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第217話 お帰りなさい
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翌朝――。
いつものように7時に朝食を取る為にダイニングルームに行くと、父と母が深刻な顔で既に着席していた。
「おはようございます、お父様。お母様」
「ああ、おはよう。エディット」
「おはよう、エディット」
挨拶を返してくる父と母。
私が着席すると、すぐに給仕の人たちが朝食を運んできてテーブルに並べられていく。パンにスープ、卵料理にサラダ……。
どの料理も美味しそうだったけれど、ここ数日私はアドルフ様のことが心配でたまらず食欲は殆どなかった。
ただぼんやりと食事が並ぶ様子を見ていると、ふいに父が話しかけてきた。
「エディット、いいか?大事な話がある」
突然父が深刻な顔で私に話しかけてきた。
「何でしょうか?」
「学院の帰り……いつもアドルフ君のお見舞いに行ってるな?」
「はい。そうですけど……」
「今日も寄るのか?」
「はい、そのつもりです」
「そうか。ならいい。今日は必ず寄るのだよ。ヴァレンシュタイン家の方からお前に話があるそうだから」
「お話……ですか?一体、どのようなお話なのでしょうか?」
昨日のおば様との会話を思い出し、嫌な予感を覚えてしまった。
「さぁ?私は何も聞かされていないからな……。よし、それでは食事にしようか?」
「そうね。さ、エディットもお食べなさい」
「はい……」
2人に促されて、私も食事を口にしたけれども……今朝の食事はいつも以上に味を感じられなかった――。
****
この日は1日中、学院で憂鬱な気分だった。
気付けば全ての授業は終わり、クラスメイト達は帰り支度をしている。
「ハァ~……」
私も帰り支度を終えると、ため息をつきながら席を立った――。
「あれ?その後姿は……エディットか?」
廊下を歩いていると、不意に背後から声を掛けられた。振り向くとそこにはブラッドリー様と2人の男子学生の姿があった。
「あ……ブラッドリー様。こんにちは」
警戒しながら挨拶すると、ブラッドリー様は話しかけてきた。
「エディット、聞いたよ。毎日アドルフの屋敷に見舞いに行ってるんだって?今日も行くのか?」
「はい、そうです」
まさか……一緒に行くなんて言いだしませんように……。
すると案の定、ブラッドリー様が予想通りの言葉を口にした。
「ふ~ん。そうか、なら俺も行こうかな?」
え?
思わず口に出そうになる言葉を必死で私は飲み込んだ。
すると……。
「何言ってるんだよ。ブラッドリー。今日は皆でダーツをやりに行く話だっただろう?」
「そうだよ。お前の知り合いの店なんだから、一緒に行かなくてどうするんだよ」
ブラッドリー様は2人の男子学生に言われて、困り顔になった。
「う~ん……仕方ないなぁ……。悪い、エディット。やっぱり俺、アドルフのお見舞いには行けない」
「はい、分かりました」
半ば、ホッとした気持ちで返事をする。
「よし、それじゃ早く行こうぜ」
「時間が惜しいからな」
「じゃあな、エディット。アドルフに宜しく」
ブラッドリー様は私に手をふると、2人の友人達と連れ立って足早に走り去って行った。
「ブラッドリー様……」
一緒にお見舞いに行かなくて済んだのは助かったけれども……アドルフ様に少し冷たいのではないかと思ってしまった――。
****
いつものように馬車に揺られてヴァレンシュタイン家へ到着した私をおじ様とおば様が慌てた様子で出迎えてくれた。
「良く来てくれたな!エディット嬢!」
おじ様が興奮した様子で声を掛けてくる。
「はい、おじ様。本日もお邪魔致します」
「丁度良かったわ。エディット。アドルフが……目を覚ましたのよ!」
「え?!ほ、本当ですか?!」
おば様の言葉に耳を疑う。
「そうだ。さ、エディット嬢。アドルフの部屋に行こう」
「はい、おじ様!」
そして私はおじ様とおば様の後に続き、アドルフ様の部屋へ急いだ。
**
「アドルフッ!婚約者のエディット令嬢が丁度お前の見舞いに来てくれたぞっ!」
おじ様は部屋に入るや否や、大きな声でベッドの上にいるアドルフ様に声を掛けた。
「本当にすごい偶然よ。連絡を入れようとした矢先に、馬車に乗って訪ねてきてくれたのだから」
私からはアドルフ様の姿がよく見えないけれども、戸惑ったアドルフ様の声が聞こえてきた。
「え……?エディット…?婚約者…?」
「おいおい……まさか自分の婚約者のことまで忘れてしまったのか?エディット・ロワイエ伯爵令嬢。お前の婚約者のことじゃないか?エディット令嬢、どうか息子に顔を見せてやってくれないか?」
「は、はい……」
おじ様に促され、私はアドルフ様の前に進み出た。
「アドルフ様……目が覚められて安心致しました」
「え……?」
アドルフ様は目を見開いて私を見つめる。
その目を見た瞬間、私は全てを理解した。以前のアドルフ様が戻ってきてくれたのだと。
「アドルフ様……目が覚められて安心致しました」
そして……お帰りなさい。
私は目に涙を浮かべ……嬉しさで身体を震わせながらアドルフ様を見つめた――。
※ 次話、アドルフ視点に戻ります。
いつものように7時に朝食を取る為にダイニングルームに行くと、父と母が深刻な顔で既に着席していた。
「おはようございます、お父様。お母様」
「ああ、おはよう。エディット」
「おはよう、エディット」
挨拶を返してくる父と母。
私が着席すると、すぐに給仕の人たちが朝食を運んできてテーブルに並べられていく。パンにスープ、卵料理にサラダ……。
どの料理も美味しそうだったけれど、ここ数日私はアドルフ様のことが心配でたまらず食欲は殆どなかった。
ただぼんやりと食事が並ぶ様子を見ていると、ふいに父が話しかけてきた。
「エディット、いいか?大事な話がある」
突然父が深刻な顔で私に話しかけてきた。
「何でしょうか?」
「学院の帰り……いつもアドルフ君のお見舞いに行ってるな?」
「はい。そうですけど……」
「今日も寄るのか?」
「はい、そのつもりです」
「そうか。ならいい。今日は必ず寄るのだよ。ヴァレンシュタイン家の方からお前に話があるそうだから」
「お話……ですか?一体、どのようなお話なのでしょうか?」
昨日のおば様との会話を思い出し、嫌な予感を覚えてしまった。
「さぁ?私は何も聞かされていないからな……。よし、それでは食事にしようか?」
「そうね。さ、エディットもお食べなさい」
「はい……」
2人に促されて、私も食事を口にしたけれども……今朝の食事はいつも以上に味を感じられなかった――。
****
この日は1日中、学院で憂鬱な気分だった。
気付けば全ての授業は終わり、クラスメイト達は帰り支度をしている。
「ハァ~……」
私も帰り支度を終えると、ため息をつきながら席を立った――。
「あれ?その後姿は……エディットか?」
廊下を歩いていると、不意に背後から声を掛けられた。振り向くとそこにはブラッドリー様と2人の男子学生の姿があった。
「あ……ブラッドリー様。こんにちは」
警戒しながら挨拶すると、ブラッドリー様は話しかけてきた。
「エディット、聞いたよ。毎日アドルフの屋敷に見舞いに行ってるんだって?今日も行くのか?」
「はい、そうです」
まさか……一緒に行くなんて言いだしませんように……。
すると案の定、ブラッドリー様が予想通りの言葉を口にした。
「ふ~ん。そうか、なら俺も行こうかな?」
え?
思わず口に出そうになる言葉を必死で私は飲み込んだ。
すると……。
「何言ってるんだよ。ブラッドリー。今日は皆でダーツをやりに行く話だっただろう?」
「そうだよ。お前の知り合いの店なんだから、一緒に行かなくてどうするんだよ」
ブラッドリー様は2人の男子学生に言われて、困り顔になった。
「う~ん……仕方ないなぁ……。悪い、エディット。やっぱり俺、アドルフのお見舞いには行けない」
「はい、分かりました」
半ば、ホッとした気持ちで返事をする。
「よし、それじゃ早く行こうぜ」
「時間が惜しいからな」
「じゃあな、エディット。アドルフに宜しく」
ブラッドリー様は私に手をふると、2人の友人達と連れ立って足早に走り去って行った。
「ブラッドリー様……」
一緒にお見舞いに行かなくて済んだのは助かったけれども……アドルフ様に少し冷たいのではないかと思ってしまった――。
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いつものように馬車に揺られてヴァレンシュタイン家へ到着した私をおじ様とおば様が慌てた様子で出迎えてくれた。
「良く来てくれたな!エディット嬢!」
おじ様が興奮した様子で声を掛けてくる。
「はい、おじ様。本日もお邪魔致します」
「丁度良かったわ。エディット。アドルフが……目を覚ましたのよ!」
「え?!ほ、本当ですか?!」
おば様の言葉に耳を疑う。
「そうだ。さ、エディット嬢。アドルフの部屋に行こう」
「はい、おじ様!」
そして私はおじ様とおば様の後に続き、アドルフ様の部屋へ急いだ。
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「アドルフッ!婚約者のエディット令嬢が丁度お前の見舞いに来てくれたぞっ!」
おじ様は部屋に入るや否や、大きな声でベッドの上にいるアドルフ様に声を掛けた。
「本当にすごい偶然よ。連絡を入れようとした矢先に、馬車に乗って訪ねてきてくれたのだから」
私からはアドルフ様の姿がよく見えないけれども、戸惑ったアドルフ様の声が聞こえてきた。
「え……?エディット…?婚約者…?」
「おいおい……まさか自分の婚約者のことまで忘れてしまったのか?エディット・ロワイエ伯爵令嬢。お前の婚約者のことじゃないか?エディット令嬢、どうか息子に顔を見せてやってくれないか?」
「は、はい……」
おじ様に促され、私はアドルフ様の前に進み出た。
「アドルフ様……目が覚められて安心致しました」
「え……?」
アドルフ様は目を見開いて私を見つめる。
その目を見た瞬間、私は全てを理解した。以前のアドルフ様が戻ってきてくれたのだと。
「アドルフ様……目が覚められて安心致しました」
そして……お帰りなさい。
私は目に涙を浮かべ……嬉しさで身体を震わせながらアドルフ様を見つめた――。
※ 次話、アドルフ視点に戻ります。
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