タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売

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第1章 7 本当の心を偽って

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 私とオスカーを乗せた馬車はやがて王立アカデミーへ到着した。馬車の窓から改めてアカデミーを私は見つめた。
70年前・・・私はこの学院に通っていた。4年間、ここでしっかり学び・・私は嫁ぎたくも無い・・・目の前にいるオスカーと結婚する予定だったのだが、タバサが現れた。そして彼女はオスカーと恋仲になり、邪魔な私を排除する為にありとあらゆる言われの無い罪を押し付け・・罪人として私は裁かれ、流刑島へと流された。
そして家族に襲い掛かった悲劇・・・。

 だけど本当の所、私が罪人に仕立て上げられてしまった理由は私と婚約破棄をする為だったのだろうか?いや・・・オスカーとタバサはあくまでも国王の駒で、本当の目的は私を助けようとした父を殺し・・・母を側室にする為の策略だったのだろうか?私が裁かれるまでは後2年の猶予がある。それまでに、本当の理由を見つけなければ、再び私はこの世界で同じ目に遭ってしまう可能性がある・・。それだけは絶対に避けなければならない。

このやり直しは、自分だけを助けるものではない。私を・・・そして私の家族を救うチャンスを神様が与えてくれた特別な時間なのだから。

その時、ふと馬車の外で私は大声で呼ばれていた事に気が付いた。


「おい!アイリス・イリヤッ!お前・・いつまで馬車に乗っているつもりだっ!」

オスカーの怒鳴り声で私は我に返った。

「あ・・・も、申し訳ございません・・。すぐに降ります。」

私は馬車から降りようとし・・オスカーが腕組みしたまま馬車から少し距離を置いたところで立っている様子にピンときた。そうか・・私にエスコートする気は全く無いと言う事なのか。
だが、ある意味私に取ってはそれは好都合の事だった。女性に対し、敬意を払ってくれない男などこちらからお断りだ。
私は手すりを掴み、何食わぬ顔で馬車を降りるとオスカーは妙な顔つきで私を見つめている。

「あの・・何か?」

するとオスカーはパッと視線を逸らせた。恐らくこの態度は私が意にも介さぬ様子で馬車から降りる様子が癪に触ったのかもしれない。
よし、それなら・・・ここで一言ってやろう。

「オスカー様。本日はこのような立派な馬車でお迎えして頂きまして誠にありがとうございました。」

そして礼を言い、頭を下げた。

「っ!」

その瞬間、オスカーの顔に今迄見せた事の無い戸惑いの表情が現れた。どうやら私はオスカーの心に揺さぶりをかける事に成功したのかもしれない。それなら・・・もう一押ししてみよう。

「それではオスカー様。失礼致します。」

ニッコリ微笑んで、一礼すると私は彼に背を向けて歩き出した。

「待てっ!」

すると背後でオスカーが私を引き留める声が聞こえた。そこで私はわざとゆっくり振り向くと言った。

「はい、何でしょうか?オスカー様?」

「どうせ・・・入学式で行く場所は決まっているんだ。別々に行く事はあるまい。」

オスカーは不機嫌そうな顔でこちらを見ている。恐らく私があっさり立去ろうとした事が気に入らないのだろう。だが、馬車を降りる時、オスカーはエスコートをしようと手を差し出す事すらせず、敢えて私から離れた場所に立っていたのだ。そんな真似をすれば普通の令嬢なら何故手を貸してくれないのだと抗議するか、機嫌を悪くするかのどちらかだっただろう。だが私はそのどちらもせず、お礼を述べたうえで、立ち去ろうとしたのだ。だからオスカーの立場としては私に強い態度を取る事が出来なかったのかもしれない。
本来であれば、誰が好き好んでオスカーと一緒に会場へ等行くものか。
しかし・・私は言った。

「はい、承知致しました。」

笑顔で答えた。

今日から私は新たな未来を手に入れる為に、かつて私を騙した人々の前で自分の本心を偽って生きていくのだ―。






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