君のような女は僕がいなくても1人で生きていけるだろうと告げて逃げた夫が1年後、愛人を連れて泣きついて戻ってきました

結城芙由奈@コミカライズ連載中

文字の大きさ
23 / 38

第23話 尊厳を失った愛人とジルベール

しおりを挟む
 2人の縄が解けてから私はジルベールに尋ねた。

「ジルベール…一体、今更何故戻って来たの?」

それは自分でも分かるくらい、冷淡な声だった。

「うっ…そ、それは…」

物乞い同然の姿のジルベールは一瞬私の迫力に怯んだのか、言葉をつまらせたが
次の瞬間―。

いきなり床にうずくまると土下座してきたのだ。ジルベールは埃まみれの床に頭を擦り付けながら言った。

「すみませんでしたっ!リディアッ!このままではもう生活出来ないんだっ!許して下さいっ!どうか…もう一度ここに置いて下さいっ!」

「私からもお願いですっ!お許しくださいっ!」

なんとジルベールだけでなく愛人までもが床にうずくまり、私に土下座している。今迄散々私のことを鼻で笑って馬鹿にしていた2人なのに…?

「やはり、身なり一つで人間の尊厳というものは簡単に失われるものなのでしょうか?」

フレデリックが私に耳打ちしてくる。

「ええ、そうね…」

それにしても…折角改革もうまく進み、全てが上向きにいっていたのに、とんだお荷物が戻って来るとは…。しかもよりにもよってこのタイミングで…。

「ジルベール、そしてそこの愛人」

私はイザベラの名前すら呼びたくなかったので、愛人呼ばわりした。

「は、はいっ!」

ジルベールは土下座したまま返事をする。

「私は愛人という名前では…」

イザベラが反論しようとした時、素早くジルベールはイザベラに言った。

「バカッ!リディアに反論するなっ!」

「誰がバカよっ!」

「お前の事に決まっているだろうっ?!」

「お前呼ばわりしないでよっ!」

2人は土下座したまま口論を始めた。全く付き合いきれない。

「ちょっと、いい加減にしてくれる?痴話喧嘩なら他でやって頂戴?」

冷ややかに言うと、ジルベールが悲痛な声を上げる。

「違うっ!いや、違いますっ!痴話喧嘩じゃないんだっ!それに他でやれだなんて…どうか追い出さないでくださいっ!」

「見苦しいですね…」

フレデリックがボソリと言う。ジルベールを見るその目はもはやゴミを見るような眼差しをしている。その様子から、フレデリックは完全にジルベールを主とは認めない考えがまざまざと出ていた。

「とりあえず、そこの2人…臭くてたまらないからシャワーを浴びてきて頂戴」

私の言葉にジルベールと愛人が嬉しそうに顔を上げた。

「えっ?!シャワーを使わせてくれるのかいっ?新しい着替えは?用意してもらえるのだろうか?」

「もう冷たい泉や川で水浴びしなくてすむのね?石鹸も使えるんでしょう?!」

何とも情けない言葉を口にする2人。…一体行方をくらましてからのこの1年、2人は今迄どんな生活をしてきたのだろう…?

「フレデリック。悪いけど…この2人をシャワールームまで連れて行ってあげてくれる?」

「はい。リディア様。それではご案内致します。こちらへどうぞ」

フレでリックは2人から出来るだけ顔を反らせるように声を掛けた。

「リディア。また後でな」

フレデリックに連れて行かれながらジルベールはやたら私に愛想を振りまきながら愛人と共に納戸を出ていく。
2人が出ていくと、私は急いで納戸の窓を開けて空気の入れ替えを行った。

「ふぅ…全く臭かったわ…」

それにしても、ジルベールは何を考えているのだろう。去り際に『また後でな』と言っていたけれども、私は彼と話すことは何もないし、話したいとも思わない。

「本当に、厄介者が現れたわ…」

後1日でジルベールが失踪して1年の節目を迎えられる所だったのに…。

私は深いため息をつき…今後の対策を考えるべく、執務室へと向かった―。



しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

虐げられ続けてきたお嬢様、全てを踏み台に幸せになることにしました。

ラディ
恋愛
 一つ違いの姉と比べられる為に、愚かであることを強制され矯正されて育った妹。  家族からだけではなく、侍女や使用人からも虐げられ弄ばれ続けてきた。  劣悪こそが彼女と標準となっていたある日。  一人の男が現れる。  彼女の人生は彼の登場により一変する。  この機を逃さぬよう、彼女は。  幸せになることに、決めた。 ■完結しました! 現在はルビ振りを調整中です! ■第14回恋愛小説大賞99位でした! 応援ありがとうございました! ■感想や御要望などお気軽にどうぞ! ■エールやいいねも励みになります! ■こちらの他にいくつか話を書いてますのでよろしければ、登録コンテンツから是非に。 ※一部サブタイトルが文字化けで表示されているのは演出上の仕様です。お使いの端末、表示されているページは正常です。

姉の所為で全てを失いそうです。だから、その前に全て終わらせようと思います。もちろん断罪ショーで。

しげむろ ゆうき
恋愛
 姉の策略により、なんでも私の所為にされてしまう。そしてみんなからどんどんと信用を失っていくが、唯一、私が得意としてるもので信じてくれなかった人達と姉を断罪する話。 全12話

【完結】姉に婚約者を奪われ、役立たずと言われ家からも追放されたので、隣国で幸せに生きます

よどら文鳥
恋愛
「リリーナ、俺はお前の姉と結婚することにした。だからお前との婚約は取り消しにさせろ」  婚約者だったザグローム様は婚約破棄が当然のように言ってきました。 「ようやくお前でも家のために役立つ日がきたかと思ったが、所詮は役立たずだったか……」 「リリーナは伯爵家にとって必要ない子なの」  両親からもゴミのように扱われています。そして役に立たないと、家から追放されることが決まりました。  お姉様からは用が済んだからと捨てられます。 「あなたの手柄は全部私が貰ってきたから、今回の婚約も私のもの。当然の流れよね。だから謝罪するつもりはないわよ」 「平民になっても公爵婦人になる私からは何の援助もしないけど、立派に生きて頂戴ね」  ですが、これでようやく理不尽な家からも解放されて自由になれました。  唯一の味方になってくれた執事の助言と支援によって、隣国の公爵家へ向かうことになりました。  ここから私の人生が大きく変わっていきます。

さよならをあなたに

キムラましゅろう
恋愛
桔梗の君という源氏名を持つ遊君(高級娼婦)であった菫。 たった一人、州主の若君に執着され独占され続けて来たが、 その若君がとうとう正妻を迎える事になった。 と同時に菫は身請けをされるも、彼の幸せを願い自ら姿を消す覚悟を決める。 愛していても、愛しているからこそ、結ばれる事が出来ない運命もある……。 元婚約者としての矜持を胸に抱き、彼の人生から消え、そして自らの人生をやり直す。そんな菫の物語。 ※直接的な性描写はないですが行為を匂わす表現が作中にあります。 苦手な方はご自衛ください。 重度の誤字脱字病患者の書くお話です。 誤字脱字にぶつかる度にご自身で「こうかな?」と脳内変換して頂く恐れがあります。予めご了承くださいませ。 完全ご都合主義、ノーリアリティノークオリティのお話です。 菩薩の如く広いお心でお読みくださいませ。 そして作者はモトサヤハピエン主義です。 そこのところもご理解頂き、合わないなと思われましたら回れ右をお勧めいたします。 小説家になろうさんでも投稿します。

【完結】愛してきた義妹と婚約者に騙され、全てを奪われましたが、大商人に拾われて幸せになりました

よどら文鳥
恋愛
 私の婚約者であるダルム様との婚約を破棄しろと、義父様から突然告げられました。  理由は妹のように慕っているマーヤと結婚させたいのだと言うのです。  ですが、そんなことをマーヤが快く思うはずがありません。  何故ならば、私とマーヤは本当の姉妹のように仲が良いのですから。  あまりにも自信満々に言ってくるので、マーヤの元へこのことを告げます。  しかし、そこでマーヤから驚くべき言葉を告げられました。  婚約者のダルム様のところへ行き、助けを求めましたが……。  行き場を完全に失ったので、王都の外へ出て、途方に暮れていましたが、そこに馬車が通りかかって……。

ヒロインに騙されて婚約者を手放しました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
地味で冴えない脇役はヒーローに恋しちゃだめですか? どこにでもいるような地味で冴えない私の唯一の長所は明るい性格。一方許嫁は学園一人気のある、ちょっぴり無口な彼でした。そんなある日、彼が学園一人気のあるヒロインに告白している姿を偶然目にしてしまい、捨てられるのが惨めだった私は先に彼に婚約破棄を申し出て、彼の前から去ることを決意しました。だけど、それはヒロインによる策略で・・・?明るさだけが取り柄の私と無口で不器用な彼との恋の行方はどうなるの?

【完結】夫が愛人と一緒に夜逃げしたので、王子と協力して徹底的に逃げ道を塞ぎます

よどら文鳥
恋愛
 夫のザグレームは、シャーラという女と愛人関係だと知ります。  離婚裁判の末、慰謝料を貰い解決のはずでした。  ですが、予想していたとおりザグレームとシャーラは、私(メアリーナ)のお金と金色の塊を奪って夜逃げしたのです。  私はすぐに友人として仲良くしていただいている第一王子のレオン殿下の元へ向かいました。  強力な助っ人が加わります。  さぁて、ザグレーム達が捕まったら、おそらく処刑になるであろう鬼ごっこの始まりです。

姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました

饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。 わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。 しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。 末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。 そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。 それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は―― n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。 全15話。 ※カクヨムでも公開しています

処理中です...