。

「見送り出来なくてすまない」

申し訳なさそうに謝って来る伯爵に僕は笑みを浮かべた。

「いいえ、どうか気になさらないで下さい。失礼します」
「失礼します」

 2人で挨拶すると、僕達は手を繋いで部屋を後にした――。



 エントランスに向かいながら僕はエディットに話しかけた。

「エディットは馬車で来たの?」
「はい、そうです」

「そうか……なら、屋敷迄は見送り出来ないかな……」

するとエディットが僕の手を繋いだまま、足を止めて俯いてしまった。

「どうかした?エディット」
「はい……。あ、あの……」

何だろう?

「エディット?」

するとエディットが顔を上げた。瞳は潤み、頬は赤く染まっている。

「あの……このお屋敷の前にアドルフ様の馬車が止まっていたので帰って貰ったので
す。アドルフ様と一緒に……同じ馬車で帰りたかったので……。迷惑でしたか?」

 ブラッドリーの件で落ち込んでいただけに、尚更エディットの気持ちが嬉しかった。

「迷惑なんて、思うはず無いよ。エディットを送ってあげたいと思っていたから丁度良かったよ。それじゃ一緒に帰ろう?」

「はい」

僕達は互いの手をしっかり握りしめた――。



****


「アドルフ様、大丈夫ですか?」

馬車が走り出すとすぐにエディットが声を掛けて来た。

「うん。大丈夫だよ。何で?」

「いえ。ブラッドリー様の件で……落ち込んでいるのではないかと思って。まさかここまで酷い話だったなんて……」

スカートを握りしめているエディットの手が小さく震えていた。

「エディット……」

「ブラッドリー様がドルフ様をあんな風に思っていたなんて……私、ショックでした。でもアドルフ様の方がもっとですよね?」

「僕なら大丈夫だよ。確かに驚きはしたけど……ほら、馬に蹴られたせいで記憶のほとんどが戻っていないせいかな?思ったほどショックは受けていないよ」

 実はそんなの真っ赤な嘘だ。エディットを心配させないためについた嘘。
ブラッドリーが今まで僕にしてきたことは、一歩間違えれば死んでいたかもしれないのだから。そこまで僕は……彼に憎まれていたなんて。
僕は今まで少しもそのことに気付いていなかった。

「ありがとう。ブラッドリーから話を聞き出せたのはエディットのお陰だよ」

向かい側に座るエディットの手を握りしめた。

「アドルフ様。でもブラッドリー様との関係が破綻したのは……私に原因が……」

「エディットは何も悪くないよ。僕とブラッドリーは元々こうなる運命だったんだよ。それに僕にとって大切な人は……エディットだから」

そして、エディットの手を両手でそっと包み込んだ――。

しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

子供が可愛いすぎて伯爵様の溺愛に気づきません!

屋月 トム伽
恋愛
私と婚約をすれば、真実の愛に出会える。 そのせいで、私はラッキージンクスの令嬢だと呼ばれていた。そんな噂のせいで、何度も婚約破棄をされた。 そして、9回目の婚約中に、私は夜会で襲われてふしだらな令嬢という二つ名までついてしまった。 ふしだらな令嬢に、もう婚約の申し込みなど来ないだろうと思っていれば、お父様が氷の伯爵様と有名なリクハルド・マクシミリアン伯爵様に婚約を申し込み、邸を売って海外に行ってしまう。 突然の婚約の申し込みに断られるかと思えば、リクハルド様は婚約を受け入れてくれた。婚約初日から、マクシミリアン伯爵邸で住み始めることになるが、彼は未婚のままで子供がいた。 リクハルド様に似ても似つかない子供。 そうして、マクリミリアン伯爵家での生活が幕を開けた。

【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです

大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。 「俺は子どもみたいな女は好きではない」 ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。 ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。 ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。 何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!? 貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

若い頃に婚約破棄されたけど、不惑の年になってようやく幸せになれそうです。

長岡更紗
恋愛
侯爵令嬢だったユリアーナは、第一王子のディートフリートと十歳で婚約した。 仲睦まじく過ごしていたある日、父親の死をきっかけにどん底まで落ちたユリアーナは婚約破棄されてしまう。 愛し合う二人は、離れ離れとなってしまったのだった。 ディートフリートを待ち続けるユリアーナ。 ユリアーナを迎えに行こうと奮闘するディートフリート。 二人に巻き込まれてしまった、男装の王弟。 時に笑い、時に泣き、諦めそうになり、奮闘し…… 全ては、愛する人と幸せになるために。 他サイトと重複投稿しています。 全面改稿して投稿中です。

愛のない結婚をした継母に転生したようなので、天使のような息子を溺愛します

美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
目が覚めると私は昔読んでいた本の中の登場人物、公爵家の後妻となった元王女ビオラに転生していた。 人嫌いの公爵は、王家によって組まれた前妻もビオラのことも毛嫌いしており、何をするのも全て別。二人の結婚には愛情の欠片もなく、ビオラは使用人たちにすら相手にされぬ生活を送っていた。 それでもめげずにこの家にしがみついていたのは、ビオラが公爵のことが本当に好きだったから。しかしその想いは報われることなどなく彼女は消え、私がこの体に入ってしまったらしい。 嫌われ者のビオラに転生し、この先どうしようかと考えあぐねていると、この物語の主人公であるルカが声をかけてきた。物語の中で悲惨な幼少期を過ごし、闇落ち予定のルカは純粋なまなざしで自分を見ている。天使のような可愛らしさと優しさに、気づけば彼を救って本物の家族になりたいと考える様に。 二人一緒ならばもう孤独ではないと、私はルカとの絆を深めていく。 するといつしか私を取り巻く周りの人々の目も、変わり始めるのだったーー

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜

四葉美名
恋愛
「危険です! 突然現れたそんな女など処刑して下さい!」 ある日突然、そんな怒号が飛び交う異世界に迷い込んでしまった橘莉子(たちばなりこ)。 竜王が統べるその世界では「迷い人」という、国に恩恵を与える異世界人がいたというが、莉子には全くそんな能力はなく平凡そのもの。 そのうえ莉子が現れたのは、竜王が初めて開いた「婚約者候補」を集めた夜会。しかも口に怪我をした治療として竜王にキスをされてしまい、一気に莉子は竜人女性の目の敵にされてしまう。 それでもひっそりと真面目に生きていこうと気を取り直すが、今度は竜王の子供を産む「運命の花嫁」に選ばれていた。 その「運命の花嫁」とはお腹に「竜王の子供の魂が宿る」というもので、なんと朝起きたらお腹から勝手に子供が話しかけてきた! 『ママ! 早く僕を産んでよ!』 「私に竜王様のお妃様は無理だよ!」 お腹に入ってしまった子供の魂は私をせっつくけど、「運命の花嫁」だとバレないように必死に隠さなきゃ命がない! それでも少しずつ「お腹にいる未来の息子」にほだされ、竜王とも心を通わせていくのだが、次々と嫌がらせや命の危険が襲ってきて――! これはちょっと不遇な育ちの平凡ヒロインが、知らなかった能力を開花させ竜王様に溺愛されるお話。 設定はゆるゆるです。他サイトでも重複投稿しています。

ぐうたら令嬢は公爵令息に溺愛されています

Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のレイリスは、今年で16歳。毎日ぐうたらした生活をしている。貴族としてはあり得ないような服を好んで着、昼間からゴロゴロと過ごす。 ただ、レイリスは非常に優秀で、12歳で王都の悪党どもを束ね揚げ、13歳で領地を立て直した腕前。 そんなレイリスに、両親や兄姉もあまり強く言う事が出来ず、専属メイドのマリアンだけが口うるさく言っていた。 このままやりたい事だけをやり、ゴロゴロしながら一生暮らそう。そう思っていたレイリスだったが、お菓子につられて参加したサフィーロン公爵家の夜会で、彼女の運命を大きく変える出来事が起こってしまって… ※ご都合主義のラブコメディです。 よろしくお願いいたします。 カクヨムでも同時投稿しています。

処理中です...