元バリキャリ、マッチ売りの少女に転生する〜マッチは売るものではなく、買わせるものです

結城芙由奈@コミカライズ連載中

文字の大きさ
5 / 20

第5話 これが私の勝負服

しおりを挟む
「どうでしょう? お嬢様、このお洋服等可愛らしくてお似合いだと思いますよ?」

女性店員が私に勧めてきたのはピンク色に、フリル、レースがたっぷりあしらわれたワンピースだった。さながらロリータ服そっくりだった。

「う……」

思わずしかめっ面になってしまう。
別に私はロリータ服を否定するわけではない。まるでフランス人形が着るようなドレスは、見ている分には素敵だと思う。
しかし、それを自分が着るとなると話は違ってくる。しかもこれから私はハンスに連れられて飲み屋に行くのだから。こんな姫のような服を着るわけにはいかない。

「あの~……せっかく選んでいただいたのに、申し訳ないのですが自分で選んでもよろしいでしょうか?」

「え? お嬢様がお一人で……?」

「はい、そうです」

明らかに軽蔑したような眼差しを向ける女性店員。恐らく私のように小汚く、貧乏そうな小娘ごときが服など選べるはずがないだろう……と思っているに違いない。

「それは……別に構いませんが……最終的に選ばるのはお客様のご意思にお任せしておりますので」

「では、自分で選ばせていただきますね?」

私は、にっこり微笑んだ――


****

「お待たせいたしました。ハンスさん」

女性店員と待ち合わせ場所に現れた私を見て、目を見開くハンス

「え……と……ど、どちら様……でしょうか……?」

椅子に座っていたハンスは驚いたように立ち上がる。

「あら? 分かりませんか? 私ですよ。アンナです」

「え……ええっ!? ア、アンナッ!? い、一体その格好は……?」

ハンスは真っ赤になり、目を伏せた。

フフフ……恐らく目のやり場に困っているのだろう。何しろ今の私は胸の谷間がくっきり見えるVカットの身体にぴったりフィットしたスレンダーなドレスを着ているからだ。ちなみにドレスの色は真っ赤である。
いわゆるキャバドレスをイメージしてくれれば分かりやすいだろう。

ちなみに化粧もしているし、髪はゆるく巻き上げている。
こんな格好で現れれば、ハンスが私だと分からなくても当然だろう。

それにしても着替えをするまで気付かなかった。アンナってまだ15~6歳なのに発育が良いのだろう。身体つきだけ見れば、もう立派な大人の女性である。

「ど、どうしてそんな格好をしているんだい?」

私から視線をそらし、真っ赤な顔で尋ねるハンス。

「申し訳ございません……私は反対したのですが、お嬢様がどうしてもこのドレスが良いと申されたので……」

何故かハンスに謝る女性店員。やはりハンスはVIP対応の客なのかもしれない。

「え? そ、そうだったの? そのドレス……アンナが自分で選んだの?」

チラチラ横目で私を見るハンス。

「ええ、勿論です。これから飲み屋さんに行くのですよね? それならこのくらいの格好をしないと」

「ええ!? 何でそんな格好する必要があるんだい? だ、大体……恥ずかしくないのかい?」

恥ずかしい? ええ、それはもう恥ずかしいに決まっている。いつもパンツスーツを着用していた私はこんなに露出の激しい服など着たこともない。

けれど、私はこれから飲み屋で人々の注目を浴びなければならない。ミステリアスな女を演じなければならないのだ。恥ずかしい気持ちは打ち捨てなければ。

「似合いませんか?」

試しに伏し目がちに尋ねてみる。途端にますますハンスの顔は赤くなる。

「に、似合わないはずがないじゃないか! で、でも……その服だけじゃ駄目だよ!」

「え? 駄目ですか?」

「うん、そうだよ。第一……そんな薄着じゃ寒いじゃないか!」

この後、ハンスは私のためにマフラーや、ボレロ。手袋にブーツなどをプレゼントしてくれるのだった。


****

「よし、それじゃお店に行こうか? アンナ」

店を出ると、ハンスが声をかけてきた。

「ええ、行きましょう」

そして私はハンスと共に飲み屋へ向かった。

見てなさいよ……このカゴの中のマッチ、今夜全部買わせてみせるのだから。

私は闘志を燃やすのだった――




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

お妃さま誕生物語

すみれ
ファンタジー
シーリアは公爵令嬢で王太子の婚約者だったが、婚約破棄をされる。それは、シーリアを見染めた商人リヒトール・マクレンジーが裏で糸をひくものだった。リヒトールはシーリアを手に入れるために貴族を没落させ、爵位を得るだけでなく、国さえも手に入れようとする。そしてシーリアもお妃教育で、世界はきれいごとだけではないと知っていた。 小説家になろうサイトで連載していたものを漢字等微修正して公開しております。

予言姫は最後に微笑む

あんど もあ
ファンタジー
ラズロ伯爵家の娘リリアは、幼い頃に伯爵家の危機を次々と予言し『ラズロの予言姫』と呼ばれているが、実は一度殺されて死に戻りをしていた。 二度目の人生では無事に家の危機を避けて、リリアも16歳。今宵はデビュタントなのだが、そこには……。

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

イジメられっ子は悪役令嬢( ; ; )イジメっ子はヒロイン∑(゚Д゚)じゃあ仕方がないっ!性格が悪くても(⌒▽⌒)

音無砂月
ファンタジー
公爵令嬢として生まれたレイラ・カーティスには前世の記憶がある。 それは自分がとある人物を中心にイジメられていた暗黒時代。 加えて生まれ変わった世界は従妹が好きだった乙女ゲームと同じ世界。 しかも自分は悪役令嬢で前世で私をイジメていた女はヒロインとして生まれ変わっていた。 そりゃないよ、神様。・°°・(>_<)・°°・。 *内容の中に顔文字や絵文字が入っているので苦手な方はご遠慮ください。 尚、その件に関する苦情は一切受け付けませんので予めご了承ください。

醜悪令息レオンの婚約

オータム
ファンタジー
醜悪な外見ゆえに誰からも恐れられ、避けられてきたレオン。 ある日、彼は自分が前世で遊んでいたシミュレーションRPGの世界に転生しており、 しかも“破滅が確定している悪役令嬢の弟”として生きていることに気付く。 このままでは、姉が理不尽な運命に呑まれてしまう。 怪しまれ、言葉を信じてもらえなくとも、レオンはただ一人、未来を変えるために立ち上がる――。 ※「小説家になろう」「カクヨム」にも投稿しています。

【完結】 学園の聖女様はわたしを悪役令嬢にしたいようです

はくら(仮名)
ファンタジー
※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にて掲載しています。 とある国のお話。 ※ 不定期更新。 本文は三人称文体です。 同作者の他作品との関連性はありません。 推敲せずに投稿しているので、おかしな箇所が多々あるかもしれません。 比較的短めに完結させる予定です。 ※

《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。

ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」 その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。

処理中です...