君のような女は僕がいなくても1人で生きていけるだろうと告げて逃げた夫が1年後、愛人を連れて泣きついて戻ってきました

結城芙由奈@コミカライズ連載中

文字の大きさ
4 / 38

第4話 私とジルベールと愛人と

しおりを挟む
コンコン

「…」

もうすぐ12時になろうとしているのに、部屋の中は無反応だ。私は再度扉をノックした。

コンコン

やはり、それでも何も反応は無い。全く…。心の中で溜息をつく。試しにドアノブを握って回してみるとカチャリと動く手応えがあった。どうやら鍵はかけていないようだ。

「入るわね、ジルベール」

一応断りを入れて扉を開けると部屋の中は分厚いカーテンが引かれ、昼間だと言うのに部屋はとても薄暗かった。

「…やっぱりまだ寝ているのね」

溜息をつくと私は部屋の中に入ると、天蓋付きの大きなベッドへと近付いた。

「…」

やはり、思った通りベッドの中にはジルベールの腕枕の上に頭を乗せて眠っているイザベラの姿がある。2人共、何も身に着けていないのは明らかだった。私が傍に立っていることにすら気付いていない。
まだ結婚したての頃、2人の関係を全く知らなかった私はショックを受け、自分の部屋に閉じこもって泣き崩れた。ジルベールには何度も彼女と別れて欲しいと訴えても全く聞き入れては貰えなかった。それだけではない。この事が屋敷中に知れ渡り、私はイザベラや使用人達からすっかり見下されるようになってしまったのだ。
この一件で私の中にあったジルベールへの恋慕の思いは消え去り、今では2人の何を見ても心は一切動じず、感じなくなっていた。

「仕方ないわね」

今日はどうしてもジルベールに伝えなければいけない大切な話がある。何としても彼を起こさなければ。そう思った私はベッドから離れ、窓に近付いた。

シャーッ!

無語で分厚いカーテンを思い切り引くと、部屋の中一杯に太陽の光が降り注ぐ。

「うわっ!眩しいっ!」

恐らく太陽の光が直撃したのだろう。ジルベールの声が背後で聞こえた。

「いやっ!眩しいっ!」

同時にイザベラの声も聞こえて来た。2人が同時に目を覚ました事だし、ついでに部屋の中にこもった濁り切った空気を入れ替える為に窓を開けた。

「リ、リディアッ?!な、何でここにいるんだ?!」

背中を向けて窓を開け放していると、ジルベールが私に向かって声を掛けてきた。振り向くと視線をこちらに向けてベッドから身体を起こしたジルベールがいる。恐らく太陽を背にした私の姿が眩しいのだろう。彼は目を細めて私を見ていた。

「キャアッ!な、何故貴女がここにいるのよっ!早く出て言って頂戴っ!」

キルトケットで身体を隠すようにしてイザベラが私に出ていく様に命じる。

「ここは、本来であれば私とジルベールが使う寝室です。むしろ出て行くべきはイザベラ。貴女ではありませんか?」

すると私の言葉が気に障ったのか、イザベラの顔色が変わった。

「な、何ですって…?何故私が出て行かなければならないの?!私はもう4年前からずっとジルベールの恋人だったのよ?むしろ出て行くのは貴女の方でしょう?!」

イザベラは起きたばかりだと言うのに、声を荒げて私に文句を言って来る。起きたばかりだと言うのに、頭は回っている様だ。

「それを言うなら私は生まれた時からジルベールと結婚する事が決まっていました。むしろこの部屋から出て行くのは…愛人である貴女の方ではありませんか?」

すると…。

「あ、愛人ですって…?酷いわっ!」

イザベラは目に涙を浮かべると、傍らにいるジルベールに縋りつくと言った。

「ねぇ!今の言葉聞いたっ?!あ、あの女…私にこの部屋から出て行けと言ったのよ?!し、しかも…わ、私の事を愛人だなんて…っ!」

そしてジルベールの腕の中で顔を覆い、肩を震わせて泣きだした。

「よしよし…可愛そうに…」

ジルベールはイザベラを抱きしめて髪を撫でながら言うと、次に私を見た。

「リディア、イザベラに謝るんだ。そして速やかに部屋を出て行ってくれ」

彼は妻である私にとんでも無いことを言って来た―。

しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

虐げられ続けてきたお嬢様、全てを踏み台に幸せになることにしました。

ラディ
恋愛
 一つ違いの姉と比べられる為に、愚かであることを強制され矯正されて育った妹。  家族からだけではなく、侍女や使用人からも虐げられ弄ばれ続けてきた。  劣悪こそが彼女と標準となっていたある日。  一人の男が現れる。  彼女の人生は彼の登場により一変する。  この機を逃さぬよう、彼女は。  幸せになることに、決めた。 ■完結しました! 現在はルビ振りを調整中です! ■第14回恋愛小説大賞99位でした! 応援ありがとうございました! ■感想や御要望などお気軽にどうぞ! ■エールやいいねも励みになります! ■こちらの他にいくつか話を書いてますのでよろしければ、登録コンテンツから是非に。 ※一部サブタイトルが文字化けで表示されているのは演出上の仕様です。お使いの端末、表示されているページは正常です。

姉の所為で全てを失いそうです。だから、その前に全て終わらせようと思います。もちろん断罪ショーで。

しげむろ ゆうき
恋愛
 姉の策略により、なんでも私の所為にされてしまう。そしてみんなからどんどんと信用を失っていくが、唯一、私が得意としてるもので信じてくれなかった人達と姉を断罪する話。 全12話

【完結】姉に婚約者を奪われ、役立たずと言われ家からも追放されたので、隣国で幸せに生きます

よどら文鳥
恋愛
「リリーナ、俺はお前の姉と結婚することにした。だからお前との婚約は取り消しにさせろ」  婚約者だったザグローム様は婚約破棄が当然のように言ってきました。 「ようやくお前でも家のために役立つ日がきたかと思ったが、所詮は役立たずだったか……」 「リリーナは伯爵家にとって必要ない子なの」  両親からもゴミのように扱われています。そして役に立たないと、家から追放されることが決まりました。  お姉様からは用が済んだからと捨てられます。 「あなたの手柄は全部私が貰ってきたから、今回の婚約も私のもの。当然の流れよね。だから謝罪するつもりはないわよ」 「平民になっても公爵婦人になる私からは何の援助もしないけど、立派に生きて頂戴ね」  ですが、これでようやく理不尽な家からも解放されて自由になれました。  唯一の味方になってくれた執事の助言と支援によって、隣国の公爵家へ向かうことになりました。  ここから私の人生が大きく変わっていきます。

さよならをあなたに

キムラましゅろう
恋愛
桔梗の君という源氏名を持つ遊君(高級娼婦)であった菫。 たった一人、州主の若君に執着され独占され続けて来たが、 その若君がとうとう正妻を迎える事になった。 と同時に菫は身請けをされるも、彼の幸せを願い自ら姿を消す覚悟を決める。 愛していても、愛しているからこそ、結ばれる事が出来ない運命もある……。 元婚約者としての矜持を胸に抱き、彼の人生から消え、そして自らの人生をやり直す。そんな菫の物語。 ※直接的な性描写はないですが行為を匂わす表現が作中にあります。 苦手な方はご自衛ください。 重度の誤字脱字病患者の書くお話です。 誤字脱字にぶつかる度にご自身で「こうかな?」と脳内変換して頂く恐れがあります。予めご了承くださいませ。 完全ご都合主義、ノーリアリティノークオリティのお話です。 菩薩の如く広いお心でお読みくださいませ。 そして作者はモトサヤハピエン主義です。 そこのところもご理解頂き、合わないなと思われましたら回れ右をお勧めいたします。 小説家になろうさんでも投稿します。

【完結】愛してきた義妹と婚約者に騙され、全てを奪われましたが、大商人に拾われて幸せになりました

よどら文鳥
恋愛
 私の婚約者であるダルム様との婚約を破棄しろと、義父様から突然告げられました。  理由は妹のように慕っているマーヤと結婚させたいのだと言うのです。  ですが、そんなことをマーヤが快く思うはずがありません。  何故ならば、私とマーヤは本当の姉妹のように仲が良いのですから。  あまりにも自信満々に言ってくるので、マーヤの元へこのことを告げます。  しかし、そこでマーヤから驚くべき言葉を告げられました。  婚約者のダルム様のところへ行き、助けを求めましたが……。  行き場を完全に失ったので、王都の外へ出て、途方に暮れていましたが、そこに馬車が通りかかって……。

ヒロインに騙されて婚約者を手放しました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
地味で冴えない脇役はヒーローに恋しちゃだめですか? どこにでもいるような地味で冴えない私の唯一の長所は明るい性格。一方許嫁は学園一人気のある、ちょっぴり無口な彼でした。そんなある日、彼が学園一人気のあるヒロインに告白している姿を偶然目にしてしまい、捨てられるのが惨めだった私は先に彼に婚約破棄を申し出て、彼の前から去ることを決意しました。だけど、それはヒロインによる策略で・・・?明るさだけが取り柄の私と無口で不器用な彼との恋の行方はどうなるの?

【完結】夫が愛人と一緒に夜逃げしたので、王子と協力して徹底的に逃げ道を塞ぎます

よどら文鳥
恋愛
 夫のザグレームは、シャーラという女と愛人関係だと知ります。  離婚裁判の末、慰謝料を貰い解決のはずでした。  ですが、予想していたとおりザグレームとシャーラは、私(メアリーナ)のお金と金色の塊を奪って夜逃げしたのです。  私はすぐに友人として仲良くしていただいている第一王子のレオン殿下の元へ向かいました。  強力な助っ人が加わります。  さぁて、ザグレーム達が捕まったら、おそらく処刑になるであろう鬼ごっこの始まりです。

姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました

饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。 わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。 しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。 末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。 そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。 それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は―― n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。 全15話。 ※カクヨムでも公開しています

処理中です...